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ヒロイン、憧れる

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 私の名前はメロディ。ペイジ男爵家の娘です。

 このアデルバード王国では、十六歳になると貴族の子息令嬢は王立学園に通わねばなりません。

 学園では、家格ではなく入学の際のテストの成績でクラス分けがされます。

 成績優秀者として、Aクラスを維持したまま卒業できれば、下位の貴族でも良い就職ができるので、弟がいる私としては成績を維持したいところです。

 入学式で講堂がどこか分からず迷っていた私を、一人の令息が案内して下さいました。

 サファイア色の髪と瞳をされた・・・このアデルバード王国の王太子殿下。

 男爵令嬢に過ぎない私は拝謁したのは初めてでしたが、とてもお優しく素敵な方でした。

 ですが、男爵令嬢でしかない私が王太子殿下と一緒だったことが許せなかったのでしょう。

 入学式が終わった後に、数人のご令嬢に囲まれてしまいました。

「なにをされていますの?」

 その時に現れたのは・・・
女神様でした。

 銀色の髪と瞳。
真っ白な制服に紫色のセーラー襟。

 制服を着ているのだから同じ学園生のはずなのに、あまりの美しさに女神様としか思えませんでした。

 その方は、私を囲んでいたご令嬢方に注意をされ、ご令嬢方は逃げるように立ち去って行かれました。

 アナスタシア・アデライン様。
アデライン公爵家は筆頭公爵家で、アナスタシア様はそこの公爵令嬢でした。

 なのに、偉ぶったところはかけらもなく、とてもお優しく男爵令嬢の私にも丁寧にお話して下さいます。

 アナスタシア様には、婚約者がいらっしゃるそうで、紫色の髪と瞳をされた公爵令息がアナスタシア様をエスコートされていました。

 なんだか冷たそうな方ですけど、アナスタシア様を見つめる表情は甘くて、とてもアナスタシア様を大切にされているようでした。

 アナスタシア様が私とお友達になりたいと、その婚約者の方・・・ローレンス公爵令息様にお願いしてくださり、令嬢には令嬢だけの授業があることもあり、私はアナスタシア様とご一緒できることを許していただけました。

 ローレンス公爵令息様は、アナスタシア様を独占したいようで、王太子殿下が話しかけてくることすら嫌がっているようです。

 お気持ちは分かります。
アナスタシア様はとてもお美しい上に立ち振る舞いもお美しく、しかもとてもお優しい。

 誰もが、アナスタシア様を好きになるに違いありません。

 ですが、アナスタシア様は全くそんなローレンス公爵令息様の執着も気に留めていらっしゃらないようで、お二人はとても仲睦まじくいらっしゃいます。

 ローレンス公爵令息様が羨ましいです。
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