20 / 56
ヒロイン、憧れる
しおりを挟む「悠斗くん、体調はどう?」
悠斗くんが熱を出して一晩が経った。
昨日よりかは顔色も良くなっている気がする。
「昨日よりかはだいぶ良くなったよ。小春のおかげだ」
「それなら良かった。一応体温計ってね」
私は手に持っている体温計を悠斗くんに渡す。
三十八度を下回っていれば嬉しいんだけど……
待つ事数秒、体温を計り終えた悠斗くんは私に体温計を渡してきた。
「うん。結構下がったね」
体温計には三十八度丁度と表示されている。
「でもまだ治っては無いから安静にしなきゃダメだからね!」
「うん。分かってる」
私は悠斗くんに毛布をかけながら言う。
「食欲はある? あるなら今日はお粥じゃなくて違うの作るよ?」
「食欲は昨日よりもあるかな。小春に任せるよ。簡単なもので良いからね」
「じゃあ今日は饂飩《うどん》にしようか。今から作って来るね」
私はキッチンへと向かい、冷凍の饂飩を取り出し料理した。
毎日お粥だったら飽きちゃうもんね。早く治ってほしいけど、いつ治るか分からないし、もしかしたらまた上がってきちゃうかもしれないもん。
冷凍の饂飩は直ぐに作れる、だから直ぐに持っていける。
「悠斗くん、できたよ。冷凍の饂飩だけど、ごめんね」
「ありがとう。そんな、謝らなくても良いよ簡単なもので良いって言ったのは俺だし。それに俺は作ってもらってる側なんだから」
私は悠斗くんのベッドの横にミニテーブルを設置して、そこに饂飩を置いた。
「ちょっと待ってね。ふー、ふー。はい、あーん」
「じ、自分で食べれるよ」
せっかくあーんしてあげようと思ったのに、悠斗くんに断られちゃった。
結構勇気出したのに……
「え⁉」
私が落ち込んでいることに気づいたのか、悠斗くんは私が差し出している饂飩を食べてくれた。
やっぱり悠斗くんは優しい。
「うん。美味しい。ありがとね、小春」
悠斗くんは笑顔でお礼を言ってくれた。
「れ、冷凍の饂飩なんだから誰でも美味しくできるよ」
私は嬉しさを抑えて笑いながらそう言う。
「小春が作ってくれたから美味しいんだよ。好きな人が作ってくれたものはなんでも美味しいんだよ」
急にそんなこと言われて照れないでいるなんて私には無理だった。
私も熱が出たのではないかというほど顔が赤くなって熱くなる。
「ん? どうかしたの? 顔赤いけど」
「な、なんでもないよ」
「まさか小春も体調悪くなったの⁉ もしかして俺が移しちゃった⁉」
顔が赤くなったのは悠斗くんのせいだけど……でも熱も多分ないと思う。体も重くないし頭痛も無いから。
「だ、大丈夫だよ。本当に熱ないから」
私は両手を振りながら否定する。
「本当に? でも本当に移しちゃったらダメだから後は自分で食べるよ。ありがとう」
「う、うん。じゃあ私リビングに居るから、何かあったら読んでね。早く治してね」
そう言って私はリビングに向かった。
「私も熱だして悠斗くんに看病してほしいな……」
悠斗くんが熱を出して苦しんでいるのにそんな事言っちゃダメなのは分かってる。分かってるはずなのに言ってしまった。
熱を出して弱ってる私のためにお粥作って私に食べさせてほしいもん……
でも、悠斗くんの熱が治っていつも通りこのリビングで、このソファーで二人で並んで座って、笑い合って話したい。
それが今の私の一番の理想。
「明日には治っててほしいな……」
悠斗くんが熱を出して一晩が経った。
昨日よりかは顔色も良くなっている気がする。
「昨日よりかはだいぶ良くなったよ。小春のおかげだ」
「それなら良かった。一応体温計ってね」
私は手に持っている体温計を悠斗くんに渡す。
三十八度を下回っていれば嬉しいんだけど……
待つ事数秒、体温を計り終えた悠斗くんは私に体温計を渡してきた。
「うん。結構下がったね」
体温計には三十八度丁度と表示されている。
「でもまだ治っては無いから安静にしなきゃダメだからね!」
「うん。分かってる」
私は悠斗くんに毛布をかけながら言う。
「食欲はある? あるなら今日はお粥じゃなくて違うの作るよ?」
「食欲は昨日よりもあるかな。小春に任せるよ。簡単なもので良いからね」
「じゃあ今日は饂飩《うどん》にしようか。今から作って来るね」
私はキッチンへと向かい、冷凍の饂飩を取り出し料理した。
毎日お粥だったら飽きちゃうもんね。早く治ってほしいけど、いつ治るか分からないし、もしかしたらまた上がってきちゃうかもしれないもん。
冷凍の饂飩は直ぐに作れる、だから直ぐに持っていける。
「悠斗くん、できたよ。冷凍の饂飩だけど、ごめんね」
「ありがとう。そんな、謝らなくても良いよ簡単なもので良いって言ったのは俺だし。それに俺は作ってもらってる側なんだから」
私は悠斗くんのベッドの横にミニテーブルを設置して、そこに饂飩を置いた。
「ちょっと待ってね。ふー、ふー。はい、あーん」
「じ、自分で食べれるよ」
せっかくあーんしてあげようと思ったのに、悠斗くんに断られちゃった。
結構勇気出したのに……
「え⁉」
私が落ち込んでいることに気づいたのか、悠斗くんは私が差し出している饂飩を食べてくれた。
やっぱり悠斗くんは優しい。
「うん。美味しい。ありがとね、小春」
悠斗くんは笑顔でお礼を言ってくれた。
「れ、冷凍の饂飩なんだから誰でも美味しくできるよ」
私は嬉しさを抑えて笑いながらそう言う。
「小春が作ってくれたから美味しいんだよ。好きな人が作ってくれたものはなんでも美味しいんだよ」
急にそんなこと言われて照れないでいるなんて私には無理だった。
私も熱が出たのではないかというほど顔が赤くなって熱くなる。
「ん? どうかしたの? 顔赤いけど」
「な、なんでもないよ」
「まさか小春も体調悪くなったの⁉ もしかして俺が移しちゃった⁉」
顔が赤くなったのは悠斗くんのせいだけど……でも熱も多分ないと思う。体も重くないし頭痛も無いから。
「だ、大丈夫だよ。本当に熱ないから」
私は両手を振りながら否定する。
「本当に? でも本当に移しちゃったらダメだから後は自分で食べるよ。ありがとう」
「う、うん。じゃあ私リビングに居るから、何かあったら読んでね。早く治してね」
そう言って私はリビングに向かった。
「私も熱だして悠斗くんに看病してほしいな……」
悠斗くんが熱を出して苦しんでいるのにそんな事言っちゃダメなのは分かってる。分かってるはずなのに言ってしまった。
熱を出して弱ってる私のためにお粥作って私に食べさせてほしいもん……
でも、悠斗くんの熱が治っていつも通りこのリビングで、このソファーで二人で並んで座って、笑い合って話したい。
それが今の私の一番の理想。
「明日には治っててほしいな……」
630
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる