上 下
18 / 56

攻略対象、困る

しおりを挟む
 僕の名前はダミアン。ダミアン・アデルバード。
 アデルバード王国の王太子だ。

 王妃である母から、我が国の筆頭公爵家の令嬢アナスタシア・アデライン嬢との婚約を勧められたとき、素直に了承した。

 僕には気になる令嬢もいなかったし、王家に生まれた以上、王妃に相応しい令嬢を婚約者とし、国を支えるのが当然だと思っているからだ。

 だが王家から申し込む直前に、父上からアデライン嬢とローレンス公爵令息が婚約したと報告を受けた。

 母上がお茶会でアデライン公爵夫人に、婚約の話をしたらしいから、申し込みが来る前に婚約をしたと感じた。

 ローレンス公爵令息。
カイル・ローレンスは、宰相の息子で次期宰相と言われている。

 冷酷冷徹と言われているカイルが、アデライン公爵令嬢と婚約した?

 父上は、筆頭公爵令嬢と次期宰相の公爵令息が婚姻し、次期国王の僕の治世を支えてくれるのを良しとした。

 だけど母上は、僕の婚約者はと譲らない。

 駄目だと言われても、他の公爵令息と婚約しているのにいくら王家だと言っても横槍は入れられない。

 しかも、アデライン嬢はカイルとの婚約をしたと言っていた。

 となると、婚約の打診をしつこくしたら、絶対にアデライン公爵家から抗議が来る。

 それに、あのカイルの執着を見る限りローレンス公爵家からも抗議が来るだろう。

 勘弁して欲しい。
アデライン嬢のことを好きなのなら、王命でも何でも出して婚約者になりたいと思うかもしれないが、正直言って、そういう感情を持つカイルの気持ちを知ったから、横槍を入れる気にもならない。

 カイルには、僕の治世の時に宰相として支えて欲しいし、普通に友人として仲良くしておきたい。

 そもそも、母上があそこまでアデライン嬢にこだわる理由がわからない。

 確かに、家格も本人の資質も問題ないと思う。
 だけど、別に公爵令嬢でなければならないわけでもないし、むしろアデライン公爵家に権力が集まるのを避ける意味でも他の貴族家の方が良いと思えるのに。

 母上は全くこちらの意見を聞こうとしないし、どうするべきか迷っていたら、母上のところにアデライン公爵夫人とローレンス公爵夫人が訪れていると侍従に聞いた。

 さすが行動が早いな。

 僕は夫人とはほとんど話したこともないからよく知らないけど、わざわざ母上に会いに来たことから、婚約の打診についての苦情だろう。

 母上が諦めてくれれば良いが。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな
恋愛
 前世で死んだと思ったら、乙女ゲームの中に転生してました。 なんていうのが、一般的だと思うのだけど。  気がついたら、神様の前に立っていました。 神様が言うには、転生先はガチャで決めるらしいです。  初めて聞きました、そんなこと。 で、なんで何度回しても、悪役令嬢としかでないんですか?

処理中です...