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悪役令嬢、学園に入学する

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 アデルバード王国、王立学園の入学式。

 私は迎えに来てくれたカイルの制服姿に、脳内カーニバル状態だった。

 私の婚約者様が尊い。

 王立学園の制服は、真っ白なショート丈のジャケット。令息はパンツで、令嬢はワンピース。

 セーラーの襟は自由にすることが出来て、ゲーム内のアナスタシアは王太子の色の青色だった。

 今回?もちろんカイルの紫色よ。

 アナスタシアは銀髪銀の瞳なので、カイルには「お揃いにしませんか?」と提案して紫色にしてもらった。

 淡い紫色のリボンタイには銀の刺繍をして、相手と自分の色をお互いが纏うことにした。

 そして、私とカイルの左手の薬指には、お揃いの指輪が。

 この国にはペアリングという概念はないのだけど(結婚してもハメないらしい)私がなんかの折に憧れだと言うと、一ヶ月後にペアリングを持って来た。

 そして私が言った通りに、私の前に跪き指輪を差し出して来たのだ。

 はっきり言おう。

 カイル推しが私を殺しに来ている。

 ときめき過ぎて、息が止まるかと思ったわ。

 その指輪は、私とカイルの指で今日も光っている。

「カイル様・・・素敵ですわ」

「シアが天使すぎる。学園に行ったら、変な虫が寄ってくるかもしれない」

「はいはい!遅刻するぞ。どうせお前らは同じクラスなんだから、離れずいれば良いだろ。婚約者なんだし。僕は先に行くからな」

「エリザベス様によろしくお伝えくださいませ」

 兄ジュリアンは、三ヶ月前にエリザベス・スカイラー侯爵令嬢と婚約した。

 カイルの母親であるローレンス夫人の妹がスカイラー侯爵家に嫁いでいて、つまりはエリザベス様はカイルの従姉妹になる。

 ある日突然、カイルがエリザベス様と兄ジュリアンの婚約話を持って来た。

 エリザベス様は私たちと同い年なのだけど・・・

 とっても小柄で、なんていうか小動物のようなご令嬢だった。

 ウサギ?リス?ハムスター?
ちっちゃくて、所作が可愛くて、瞳が大きくてくるくるしていて。

 庇護欲がそそられるというの?
そしてお兄様はものの見事にエリザベス様に心を打ち抜かれた。

 ドキュン!
人が恋に落ちる音が聞こえた気がしたわ。

 お兄様はそれはそれは、エリザベス様を溺愛した。

 もう、溺愛って言葉がこれほど当てはまる状態はないんじゃないかと思うくらい。

 見てはないけど、今日のエリザベス様の制服は、お兄様の金色を連想させるレモンイエローの襟と、刺繍がされていると思う。

 ちなみに、お兄様の制服は婚約が決まった翌日には、襟がエリザベス様の瞳と髪色のオレンジ色になっていた。




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