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最終章

私はこんなに弱かった?

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「なら、僕がレティ以外を好きになったら、僕を殺して良いよ」

 イヴァン様の言葉が、私の中にゆっくりと染み渡っていく。

 お母様の部屋を訪れたイヴァン様に、お母様は二人でゆっくりと話し合うようにと退出を命じられた

 私はイヴァン様が滞在されている客間へと手を引かれる間中、胸が締め付けられるようだった。

 手に入らないなら、奪われるくらいなら、相手を殺す。

 それは過去に、私が何度も味わったことだ。

 侍女を脅して私を殺させてでも、侯爵家のお金を手に入れたかった夫。

 王子妃になるために、私の刺繍を自分のものだと偽った義妹。

 王妃の父親の地位を失いたくないために、孫の愛する女性を殺そうとした正妃様の父親。

 他の女性を聖女だと言い、私を見下していたくせに、私を愛していると言って殺した王太子。

 もし、イヴァン様が私を好きでなくなったからって、彼に手をかけたら私は、私を死に追いやった人たちと同じになってしまう。

 イヴァン様と私は、ソファーに一人分間を空けて隣に座った。

 未婚の男女が部屋に二人きりなのは醜聞になるので、普通なら侍女が壁際で待機する。

 彼らはそこにいても空気と同じであり、王宮に勤める彼らは守秘義務というものをちゃんと理解しているからだ。

 でも今は、扉は少し開けられているが侍女も護衛も扉の外で待機していた。

「レティ?それでも僕を信じられない?」

「いえ。いいえ。違うのです。イヴァン様のお気持ちを疑っているとかではないのです。ごめんなさい・・・」

 彼が心変わりをすると疑っているわけでも、彼の気持ちを信じていないわけでもない。

 ただ、ただ・・・失うのが怖いだけだ。

 、殺されるのではないかと不安なだけだ。

 私、こんなに弱かった?

 夫に他に好きな人がいると知って、それなら契約妻になろうとお給金を請求した。

 虐待されていたけど、上手く交換条件を出して、少しでも楽しく生きれるように工夫した。

 婚約を解消したくて、真実の愛の相手との仲が認められるように、色々と手助けをした。

 聖女の力を全て失ったと見せかけて、私を嫌いだと思っていた王子との婚約解消へとこぎつけた。

 自分が王妃になると国を荒らすことになるからと、私を愛してくれた人に愛妾としてなら嫁いでやると酷いことを言った。

 そんな私が、幸せになるためにをしていた私が、幸せを失うのが怖くて、尻込みするつもり?

 もし。
もしもまた殺されたら、今度こそ猫にでも転生させてもらえば良いじゃない。

 イヴァン様に嫌われたなら、彼を忘れる努力をしてみよう。

 そして、どうしてもどうしても、どうしても無理だったら・・・



 



 
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