126 / 144
最終章
婚約者ごっこは終わりでは?
しおりを挟む
チェリー様・・・もうチェリーさんでいいわよね。
彼女が去って、学園には平穏が訪れた。
彼女の愚行を見て、しかも結末まで知ったご令嬢たちは、学業と自分の将来に真面目に向き合い始めた。
令息たちの目に留まるように自分磨きをするようになり、イヴァン様にすり寄るような行為は全くなくなった。
「ふふっ。災い転じて福をなすというやつですね」
「なに、それ」
「自分に降りかかった災いを、見方や立場を変えることで上手く活用して、自分の役に立つようにすることです。チェリーさんのことは面倒でしたけど、こうしてイヴァン様の学園生活は穏やかなものになりましたから、良かったなと思いまして」
これで、私と婚約者のフリなんかしなくても、イヴァン様はのびのびと学園生活を送れるわ。
そう続けたら、イヴァン様はどこか不服そうなお顔をされた。
「僕と婚約者してるの、そんなに嫌?」
「え?」
嫌だなんて、私そんなこと言ってないわ。
確かにイヴァン様はちょっと腹黒というか意地悪なところがあるけれど、私の周囲はラウルお兄様をはじめとして年上の方ばかりだから、同い年のイヴァン様とご一緒するのは楽しいわ。
イヴァン様は、私が王女だからといって取り繕わない。平気で意地悪も言うの。
でも、本当はとても優しい。
私とアルフレッド陛下の婚約のことだって、本当は無視しても良かったのに、ジュリエッタ様との仲介をしてくださり、支えになって下さった。
あの頃・・・
恋を知らない私は、アルフレッド陛下の手を取ることが出来なかった。
ジュリエッタ妃殿下のように、愛妾になってでもアルフレッド陛下のそばにいたいと思えなかった。
廃嫡されてでもキャス様と結ばれたいと願った、アズリル殿下のような愛を知らなかった。
お父様やお母様、過去の公爵家のお父様たち、使用人のみんな、ラナやキャス様。
好きな人たちはたくさんいる。
だけど、この人でなければという、恋愛の好きを私はまだ知らない。
イヴァン様のことは、魔法の先生として尊敬もしてるし好意も持ってるわ。
だから嫌だなんて思ってない。
「前に聞いたよね。僕が他の令嬢をエスコートしても平気かって。あの答えって今聞いてもいい?」
フロランス様のエスコートをお願いしようと思ったら、確かにそう聞かれたわ。
あの時は、フロランス様から丁寧なご辞退をいただいて、リリアナお義姉様がロイド様にさせるっておっしゃったから、イヴァン様には私のエスコートをしていただいた。
あの時、私は・・・
イヴァン様が他のご令嬢の手を取り、微笑んでいるのを想像して、胸の奥がモヤっとしたの。
彼女が去って、学園には平穏が訪れた。
彼女の愚行を見て、しかも結末まで知ったご令嬢たちは、学業と自分の将来に真面目に向き合い始めた。
令息たちの目に留まるように自分磨きをするようになり、イヴァン様にすり寄るような行為は全くなくなった。
「ふふっ。災い転じて福をなすというやつですね」
「なに、それ」
「自分に降りかかった災いを、見方や立場を変えることで上手く活用して、自分の役に立つようにすることです。チェリーさんのことは面倒でしたけど、こうしてイヴァン様の学園生活は穏やかなものになりましたから、良かったなと思いまして」
これで、私と婚約者のフリなんかしなくても、イヴァン様はのびのびと学園生活を送れるわ。
そう続けたら、イヴァン様はどこか不服そうなお顔をされた。
「僕と婚約者してるの、そんなに嫌?」
「え?」
嫌だなんて、私そんなこと言ってないわ。
確かにイヴァン様はちょっと腹黒というか意地悪なところがあるけれど、私の周囲はラウルお兄様をはじめとして年上の方ばかりだから、同い年のイヴァン様とご一緒するのは楽しいわ。
イヴァン様は、私が王女だからといって取り繕わない。平気で意地悪も言うの。
でも、本当はとても優しい。
私とアルフレッド陛下の婚約のことだって、本当は無視しても良かったのに、ジュリエッタ様との仲介をしてくださり、支えになって下さった。
あの頃・・・
恋を知らない私は、アルフレッド陛下の手を取ることが出来なかった。
ジュリエッタ妃殿下のように、愛妾になってでもアルフレッド陛下のそばにいたいと思えなかった。
廃嫡されてでもキャス様と結ばれたいと願った、アズリル殿下のような愛を知らなかった。
お父様やお母様、過去の公爵家のお父様たち、使用人のみんな、ラナやキャス様。
好きな人たちはたくさんいる。
だけど、この人でなければという、恋愛の好きを私はまだ知らない。
イヴァン様のことは、魔法の先生として尊敬もしてるし好意も持ってるわ。
だから嫌だなんて思ってない。
「前に聞いたよね。僕が他の令嬢をエスコートしても平気かって。あの答えって今聞いてもいい?」
フロランス様のエスコートをお願いしようと思ったら、確かにそう聞かれたわ。
あの時は、フロランス様から丁寧なご辞退をいただいて、リリアナお義姉様がロイド様にさせるっておっしゃったから、イヴァン様には私のエスコートをしていただいた。
あの時、私は・・・
イヴァン様が他のご令嬢の手を取り、微笑んでいるのを想像して、胸の奥がモヤっとしたの。
16
お気に入りに追加
480
あなたにおすすめの小説
異世界を満喫します~愛し子は最強の幼女
かなかな
ファンタジー
異世界に突然やって来たんだけど…私これからどうなるの〜〜!?
もふもふに妖精に…神まで!?
しかも、愛し子‼︎
これは異世界に突然やってきた幼女の話
ゆっくりやってきますー
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
必要ないと言われたので、元の日常に戻ります
黒木 楓
恋愛
私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。
前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。
その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。
森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。
数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。
そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。
【完結済】逆恨みで婚約破棄をされて虐待されていたおちこぼれ聖女、隣国のおちぶれた侯爵家の当主様に助けられたので、恩返しをするために奮闘する
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
偉大な聖女であった母を持つ、落ちこぼれ聖女のエレナは、婚約者である侯爵家の当主、アーロイに人殺しの死神として扱われ、牢に閉じ込められて酷い仕打ちを受ける日々を送っていた。
そんなエレナは、今は亡き母の遺言に従って、必死に耐える日々を送っていたが、同じ聖女の力を持ち、母から教えを受けていたジェシーによってアーロイを奪われ、婚約破棄を突き付けられる。
ここにいても、ずっと虐げられたまま人生に幕を下ろしてしまう――そんなのは嫌だと思ったエレナは、二人の結婚式の日に屋敷から人がいなくなった隙を突いて、脱走を決行する。
なんとか脱走はできたものの、著しく落ちた体力のせいで川で溺れてしまい、もう駄目だと諦めてしまう。
しかし、偶然通りかかった隣国の侯爵家の当主、ウィルフレッドによって、エレナは一命を取り留めた。
ウィルフレッドは過去の事故で右の手足と右目が不自由になっていた。そんな彼に恩返しをするために、エレナは聖女の力である回復魔法を使うが……彼の怪我は深刻で、治すことは出来なかった。
当主として家や家族、使用人達を守るために毎日奮闘していることを知ったエレナは、ウィルフレッドを治して幸せになってもらうために、彼の専属の聖女になることを決意する――
これは一人の落ちこぼれ聖女が、体が不自由な男性を助けるために奮闘しながら、互いに惹かれ合って幸せになっていく物語。
※全四十五話予定。最後まで執筆済みです。この物語はフィクションです。
悪役皇女の巡礼活動 ~断罪されたので世直しの旅に出ます~
犬型大
恋愛
その日皇女は断罪された。
聖女に毒を盛り殺害しようとした罪で皇女たる身分を剥奪され、国外追放の処罰となった。
けれど皇女は何の反論もすることなく、それを受け入れた。
まるで最初からそうなることが分かっていたように。
「自由に旅をして、幸せを見つけたい」
断罪された皇女は神官として旅に出た。
自分の身を預かってくれた教会のため、そして幸せを願う人々のために巡礼を行いながら自分の幸せを見つけるための旅。
そこで出会ったのは変な男キリアン。
善きことをするのだと言い、助けてやったら妙に懐かれてお礼をするのだとついてきた。
元皇女テシアは巡礼旅の末に幸せを掴み取れるのか。
いや、絶対にハッピーエンドにしてみせるのだ。
「私は絶対に幸せになります」
後に聖女テシアの世直し旅と呼ばれることになる、世直しのつもりもないトラブル旅の物語が始まる。
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
“用済み”捨てられ子持ち令嬢は、隣国でオルゴールカフェを始めました
古森きり
恋愛
産後の肥立が悪いのに、ワンオペ育児で過労死したら異世界に転生していた!
トイニェスティン侯爵令嬢として生まれたアンジェリカは、十五歳で『神の子』と呼ばれる『天性スキル』を持つ特別な赤子を処女受胎する。
しかし、召喚されてきた勇者や聖女に息子の『天性スキル』を略奪され、「用済み」として国外追放されてしまう。
行き倒れも覚悟した時、アンジェリカを救ったのは母国と敵対関係の魔人族オーガの夫婦。
彼らの薦めでオルゴール職人で人間族のルイと仮初の夫婦として一緒に暮らすことになる。
不安なことがいっぱいあるけど、母として必ず我が子を、今度こそ立派に育てて見せます!
ノベルアップ+とアルファポリス、小説家になろう、カクヨムに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる