114 / 144
最終章
その笑顔はダメなやつです
しおりを挟む
「いじめ?」
確かに、引き取ったチェリー様を可愛がっていると聞いた。
でも、再婚して今は侯爵家に籍があるけど、チェリー様は侯爵家の人間ではない。
それなのに、嫡子であるフロランス様を蔑ろにしているだけでなく、いじめまでしているの?
「さすがに侯爵家の面子があるから、学園に通う用のドレスは与えられているみたいだけど、そのドレスっていわゆる既製品よね?侯爵家のご令嬢ならオーダーメイドでもおかしくないのに。現にあの妹のドレスはオーダーメイドでしょう?」
「・・・」
「それに、躾と称して見えないところを扇や鞭で叩かれているわよね?」
リリアナお義姉様の言葉に絶句する。
私も伯爵令嬢だった頃、冷遇されていたわ。
お父様には娘と認めてもらえず、日々食べるのもままならなかった。
でもお祖父様の手前、暴力だけは振るわれなかった。
「本当ですの?フロランス様」
「王太子妃殿下は・・・何故・・・」
確かに、どうしてリリアナお義姉様はそんな内事情を知ってるのかしら?
私が視線を向けると、リリアナお義姉様はにっこりと、でも見る人が見ればとてもとても怖い笑みを浮かべていた。
ヒィ!
お義姉様!その笑顔、駄目なやつです。
血が繋がってないはずなのに、どうしてお母様そっくりの笑顔なの!
「ふふっ、うふふっ。大切なレティーナ様が通う学園ですもの。下調べは万全ですわ」
「下調べっ?」
「王太子妃として当然ですわ。でも、愚かでもレティーナ様に害を為さなければ、もう少し侯爵でいられましたのに」
ど、どうしましょう。
お義姉様が怖い!
フロランス様も顔を青くされているわ。
お義姉様。お義姉様は魔法は使えないはずですよね?その溢れ出る冷気は一体・・・
「とりあえず、フロランス様は当分王宮で過ごされればよろしいわ。学園もお休みなさいませ。その間に、片付けてしまいますわ」
「王太子妃殿下・・・」
「お義姉様。どうなさるおつもりなのです?」
別に、ピスタス侯爵がどうなろうと構わない。
チェリー様も、イヴァン様に被害が及ぶ前に片付けてくれるというならありがたい。
でも、そんな父親でもフロランス様にとっては父親。
嫌な思いをしたりしないかしら?
「レティーナ様・・・私は醜いのでしょうか。父や・・・あの子が罰を受けると聞いても、ざまあみろと思ってしまうのです」
涙を浮かべてそう呟くフロランス様を、ぎゅっと抱きしめる。
ああ。
これは私だ。あの時、父やみんなに愛されなかった私だ。
良いように道具として扱われた私が、今目の前で泣いている。
確かに、引き取ったチェリー様を可愛がっていると聞いた。
でも、再婚して今は侯爵家に籍があるけど、チェリー様は侯爵家の人間ではない。
それなのに、嫡子であるフロランス様を蔑ろにしているだけでなく、いじめまでしているの?
「さすがに侯爵家の面子があるから、学園に通う用のドレスは与えられているみたいだけど、そのドレスっていわゆる既製品よね?侯爵家のご令嬢ならオーダーメイドでもおかしくないのに。現にあの妹のドレスはオーダーメイドでしょう?」
「・・・」
「それに、躾と称して見えないところを扇や鞭で叩かれているわよね?」
リリアナお義姉様の言葉に絶句する。
私も伯爵令嬢だった頃、冷遇されていたわ。
お父様には娘と認めてもらえず、日々食べるのもままならなかった。
でもお祖父様の手前、暴力だけは振るわれなかった。
「本当ですの?フロランス様」
「王太子妃殿下は・・・何故・・・」
確かに、どうしてリリアナお義姉様はそんな内事情を知ってるのかしら?
私が視線を向けると、リリアナお義姉様はにっこりと、でも見る人が見ればとてもとても怖い笑みを浮かべていた。
ヒィ!
お義姉様!その笑顔、駄目なやつです。
血が繋がってないはずなのに、どうしてお母様そっくりの笑顔なの!
「ふふっ、うふふっ。大切なレティーナ様が通う学園ですもの。下調べは万全ですわ」
「下調べっ?」
「王太子妃として当然ですわ。でも、愚かでもレティーナ様に害を為さなければ、もう少し侯爵でいられましたのに」
ど、どうしましょう。
お義姉様が怖い!
フロランス様も顔を青くされているわ。
お義姉様。お義姉様は魔法は使えないはずですよね?その溢れ出る冷気は一体・・・
「とりあえず、フロランス様は当分王宮で過ごされればよろしいわ。学園もお休みなさいませ。その間に、片付けてしまいますわ」
「王太子妃殿下・・・」
「お義姉様。どうなさるおつもりなのです?」
別に、ピスタス侯爵がどうなろうと構わない。
チェリー様も、イヴァン様に被害が及ぶ前に片付けてくれるというならありがたい。
でも、そんな父親でもフロランス様にとっては父親。
嫌な思いをしたりしないかしら?
「レティーナ様・・・私は醜いのでしょうか。父や・・・あの子が罰を受けると聞いても、ざまあみろと思ってしまうのです」
涙を浮かべてそう呟くフロランス様を、ぎゅっと抱きしめる。
ああ。
これは私だ。あの時、父やみんなに愛されなかった私だ。
良いように道具として扱われた私が、今目の前で泣いている。
16
お気に入りに追加
480
あなたにおすすめの小説
異世界を満喫します~愛し子は最強の幼女
かなかな
ファンタジー
異世界に突然やって来たんだけど…私これからどうなるの〜〜!?
もふもふに妖精に…神まで!?
しかも、愛し子‼︎
これは異世界に突然やってきた幼女の話
ゆっくりやってきますー
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
“用済み”捨てられ子持ち令嬢は、隣国でオルゴールカフェを始めました
古森きり
恋愛
産後の肥立が悪いのに、ワンオペ育児で過労死したら異世界に転生していた!
トイニェスティン侯爵令嬢として生まれたアンジェリカは、十五歳で『神の子』と呼ばれる『天性スキル』を持つ特別な赤子を処女受胎する。
しかし、召喚されてきた勇者や聖女に息子の『天性スキル』を略奪され、「用済み」として国外追放されてしまう。
行き倒れも覚悟した時、アンジェリカを救ったのは母国と敵対関係の魔人族オーガの夫婦。
彼らの薦めでオルゴール職人で人間族のルイと仮初の夫婦として一緒に暮らすことになる。
不安なことがいっぱいあるけど、母として必ず我が子を、今度こそ立派に育てて見せます!
ノベルアップ+とアルファポリス、小説家になろう、カクヨムに掲載しています。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結済】逆恨みで婚約破棄をされて虐待されていたおちこぼれ聖女、隣国のおちぶれた侯爵家の当主様に助けられたので、恩返しをするために奮闘する
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
偉大な聖女であった母を持つ、落ちこぼれ聖女のエレナは、婚約者である侯爵家の当主、アーロイに人殺しの死神として扱われ、牢に閉じ込められて酷い仕打ちを受ける日々を送っていた。
そんなエレナは、今は亡き母の遺言に従って、必死に耐える日々を送っていたが、同じ聖女の力を持ち、母から教えを受けていたジェシーによってアーロイを奪われ、婚約破棄を突き付けられる。
ここにいても、ずっと虐げられたまま人生に幕を下ろしてしまう――そんなのは嫌だと思ったエレナは、二人の結婚式の日に屋敷から人がいなくなった隙を突いて、脱走を決行する。
なんとか脱走はできたものの、著しく落ちた体力のせいで川で溺れてしまい、もう駄目だと諦めてしまう。
しかし、偶然通りかかった隣国の侯爵家の当主、ウィルフレッドによって、エレナは一命を取り留めた。
ウィルフレッドは過去の事故で右の手足と右目が不自由になっていた。そんな彼に恩返しをするために、エレナは聖女の力である回復魔法を使うが……彼の怪我は深刻で、治すことは出来なかった。
当主として家や家族、使用人達を守るために毎日奮闘していることを知ったエレナは、ウィルフレッドを治して幸せになってもらうために、彼の専属の聖女になることを決意する――
これは一人の落ちこぼれ聖女が、体が不自由な男性を助けるために奮闘しながら、互いに惹かれ合って幸せになっていく物語。
※全四十五話予定。最後まで執筆済みです。この物語はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる