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最終章

その笑顔はダメなやつです

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「いじめ?」

 確かに、引き取ったチェリー様を可愛がっていると聞いた。

 でも、再婚して今は侯爵家に籍があるけど、チェリー様は侯爵家の人間ではない。

 それなのに、嫡子であるフロランス様を蔑ろにしているだけでなく、いじめまでしているの?

「さすがに侯爵家の面子があるから、学園に通う用のドレスは与えられているみたいだけど、そのドレスっていわゆる既製品よね?侯爵家のご令嬢ならオーダーメイドでもおかしくないのに。現にあの妹のドレスはオーダーメイドでしょう?」

「・・・」

「それに、躾と称して見えないところを扇や鞭で叩かれているわよね?」

 リリアナお義姉様の言葉に絶句する。

 私も伯爵令嬢だった頃、冷遇されていたわ。
 お父様には娘と認めてもらえず、日々食べるのもままならなかった。

 でもお祖父様の手前、暴力だけは振るわれなかった。

「本当ですの?フロランス様」

「王太子妃殿下は・・・何故・・・」

 確かに、どうしてリリアナお義姉様はそんな内事情を知ってるのかしら?

 私が視線を向けると、リリアナお義姉様はにっこりと、でも見る人が見ればとてもとても怖い笑みを浮かべていた。

 ヒィ!
お義姉様!その笑顔、駄目なやつです。

 血が繋がってないはずなのに、どうしてお母様そっくりの笑顔なの!

「ふふっ、うふふっ。大切なレティーナ様が通う学園ですもの。下調べは万全ですわ」

「下調べっ?」

「王太子妃として当然ですわ。でも、愚かでもレティーナ様に害を為さなければ、もう少し侯爵でいられましたのに」

 ど、どうしましょう。
お義姉様が怖い!

 フロランス様も顔を青くされているわ。
お義姉様。お義姉様は魔法は使えないはずですよね?その溢れ出る冷気は一体・・・

「とりあえず、フロランス様は当分王宮で過ごされればよろしいわ。学園もお休みなさいませ。その間に、片付けてしまいますわ」

「王太子妃殿下・・・」

「お義姉様。どうなさるおつもりなのです?」

 別に、ピスタス侯爵がどうなろうと構わない。
 チェリー様も、イヴァン様に被害が及ぶ前に片付けてくれるというならありがたい。

 でも、そんな父親でもフロランス様にとっては父親。

 嫌な思いをしたりしないかしら?

「レティーナ様・・・私は醜いのでしょうか。父や・・・あの子が罰を受けると聞いても、ざまあみろと思ってしまうのです」

 涙を浮かべてそう呟くフロランス様を、ぎゅっと抱きしめる。

 ああ。
これは私だ。あの時、父やみんなに愛されなかった私だ。

 良いように道具として扱われた私が、今目の前で泣いている。


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