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最終章

言葉が通じない

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 入学式以降、チェリー様はアストニア様・・・イヴァン様に話しかけようとAクラスにやってくるようになった。

 学園のクラス分けは、以前通りに成績順で、彼女は最低位のDクラスだった。

 AクラスからDクラスまでは結構な距離があるのに、休み時間のたびにやってくる。

 ちゃんと授業受けてるのかしら?

 ラウルお兄様の時同様、教師は注意したりしない。

 注意するのは、私や高位貴族の役目なんだけど、はっきり言って関わりたくないわ。

 だって言葉が通じないんだもの。

 だけど王族としての務めと、イヴァン様に迷惑をかけるから、何度も注意したのだけど・・・

「酷い!どうして私とイヴァン様の邪魔をするのよ!」

「何度言えば分かるの?イヴァン様でなくアストニア様とお呼びしなさい。貴女、貴族でしょう?ここは王立学園。貴族としての行いを求める場なのよ?」

 隣で黒いオーラを出し始めたイヴァン様を止めるために、チェリー様に注意をする。

 チェリー様は何度言っても、イヴァン様をお名前で呼ぶ。

 だから私がこう注意した後の返しは必ず・・・

「貴女だって名前で呼んでるじゃない!王女だから良いっていうの?でも、どこかの貴族に嫁いで王族でなくなるじゃない!そしたら私と変わらないわ!」

 ほらね。

 確かに、ラウルお兄様がいずれ国王陛下になられ、リリアナお義姉様との嫡子であるリクルが王太子となる。

 だから私は降嫁することになるけれど、でも王族なのよ?

 それにチェリー様とではない。

 チェリー様は、ピスタス侯爵家の次女だった。

 ただし、正当な侯爵令嬢ではない。

 ピスタス侯爵には、前妻との間にフロランス嬢というご令嬢がいる。

 妻を亡くした後、後妻に迎えたのが男爵家に嫁ぎ、離縁されて実家の男爵家に戻っていた夫人だ。

 そして夫人の連れ子がチェリー様。
つまり、彼女は侯爵令嬢ではなく男爵令嬢なのである。

 我が国の法では、正当な血筋でないと家を継ぐことが出来ない。

 つまりは、ピスタス侯爵家を継げるのは、フロランス様か、新たにピスタス侯爵と夫人の間に生まれる子供、もしくはピスタス侯爵の血筋の親戚筋の子供、ということになる。

 現在はピスタス侯爵の名を名乗れるけど、チェリー様には侯爵家を継ぐことは出来ない。

 あくまでも嫁入りするまでの、仮の名前なのだ。

 私もファンブルクを名乗るのは、嫁入りするまでだけど、私は正当なファンブルクの娘である。

 ラウルお兄様に嫡子が生まれたから、憂なく降嫁出来るけど、お兄様家族に何かあれば、私は王家を継がなければならない。

 その私と同じわけがないでしょう?
 

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