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最終章

どこに常識を落としてきたの?

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 入学式の後、クラスに分かれるときにそれは起きた。

「あのぅ。私ぃ、チェリーって言いますぅ。一緒にクラスまで行きませんかぁ?」

 私、思うんだけど・・・
語尾を伸ばして話さないとヒロインにはなれないのかしら。

 本人は媚びてるつもりなのかもしれないけど、馬鹿にしか見えないわ。

 彼女は転生者のほうね。
だって、髪と瞳がピンク色だもの。

 どうして乙女ゲームのヒロインって、髪や瞳がピンク色なのかしら。

 もしかして、脳内のお花畑ぶりが髪色とかに現れてるの?

 確かに可愛いとは思うわ。
小柄だし、守ってあげたくなるっていうのかしら。

 レティーナわたしも小柄だけど、銀色のストレートの髪って冷たい感じがするのよね。

 ドレスも、華美にならないように、フリルやレースは控えて刺繍のみだから、可愛いよりは品良く見えると思う。

 目の前のチェリーと名乗ったご令嬢は、可愛らしいパステルピンクのドレスで、フリルとレースがたっぷり。

 似合ってるから、逆に羨ましいわ。
学園に着てくるのはどうかと思うけど。誰も止めなかったのかしら。

 アストニア様は、チェリー様の言葉に視線も向けず、私に向きかえる。

「この後、教室に行けば良いんだよね?」

「はい。授業は明後日の週明けからになりますが。顔合わせみたいなものですね」

 日本でいうところの、今日は金曜日。
一週間は七日あって、週休二日制なところも日本と変わらない。

 教科書やその他の教材は、侍女と侍従が持ってくれているので、手ぶらで教室に向かえば大丈夫だ。

 アストニア様がファンブルク王国に長期滞在するにあたって、侍従を付けさせてもらった。

 ファンブルクでは気を遣って魔法を使われないので、護衛を兼ねて侍従を付けたの。

 街にお出かけになった時の二の舞はゴメンだわ。

 私たちに無視されたことが分かったのか、チェリー様がその目を吊り上げる。

「ちょっと!私がその人と話してるのに、邪魔しないで!」

 私、いつも思うのだけど。
どうして転生者の人って常識がないの?

 ドレスを着て、学園に入学しているということは、貴族なのよね?

 多分、乙女ゲーム的な感じだと、転生者は男爵家や子爵家の養女とかだと思う。

 平民だったのが引き取られたってやつよ。

 それはともかくとして、令嬢としての教育はどうなってるの?

 いくらなんでも、昨日転生したばかりとかじゃないのでしょう?

 私、この国の王女なのよ?
私の顔を知らなくても、私の後ろには護衛を兼ねた侍女がいるのよ?

 貴族しか通わないこの学園は、王族や高位貴族は、侍従や侍女を二人まで連れてこれる。

 その時点で、自分よりも身分が上だと分かりそうなものなのに。
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