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新たな舞台へ

婚約者VS婚約者

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「・・・はじめまして。ジュリエッタ・フルールと申します。フルール公爵家の長女ですわ」

 フルール様はそう言って、マナーの見本のような、完璧なカーテシーをされた。

 煌めくような金髪は、クルクルと巻かれている。
 前世で読んだ漫画の○□夫人みたいだわ。あれって毎朝巻くのかしら?

 エメラルドの瞳は少しつり目で、猫のようだ。

「今日はお時間をとっていただき、ありがとうございます。レティーナ・ファンブルクです」

「お聞きしてもよろしいでしょうか?何故、私と?」

「会いたかったから・・・では駄目でしょうか?私はこの国に来てから初めてアルフレッド陛下に婚約者様がいらっしゃったと知りました。知らなかったことを免罪符にするつもりはありませんが、真実を知る義務があると思うのです」

 権利ではなく義務だと言うと、フルール様は複雑そうな表情で目を伏せられた。

 権利だと主張するのは簡単よ。
だって、一応はアルフレッド陛下からの求婚だもの。

 でも、我が国の不始末を私が婚約者になるということで治めていただいたのも事実。

 その場合は権利ではなく義務よね。

 それに、アストニア様のおっしゃった通りにフルール様との婚約が正式に解消されていないのなら、私は側妃候補ということになるのかしら?

 我がファンブルク王国は一夫一妻制だし、愛妾は許可されていない。
 国王のみは側妃を娶ることが許されているけど、それは正妃が三年子を授からない場合のみだわ。

 サウスクラウド王国は、愛妾は持てるみたいだけど、確か側妃を娶る条件は同じだったはず。

「・・・ファンブルク王女殿下は、現在十一歳とお伺いしました」

「はい。私が成婚できるのは、成人する十六歳からになります。フルール様は、アルフレッド陛下と同い年でいらっしゃるのですか?」

「はい。今年、十九歳になりました。十一歳、今の王女殿下と同じ歳の時に陛下と婚約いたしました」

 十九歳なら・・・本当なら成人されたら成婚されるはずだったのね。

 王弟殿下の謀反さえなければ、きっとその未来は普通に訪れていたはず。

 だけど、争いのせいでアルフレッド陛下はファンブルク王国へと避難し、幼いレティーナと出会った。

 当時、五歳だったレティーナが、兄であるラウル王子と同じようにアルフレッド陛下を慕ってもおかしくない。

 そして、叔父や親族に命を狙われたアルフレッド陛下が、そのことに癒されたのも仕方のないこと。

 アルフレッド陛下のお父様である先王は、戻って来れないことを憂慮して、婚約の解消をフルール公爵家に告げたのだと思う。

 でも・・・
フルール様は、承諾しなかった。

 アルフレッド陛下のことがお好きだったのね。

 
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