虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい

みおな

文字の大きさ
上 下
72 / 144
やり直しの人生

身分社会

しおりを挟む
「僕もお供しよう」

 そう言って笑ったアルフレッド陛下は、それはそれはとてもお顔をされていた。

 なんていうのかしら。黒い笑みっていうの?何か企んでます的な笑み。

 それを素敵だと思ってしまうあたり、私も心が歪んでしまったのかしら。

 でも、仕方ないわよね?
四度よ。その環境で精一杯生きようと頑張っていたのに、四度も理不尽に殺されたの。

 綺麗で素直な心のままでは居られないわ。

 私とアルフレッド陛下が近付いてくるのを、お兄様たちが気付く。

 まぁ!お兄様の嫌そうなお顔。
そんなに私に、彼らに接触して欲しくないのね。

 お気持ちは分かるわ。
だってダウニー様が、うっとりとした顔でアルフレッド陛下を見てるもの。

 アルフレッド陛下は、とても整ったお顔をされているものね。
 しかも現在十八歳の陛下は、周囲の『子供』と違って、とても頼り甲斐のあるわ。

 ダウニー様が転生者で、それなりの年齢で転生したのなら、間違いなくアルフレッド陛下に惹かれるはずよ。

「レティー・・・」

「あのっ!はじめまして、私アンジュ・ダウニーって言いますっ!」

 お兄様の呼びかけに被せるように、ダウニー様がアルフレッド陛下の前へと歩み出る。

 肉食系女子なのかしら?
でも、ちょうどよかったわ。これなら、私がどうこうしなくても、陛下への不敬だけで処罰できそうね。

「ダウニー嬢!下がれ、不敬だ!」

「ダウニー様、身分の高い方に勝手に話しかけては駄目だとあれほど・・・誠に申し訳ございません」

 お兄様が叱責し、クレスト様が謝罪される。

 クレスト様は、アルフレッド陛下のことをご存知なのね。

 ラグドール様やナルシス様は、ご存じないみたいだけど。
 当然、ダウニー様が知っているわけないわよね。

 もっとも、知ってても変わらなかった気もするけれど。

「リリアナ様もラウル様も、どうしてそんなこと言うんですか?挨拶って大事だと思います!」

 ダウニー様の言うこと、前世の感覚でいうなら、わからなくもない。
 前世なら、身分の下の者から挨拶はしていたもの。

 でもね。
貴族の世界は違うの。よく言うじゃない。郷に入れば郷に従えって。

 男爵家という貴族の娘に転生したのなら、それに従うべきなの。

 貴族の世界って、身分社会なのよ?
勝手に相手の名前を呼んではいけない。許されるまでは家名に様付けが当然。

 勝手に名前で呼んでも許されるのは、国王陛下くらいよ。
 王族とはいえ、私やお兄様でも相手の許可なくお名前で呼んだりしないわ。

 上の身分の者の許しなく、勝手に発言してはいけない。

 私やアルフレッド陛下の身分を知らなかったとしても、お兄様やクレスト様の叱責を無視するなんて、ね。

しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

処理中です...