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やり直しの人生
あれはダメなヤツですね
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「ラグドール様、ナルシス様。わたくしが何をしたとおっしゃって?」
冷ややかな声だ。
まぁ、ね。私が当事者だとしても同じように・・・いえ、もっと辛辣に言ったと思うわ。
格上の公爵令嬢に、挨拶もせずにいきなり文句を言ったディラン・ラグドール。
婚約者がいるのに男爵令嬢の肩を抱き寄せたリュクール・ナルシス。
ああ!
こんな国の恥部をアルフレッド陛下に見られるなんて。
チラリと隣に立つアルフレッド陛下を見上げると、陛下は何故か楽しそうにその様子をご覧になっていた。
「陛下?」
「いや。本当にあんなのに引っかかる男もいるんだな、と思うと面白くて・・・いや。すまない。面白いなどと」
「いいえ。まさかあんなのがいるだなんて、私も思いませんでした。兄は何をしているのでしょうか」
「ラウル殿下なら・・・ほら、あちらから見えたよ」
アルフレッド陛下の視線の先を見ると、ラウルお兄様が四人の元へ駆けつけて来るのが見えた。
「何をしている!」
「え?ラウル様?まだお休みのはずじゃ」
「殿下、どうしてこちらに?」
「あら?ラウル殿下。ご機嫌よう」
うん。三者三様の反応だわ。
お兄様を名前で呼んで、休みのはずだと言ったヒロイン。
同じクラスじゃないのね。そして、ラグドール様やナルシス様のこともそうだけど、名前呼びすることがどういうことか、理解していないのかしら。
お兄様がこの場所へ来たことを、不思議そうなナルシス様。
どういうことかしら?お兄様がすぐに来なかったことと関係あるの?
そして、平然とお兄様に挨拶をしたリリアナ様。
この方が、一番マトモよね。
彼らに非難されることも気にしていないみたいだし。
「ディラン、リュクール。何をしている」
「何をと申されましても。そこの、クレスト嬢がアンジュをまたいじめていたので注意していたのです」
「そうです。大人しいアンジュは、クレスト嬢に言われるままに耐えて、泣いていたのです」
ラグドール様とナルシス様の言葉に、お兄様がため息を吐く。
「ディラン、リュクール。婚約者のいるお前たちが、婚約者以外のご令嬢を名前で呼んでいる理由を言ってみろ」
「え、あ、それは・・・」
「ラウル様、それは、二人が私のことを孤立していてかわいそうだからって・・・」
「ダウニー様。何度言えばご理解下さいますの?ラウル様ではなく、王太子殿下とお呼びなさい」
「リリアナ様だって、ラウル様のお名前呼んでるじゃないですか。どうしていつもいつもそんな酷いこと言うんですか?」
いじめられてるアピールなのか、ダウニー男爵令嬢はそのピンク色の瞳に涙をいっぱい溜めて、お兄様を見上げた。
冷ややかな声だ。
まぁ、ね。私が当事者だとしても同じように・・・いえ、もっと辛辣に言ったと思うわ。
格上の公爵令嬢に、挨拶もせずにいきなり文句を言ったディラン・ラグドール。
婚約者がいるのに男爵令嬢の肩を抱き寄せたリュクール・ナルシス。
ああ!
こんな国の恥部をアルフレッド陛下に見られるなんて。
チラリと隣に立つアルフレッド陛下を見上げると、陛下は何故か楽しそうにその様子をご覧になっていた。
「陛下?」
「いや。本当にあんなのに引っかかる男もいるんだな、と思うと面白くて・・・いや。すまない。面白いなどと」
「いいえ。まさかあんなのがいるだなんて、私も思いませんでした。兄は何をしているのでしょうか」
「ラウル殿下なら・・・ほら、あちらから見えたよ」
アルフレッド陛下の視線の先を見ると、ラウルお兄様が四人の元へ駆けつけて来るのが見えた。
「何をしている!」
「え?ラウル様?まだお休みのはずじゃ」
「殿下、どうしてこちらに?」
「あら?ラウル殿下。ご機嫌よう」
うん。三者三様の反応だわ。
お兄様を名前で呼んで、休みのはずだと言ったヒロイン。
同じクラスじゃないのね。そして、ラグドール様やナルシス様のこともそうだけど、名前呼びすることがどういうことか、理解していないのかしら。
お兄様がこの場所へ来たことを、不思議そうなナルシス様。
どういうことかしら?お兄様がすぐに来なかったことと関係あるの?
そして、平然とお兄様に挨拶をしたリリアナ様。
この方が、一番マトモよね。
彼らに非難されることも気にしていないみたいだし。
「ディラン、リュクール。何をしている」
「何をと申されましても。そこの、クレスト嬢がアンジュをまたいじめていたので注意していたのです」
「そうです。大人しいアンジュは、クレスト嬢に言われるままに耐えて、泣いていたのです」
ラグドール様とナルシス様の言葉に、お兄様がため息を吐く。
「ディラン、リュクール。婚約者のいるお前たちが、婚約者以外のご令嬢を名前で呼んでいる理由を言ってみろ」
「え、あ、それは・・・」
「ラウル様、それは、二人が私のことを孤立していてかわいそうだからって・・・」
「ダウニー様。何度言えばご理解下さいますの?ラウル様ではなく、王太子殿下とお呼びなさい」
「リリアナ様だって、ラウル様のお名前呼んでるじゃないですか。どうしていつもいつもそんな酷いこと言うんですか?」
いじめられてるアピールなのか、ダウニー男爵令嬢はそのピンク色の瞳に涙をいっぱい溜めて、お兄様を見上げた。
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