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やり直しの人生
遭遇
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護衛が戻って来たのは、三十分ほど待ってからだった。
どうやら、お父様とお兄様はお客様のお相手に忙しいらしく、同じくお相手をしていたお母様が合間にお返事を下さったそうだ。
「お早くお部屋へお戻りくださいとのことです」
「わかったわ。じゃあ、早く行きましょう」
セレナと護衛を促して、部屋を出る。
国王陛下や王妃殿下、王太子殿下までもがお相手しているお客様に、王女である私が挨拶さえしないのを疑問に思うだろう。
え?もしかして邪険にされてる?などと思ってはいけない。
お父様もお兄様も、私を他国の人間に会わせたくないのだ。
他国どころか、自国の公爵家や侯爵家の人間とも会わせようとしない。
理由は、セレナからもたらされた。
散歩に強行突破した後、ガン泣きされた理由を教えられたのだ。
どうやらレティーナ、五歳の頃に誘拐されかけたらしい。
しかも、自国の伯爵家の人間に。
当時、王族の騎士をしていたその男は、愛らしいレティーナを自分の物にしたかったらしい。
だが、二十歳の自分が王女を娶れるわけがないことを理解していた。
だから、ずっと機会を狙っていたらしい。
侍女がほんの少し目を離した隙に、レティーナを抱きかかえ、そのまま拉致しようとした。
すぐに気付いた侍女の声と、幼児ながら大暴れしたレティーナによって、誘拐は未遂に終わった。
私からすれば、その騎士がロリコンというか幼児嗜好の変態だっただけだと思うのだけど、家族はレティーナの可愛いさは犯罪を招くと思ったらしい。
それ以来、レティーナは居住区から無断で出ることも、自国他国問わず、必要最低限以上は人と会うこともなく過ごすことになった。
そのせいか、十歳になった今も、レティーナには友達がいない。
家族が心配する気持ちは分からないでもないから、真相を聞いた今は勝手に出歩いたりはしないが、さすがに自由がなさ過ぎると思う。
たった一人の変態のせいで、迷惑この上ない。
まぁ、だからといって家族を困らせたいわけではないので、数日は散歩に出れなくても退屈しなくて済むように、数冊の本を選んだ。
そして、部屋に戻ろうと図書室を出たところで、ラウルお兄様とばったりと顔を合わせた。
ラウルお兄様はひとりではなかった。
いや、正確には常に護衛は付いているから一人というわけではないのだが、お兄様の隣には見たことのない男性が立っていた。
藍色の髪に、アメジスト色の瞳。
ラウルお兄様より少し年上だろうか。
細身で背が高く、とても整った顔立ちの美青年とラウルお兄様、そして私は、お互いの姿を見た途端、ピタリと固まったのだった。
どうやら、お父様とお兄様はお客様のお相手に忙しいらしく、同じくお相手をしていたお母様が合間にお返事を下さったそうだ。
「お早くお部屋へお戻りくださいとのことです」
「わかったわ。じゃあ、早く行きましょう」
セレナと護衛を促して、部屋を出る。
国王陛下や王妃殿下、王太子殿下までもがお相手しているお客様に、王女である私が挨拶さえしないのを疑問に思うだろう。
え?もしかして邪険にされてる?などと思ってはいけない。
お父様もお兄様も、私を他国の人間に会わせたくないのだ。
他国どころか、自国の公爵家や侯爵家の人間とも会わせようとしない。
理由は、セレナからもたらされた。
散歩に強行突破した後、ガン泣きされた理由を教えられたのだ。
どうやらレティーナ、五歳の頃に誘拐されかけたらしい。
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当時、王族の騎士をしていたその男は、愛らしいレティーナを自分の物にしたかったらしい。
だが、二十歳の自分が王女を娶れるわけがないことを理解していた。
だから、ずっと機会を狙っていたらしい。
侍女がほんの少し目を離した隙に、レティーナを抱きかかえ、そのまま拉致しようとした。
すぐに気付いた侍女の声と、幼児ながら大暴れしたレティーナによって、誘拐は未遂に終わった。
私からすれば、その騎士がロリコンというか幼児嗜好の変態だっただけだと思うのだけど、家族はレティーナの可愛いさは犯罪を招くと思ったらしい。
それ以来、レティーナは居住区から無断で出ることも、自国他国問わず、必要最低限以上は人と会うこともなく過ごすことになった。
そのせいか、十歳になった今も、レティーナには友達がいない。
家族が心配する気持ちは分からないでもないから、真相を聞いた今は勝手に出歩いたりはしないが、さすがに自由がなさ過ぎると思う。
たった一人の変態のせいで、迷惑この上ない。
まぁ、だからといって家族を困らせたいわけではないので、数日は散歩に出れなくても退屈しなくて済むように、数冊の本を選んだ。
そして、部屋に戻ろうと図書室を出たところで、ラウルお兄様とばったりと顔を合わせた。
ラウルお兄様はひとりではなかった。
いや、正確には常に護衛は付いているから一人というわけではないのだが、お兄様の隣には見たことのない男性が立っていた。
藍色の髪に、アメジスト色の瞳。
ラウルお兄様より少し年上だろうか。
細身で背が高く、とても整った顔立ちの美青年とラウルお兄様、そして私は、お互いの姿を見た途端、ピタリと固まったのだった。
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