上 下
53 / 144
やり直しの人生

目覚め

しおりを挟む
 神様の中の誰かが、私に悪意の種を仕込んでいる。

 でも、それを防ぐ事は出来ない。
そして、それをしている理由も分からない。

 それって、この空間で待っていた意味がないということでは?

 いや。せっかく調べようとしてくれていたんだし、そんな事は考えちゃいけない。

 しかし、人に嫌われたり憎まれたりする事は、結構なストレスになる。
 挙句に殺されるんだからたまったもんじゃない。

『レティーナの持つ力は、四回の転生を経て、相当強くなっている。前回がトップクラスの聖女だったというのがその証拠だ。そして、次の転生ではその身分も強いものにしておく。貴族より平民の方が生きやすいかと思ったのが間違いだった。次こそはレティーナに幸せになってもらいたいからね』

 力を強くするとか、思うところはあるけれど、私に幸せになって欲しいと言ってくれることに関しては、嬉しいと思う。

『レティーナ。結局、キミに任せることになってしまうけど、どうかイレギュラーを跳ね除けて、幸せになって欲しい』

「私は私にできることをするだけです」

『うん。そうだね。それでこそ礼奈だ。もう会うことがないことを祈るよ』

 その言葉を最後に、私の意識は暗転した。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「んっ・・・」

「レティーナ様?レティーナ様?」

 かけられる声に意識が浮上する。
必死そうなその声は、私が瞼を震わせるように開けると、歓喜に変わった。

「レティーナ様ッ!レティーナ様がお目覚めに!すぐに陛下たちにお知らせしてっ!」

「「はいっ!」」

 その声は扉の外まで聞こえたのか、返答した相手は外にいるらしく、すぐに立ち去るような音が聞こえた。

「レティーナ様。すぐに医師をお呼びします。どこか痛いところなどございますか?」

 目尻に涙を浮かべながらも、ベッド横に跪き尋ねてくれるのは、柔らかな栗色の髪をした、十七歳くらいの少女だった。

 黒地のお仕着せを着た彼女は、とても心配そうに、でも私が目覚めたことをとても嬉しそうにしていた。

 んー。これは、しばらく意識がなかったという感じかしら。

 さすがに四回もやり直せば、何となくわかる。
 これは三度目の公爵令嬢の時と同じパターンのようだ。

 侍女がいることといい、私が眠っていたベッドが天蓋付きということといい、貴族でも上位ということだろう。

 私の容姿は基本的には変わらないから、あとは年齢と立ち位置ね・・・

 私のことを大切にしてくれているようだし、ここは記憶喪失と言うべきだろう。
 二回目と違って、大切にしてくれていた人たちのことを全く覚えていないのは、問題だから。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界を満喫します~愛し子は最強の幼女

かなかな
ファンタジー
異世界に突然やって来たんだけど…私これからどうなるの〜〜!? もふもふに妖精に…神まで!? しかも、愛し子‼︎ これは異世界に突然やってきた幼女の話 ゆっくりやってきますー

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

自分こそは妹だと言い張る、私の姉

神楽ゆきな
恋愛
地味で大人しいカトリーヌと、可愛らしく社交的なレイラは、見た目も性格も対照的な姉妹。 本当はレイラの方が姉なのだが、『妹の方が甘えられるから』という、どうでも良い理由で、幼い頃からレイラが妹を自称していたのである。 誰も否定しないせいで、いつしか、友人知人はもちろん、両親やカトリーヌ自身でさえも、レイラが妹だと思い込むようになっていた。 そんなある日のこと、『妹の方を花嫁として迎えたい』と、スチュアートから申し出を受ける。 しかしこの男、無愛想な乱暴者と評判が悪い。 レイラはもちろん 「こんな人のところにお嫁に行くのなんて、ごめんだわ!」 と駄々をこね、何年かぶりに 「だって本当の『妹』はカトリーヌのほうでしょう! だったらカトリーヌがお嫁に行くべきだわ!」 と言い放ったのである。 スチュアートが求めているのは明らかに可愛いレイラの方だろう、とカトリーヌは思ったが、 「実は求婚してくれている男性がいるの。 私も結婚するつもりでいるのよ」 と泣き出すレイラを見て、自分が嫁に行くことを決意する。 しかし思った通り、スチュアートが求めていたのはレイラの方だったらしい。 カトリーヌを一目見るなり、みるみる険しい顔になり、思い切り壁を殴りつけたのである。 これではとても幸せな結婚など望めそうにない。 しかし、自分が行くと言ってしまった以上、もう実家には戻れない。 カトリーヌは底なし沼に沈んでいくような気分だったが、時が経つにつれ、少しずつスチュアートとの距離が縮まり始めて……?

“用済み”捨てられ子持ち令嬢は、隣国でオルゴールカフェを始めました

古森きり
恋愛
産後の肥立が悪いのに、ワンオペ育児で過労死したら異世界に転生していた! トイニェスティン侯爵令嬢として生まれたアンジェリカは、十五歳で『神の子』と呼ばれる『天性スキル』を持つ特別な赤子を処女受胎する。 しかし、召喚されてきた勇者や聖女に息子の『天性スキル』を略奪され、「用済み」として国外追放されてしまう。 行き倒れも覚悟した時、アンジェリカを救ったのは母国と敵対関係の魔人族オーガの夫婦。 彼らの薦めでオルゴール職人で人間族のルイと仮初の夫婦として一緒に暮らすことになる。 不安なことがいっぱいあるけど、母として必ず我が子を、今度こそ立派に育てて見せます! ノベルアップ+とアルファポリス、小説家になろう、カクヨムに掲載しています。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結済】逆恨みで婚約破棄をされて虐待されていたおちこぼれ聖女、隣国のおちぶれた侯爵家の当主様に助けられたので、恩返しをするために奮闘する

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
偉大な聖女であった母を持つ、落ちこぼれ聖女のエレナは、婚約者である侯爵家の当主、アーロイに人殺しの死神として扱われ、牢に閉じ込められて酷い仕打ちを受ける日々を送っていた。 そんなエレナは、今は亡き母の遺言に従って、必死に耐える日々を送っていたが、同じ聖女の力を持ち、母から教えを受けていたジェシーによってアーロイを奪われ、婚約破棄を突き付けられる。 ここにいても、ずっと虐げられたまま人生に幕を下ろしてしまう――そんなのは嫌だと思ったエレナは、二人の結婚式の日に屋敷から人がいなくなった隙を突いて、脱走を決行する。 なんとか脱走はできたものの、著しく落ちた体力のせいで川で溺れてしまい、もう駄目だと諦めてしまう。 しかし、偶然通りかかった隣国の侯爵家の当主、ウィルフレッドによって、エレナは一命を取り留めた。 ウィルフレッドは過去の事故で右の手足と右目が不自由になっていた。そんな彼に恩返しをするために、エレナは聖女の力である回復魔法を使うが……彼の怪我は深刻で、治すことは出来なかった。 当主として家や家族、使用人達を守るために毎日奮闘していることを知ったエレナは、ウィルフレッドを治して幸せになってもらうために、彼の専属の聖女になることを決意する―― これは一人の落ちこぼれ聖女が、体が不自由な男性を助けるために奮闘しながら、互いに惹かれ合って幸せになっていく物語。 ※全四十五話予定。最後まで執筆済みです。この物語はフィクションです。

処理中です...