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四度目の人生
新たな聖女?
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「レティーナさん、聞きました?新しい聖女が見つかったそうですよ」
そう言って来たのは、フィリアさんだ。
あの日以来、何か思うところがあったのか、フィリアさんは私に対しての態度が柔和になった。
前々回は虐げられていたとはいえ、貴族としてずっと生きていた私としては、フィリアさんの考え方が貴族の中では普通だと分かっているので、その態度を改めたことは感嘆に値する。
私は別に『貴族は平民より偉い』なんて思ってない。
前世が普通の一般人だった礼奈が、いきなり異世界で身分のある人間になったからといって、身分差別するわけがない。
だけど、そういう考え方が一般的だということくらいは分かっている。
だからこそ、平民であるレティーナが王太子の婚約者という、いわゆる不相応な立場にいるのだからイラついて当たり前だと思っている。
それなのに、仲良しというわけではないが、たまに話しかけてくる程度に友好的になったことには、驚きが隠せない。
「新しい聖女、ですか?それは、重畳ですね」
そうでなくても、聖女の存在は貴重だ。
ひとりひとりの能力は限られてるのだから、数の暴力・・・もとい、ひとりでも多い方がひとりひとりの負担も減る。
だから、新たな聖女が見つかったというのなら、それはいいことではないのか。
そう思うのに、どこかフィリアの表情が不満そうに見えるのだ。
「何か、ありましたか?フィリアさん」
「・・・その聖女を、王太子殿下自らが迎えに行き、そのまま王宮へ連れ帰ったそうです」
「それは・・・よく司教様がお許しになられましたね」
聖女を保護するのは、教会の管轄だ。
聖女である彼女たちを手に入れようとする者たちは、目に見えるより多くいるのだ。
だからこそ、教会が聖女たちを保護し、守っているのだ。
もちろん、聖女が二十歳になるのを待たずに、彼女たちに手を出した者には神罰が下ると言われている。
実際、過去にそのような事例があったらしく、務めに手を抜いたら聖女の力を失うという事と同じように、信じる人間には信じられている、ということだ。
そして、それらを信じない人間の筆頭である王太子が、聖女を連れ去ったということを、司教様が見逃しているもあうことに、私は驚いた。
「司祭様は、司教様が気に留める必要はないとおっしゃっていると。でも、聖女は務めを果たさないとその力を失うのに、何故その子だけは許されるのでしょうか」
「司教様のお考えは、私には分かりかねますが・・・何か・・・いえ、気にするのはやめましょう。私たちは私たちのするべきことをやるだけです」
何か嫌な予感がしたが、私はそれを振り払うように首を振った。
そして、そういう嫌な予感というものは、存外当たるものである。
そう言って来たのは、フィリアさんだ。
あの日以来、何か思うところがあったのか、フィリアさんは私に対しての態度が柔和になった。
前々回は虐げられていたとはいえ、貴族としてずっと生きていた私としては、フィリアさんの考え方が貴族の中では普通だと分かっているので、その態度を改めたことは感嘆に値する。
私は別に『貴族は平民より偉い』なんて思ってない。
前世が普通の一般人だった礼奈が、いきなり異世界で身分のある人間になったからといって、身分差別するわけがない。
だけど、そういう考え方が一般的だということくらいは分かっている。
だからこそ、平民であるレティーナが王太子の婚約者という、いわゆる不相応な立場にいるのだからイラついて当たり前だと思っている。
それなのに、仲良しというわけではないが、たまに話しかけてくる程度に友好的になったことには、驚きが隠せない。
「新しい聖女、ですか?それは、重畳ですね」
そうでなくても、聖女の存在は貴重だ。
ひとりひとりの能力は限られてるのだから、数の暴力・・・もとい、ひとりでも多い方がひとりひとりの負担も減る。
だから、新たな聖女が見つかったというのなら、それはいいことではないのか。
そう思うのに、どこかフィリアの表情が不満そうに見えるのだ。
「何か、ありましたか?フィリアさん」
「・・・その聖女を、王太子殿下自らが迎えに行き、そのまま王宮へ連れ帰ったそうです」
「それは・・・よく司教様がお許しになられましたね」
聖女を保護するのは、教会の管轄だ。
聖女である彼女たちを手に入れようとする者たちは、目に見えるより多くいるのだ。
だからこそ、教会が聖女たちを保護し、守っているのだ。
もちろん、聖女が二十歳になるのを待たずに、彼女たちに手を出した者には神罰が下ると言われている。
実際、過去にそのような事例があったらしく、務めに手を抜いたら聖女の力を失うという事と同じように、信じる人間には信じられている、ということだ。
そして、それらを信じない人間の筆頭である王太子が、聖女を連れ去ったということを、司教様が見逃しているもあうことに、私は驚いた。
「司祭様は、司教様が気に留める必要はないとおっしゃっていると。でも、聖女は務めを果たさないとその力を失うのに、何故その子だけは許されるのでしょうか」
「司教様のお考えは、私には分かりかねますが・・・何か・・・いえ、気にするのはやめましょう。私たちは私たちのするべきことをやるだけです」
何か嫌な予感がしたが、私はそれを振り払うように首を振った。
そして、そういう嫌な予感というものは、存外当たるものである。
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