41 / 144
四度目の人生
興味はありません
しおりを挟む
「貴様ッ!俺の可愛いフィリアをいじめたなっ!」
礼拝堂の掃除をしていると、いきなりやって来た男の人が、怒鳴り散らしてきた。
その男の腕には、金髪碧眼の女性がピタリと体を寄せている。
彼女は、フィリア・ランスロット。
ランスロット侯爵家のご令嬢で、一応聖女様だ。
彼女の聖女の力は、軽度の切り傷くらいなら治せる程度。
ただそれでも、この世界では貴重な聖女のひとりだ。
ところで、この男は誰かしら?
俺の、とか言ってたからフィリアさんの恋人とか?
でもフィリアさんて、王太子のことを好きなんじゃないのかしら?日記にはそう書かれていたけど。
私はチラリと視線を向けたが、まぁいいか、と掃除を再開した。
「貴様っ!この国の王太子である俺を無視するとは、どういうことだ!」
あら?王太子って言った?
じゃあ、この人が私の婚約者ってこと?
あー。
確かに日記に書いてたとおりに、酷いわね。
「いくら平民だとはいえ、貴様呼ばわりされる覚えはありません」
「口ごたえするなっ!貴様、俺のフィリアに『フィリアさん、掃除をして下さい』などと命令しただろう!大体、平民の貴様が侯爵令嬢に対して敬称を付けないとはどういうことだ!」
私は窓を拭いていた手を止めると、王太子とやらに向き返った。
「敬称を付けないことに不満があるのなら、司教様におっしゃって下さい。司教様がお決めになったことです。フィリアさん以外の聖女の方々のことも全員、さんとお呼びしています。それから掃除ですが、これも聖女である全員が礼拝堂と聖堂の掃除をすることが決められています。事実かどうかは知りませんが、怠った者は聖なる力を失うと言われているそうですよ」
「べ、別に私は怠ったわけではなくて・・・」
「私に言い訳して下さらなくても、司祭様たちに報告したりしませんよ。報告などしなくても、司祭様たちも・・・それから神様も全てをご存知ですから」
少なくとも、私を転生させた神様とやらは、私を見ている。
それに誰も告げ口しなくても、司祭様も司教様も、聖女たちの言動に関してご存知なのだと日記にあった。
監視カメラ・・・はこの世界にはないけれど、聖女の力があるのなら、何かそれに似た魔法とかがあるのかもしれない。
もしくは、王家の影のような、特殊な部隊とか。
別にレティーナは気にしていなかったみたいだし、私も気にしない。
恥ずべき言動をしなければ良い話だから。
目の前のフィリアさんは、顔を青くして、王太子の腕から手を離した。
「ま、窓を拭けば良い?」
「・・・そうですね。では、私はこちらを拭きますので、そちら側をお願いします」
「お、おい?フィリア」
「・・・」
あら?王太子の呼びかけも無視してるわ。
何か心当たりがあるのかしら。
礼拝堂の掃除をしていると、いきなりやって来た男の人が、怒鳴り散らしてきた。
その男の腕には、金髪碧眼の女性がピタリと体を寄せている。
彼女は、フィリア・ランスロット。
ランスロット侯爵家のご令嬢で、一応聖女様だ。
彼女の聖女の力は、軽度の切り傷くらいなら治せる程度。
ただそれでも、この世界では貴重な聖女のひとりだ。
ところで、この男は誰かしら?
俺の、とか言ってたからフィリアさんの恋人とか?
でもフィリアさんて、王太子のことを好きなんじゃないのかしら?日記にはそう書かれていたけど。
私はチラリと視線を向けたが、まぁいいか、と掃除を再開した。
「貴様っ!この国の王太子である俺を無視するとは、どういうことだ!」
あら?王太子って言った?
じゃあ、この人が私の婚約者ってこと?
あー。
確かに日記に書いてたとおりに、酷いわね。
「いくら平民だとはいえ、貴様呼ばわりされる覚えはありません」
「口ごたえするなっ!貴様、俺のフィリアに『フィリアさん、掃除をして下さい』などと命令しただろう!大体、平民の貴様が侯爵令嬢に対して敬称を付けないとはどういうことだ!」
私は窓を拭いていた手を止めると、王太子とやらに向き返った。
「敬称を付けないことに不満があるのなら、司教様におっしゃって下さい。司教様がお決めになったことです。フィリアさん以外の聖女の方々のことも全員、さんとお呼びしています。それから掃除ですが、これも聖女である全員が礼拝堂と聖堂の掃除をすることが決められています。事実かどうかは知りませんが、怠った者は聖なる力を失うと言われているそうですよ」
「べ、別に私は怠ったわけではなくて・・・」
「私に言い訳して下さらなくても、司祭様たちに報告したりしませんよ。報告などしなくても、司祭様たちも・・・それから神様も全てをご存知ですから」
少なくとも、私を転生させた神様とやらは、私を見ている。
それに誰も告げ口しなくても、司祭様も司教様も、聖女たちの言動に関してご存知なのだと日記にあった。
監視カメラ・・・はこの世界にはないけれど、聖女の力があるのなら、何かそれに似た魔法とかがあるのかもしれない。
もしくは、王家の影のような、特殊な部隊とか。
別にレティーナは気にしていなかったみたいだし、私も気にしない。
恥ずべき言動をしなければ良い話だから。
目の前のフィリアさんは、顔を青くして、王太子の腕から手を離した。
「ま、窓を拭けば良い?」
「・・・そうですね。では、私はこちらを拭きますので、そちら側をお願いします」
「お、おい?フィリア」
「・・・」
あら?王太子の呼びかけも無視してるわ。
何か心当たりがあるのかしら。
15
お気に入りに追加
480
あなたにおすすめの小説
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
“用済み”捨てられ子持ち令嬢は、隣国でオルゴールカフェを始めました
古森きり
恋愛
産後の肥立が悪いのに、ワンオペ育児で過労死したら異世界に転生していた!
トイニェスティン侯爵令嬢として生まれたアンジェリカは、十五歳で『神の子』と呼ばれる『天性スキル』を持つ特別な赤子を処女受胎する。
しかし、召喚されてきた勇者や聖女に息子の『天性スキル』を略奪され、「用済み」として国外追放されてしまう。
行き倒れも覚悟した時、アンジェリカを救ったのは母国と敵対関係の魔人族オーガの夫婦。
彼らの薦めでオルゴール職人で人間族のルイと仮初の夫婦として一緒に暮らすことになる。
不安なことがいっぱいあるけど、母として必ず我が子を、今度こそ立派に育てて見せます!
ノベルアップ+とアルファポリス、小説家になろう、カクヨムに掲載しています。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
【完結】転生少女の立ち位置は 〜婚約破棄前から始まる、毒舌天使少女の物語〜
白井夢子
恋愛
「真実の愛ゆえの婚約破棄って、所詮浮気クソ野郎ってことじゃない?」
巷で流行ってる真実の愛の物語を、普段から軽くあしらっていた。
そんな私に婚約者が静かに告げる。
「心から愛する女性がいる。真実の愛を知った今、彼女以外との未来など考えられない。
君との婚約破棄をどうか受け入れてほしい」
ーー本当は浮気をしている事は知っていた。
「集めた証拠を突きつけて、みんなの前で浮気を断罪した上で、高らかに婚約破棄を告げるつもりだったのに…断罪の舞台に立つ前に自白して、先に婚約破棄を告げるなんて!浮気野郎の風上にも置けない軟弱下衆男だわ…」
そう呟く私を残念そうに見つめる義弟。
ーー婚約破棄のある転生人生が、必ずしも乙女ゲームの世界とは限らない。
この世界は乙女ゲームなのか否か。
転生少女はどんな役割を持って生まれたのか。
これは転生人生に意味を見出そうとする令嬢と、それを見守る苦労人の義弟の物語である。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる