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三度目の人生

やり直し

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「・・・」

 真っ白な空間。ため息がもれた。

『どうして毎回毎回、殺されてくるんだ?』

「それ、私の意見です。どうして前回も今回も、虐げられている人間に転生させるんですか?もしかして、嫌がらせですか?」

 神様に対して、不敬だとか関係ない。
だって、転生しても私は少しも幸せになれてない。

 前回は、夫に虐げられていた。
愛してもらえず、愛人を作られて侯爵夫人として仕事をするためだけの人形扱いだった。

 今回は家族に虐げられている。
大切な母親を亡くし、本当は支えて愛して欲しい父親から、不貞の子だと疎まれ、しかも愛人とその子供を屋敷に引き入れられた。

 それに、前回も今回も、私は大切な人を亡くしている。

 前回はラナを。今回はお母様を。

 文句くらい言っても良いわよね。
なんで死んだんだなんて、コッチが言いたいわ。

「それで、あの後どうなったのですか?」

『ああ。レティーナがハサミで刺されて、亡くなったのは出血多量だからだ。あの後、サロメは部屋に鍵をして、平然と出て行った。侍女が食事を持ってきて初めてレティーナの死が判明した』

「それで、彼らはどうなったのですか?」

『結論から言うと、サロメは絞首刑だ。あの父親と母親はレティーナの死を隠蔽しようとしたが、第二王子が刺繍をしていた人間を探しに伯爵家を訪れた。そして、レティーナの死を知った』

 そう。
やっぱり、あの父親は私を娘と認めなかったのね。

 サロメだけが、あの人の娘だったのね。

『レティーナの父親とあの後妻は、爵位を剥奪され、平民になる予定だった』

「予定?」

『皇国から抗議が入った。レティーナが虐げられていたことが公になり、皇国に引き渡せと』

 会ったことのないお祖父様、お祖母様。
サロメに殺されなかったら、会えたかしら。

「どうして虐げられていたことが?」

『お前がハンカチを渡した侍女がいるだろう?その侍女が第二王子に訴え出た』

 私は、王妃殿下のドレスの刺繍の依頼前に、いつも私に食事を運んでくる侍女に、一枚のハンカチを渡した。

 決して彼女は良い人ではなかったけど、可能な限り私の望みを叶えてくれた。

 本も新聞も、食事も。

 だから、お礼に刺繍したハンカチを渡したのだ。

 そう。彼女が。

『礼奈。いや、レティーナ。お前が何故二回とも殺されてしまったのか、どうして予定通りの運命にならないのかは調査する。だが、その間ここでいるわけにはいかない。ここに長く留まると、魂が消滅してしまう。次の転生でこそ、幸せになれるはずだ』

 私は神様とやらの言葉に、何も答えずに目を瞑った。

 私は確かに、疎まれ殺された。
だけど、小石ほどの小さな幸せはそこにあった。それだけが救いだと思った。
 

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