上 下
4 / 144
一度目の人生

白い結婚

しおりを挟む
 バートンの話によると、私の結婚はサウザンド侯爵家からの申し入れだったらしい。

 前侯爵様、つまり旦那様のお父様が、決めたそうだ。
 当時、ご病気を患っていた前侯爵様は、残される旦那様のことを心配されての結婚だった。

 前侯爵夫人は、旦那様が幼い頃に亡くなられていて、だから残される旦那様のことを共に支えてくれる人間を欲した。

 まぁ、何故レティーナだったのかはともかく、結婚する前から旦那様には思いを寄せる方がいたそうだ。

 政略結婚のことは良く分かんないけど、それならその人との結婚を、父親に願えば良かったんではないだろうか。

 と思ったら、その旦那様の好きな方は男爵家のご令嬢で、侯爵夫人にはなり得ない人だそうだ。

 だから、私との結婚は避けて通れない。
だけど、愛する人は彼女だけ。

 というわけで結婚した直後から、名ばかりの侯爵夫人として、初夜も行われず、あげくに侯爵夫人の部屋でなく、その部屋から遠く離れたこの使用人部屋に押し込まれた、そうだ。

 で、レティーナがどういう反応をしたのかと問うと、バートンたちはものすごく微妙な表情をした。

「奥様は・・・それは淡々と『かしこまりました』とおっしゃって、この部屋へと向かわれました。旦那様は一応は、その客間を奥様に使われるようにおっしゃられたのですが、奥様は『こちらで結構です』とおっしゃって」

 はぁ。
じゃあ、この使用人部屋はレティーナが望んだということね?

 初夜もしていないということだから、自分は使用人だという嫌味だったのかな?

 私にはレティーナがどういうつもりでここにいるのかも、それから離縁を考えていたのかも分からない。

 ついでに言えば、私も見たこともない旦那様に愛情もないし、お飾りの妻に夫人としての仕事だけはやらしているという屑に興味もない。

 他の使用人は分からないけど、少なくとも目の前の四人とはいい関係のようだ。

 なら、別にいいか、と思う。

 正直、夫人というのはちょっと納得いかないけど、白い結婚というのならそれは我慢するわ。

 私の望みは、少なくとも私を大切にしてくれる人に辛い思いをさせず、長生きすることだもの。

 別に豪華な暮らしも必要ないし、見る限りは、痩せ細ってもないから、食事とかの問題はなさそうに見えるわ。

 結婚しているのなら、家族仲良くしたかったとは思うけど、白い結婚って確かラノベ情報だと三年で離縁できるのよね。

 可能かどうか、後で調べておかなきゃ。
別に使用人扱いでもかまわないけど、それならちゃんと契約書を交わして、お給料もらわなきゃ。
 お金がないと、離縁した後が困るものね。

 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖獣がなつくのは私だけですよ?

新野乃花(大舟)
恋愛
3姉妹の3女であるエリッサは、生まれた時から不吉な存在だというレッテルを張られ、家族はもちろん周囲の人々からも冷たい扱いを受けていた。そんなある日の事、エリッサが消えることが自分たちの幸せにつながると信じてやまない彼女の家族は、エリッサに強引に家出を強いる形で、自分たちの手を汚すことなく彼女を追い出すことに成功する。…行く当てのないエリッサは死さえ覚悟し、誰も立ち入らない荒れ果てた大地に足を踏み入れる。死神に出会うことを覚悟していたエリッサだったものの、そんな彼女の前に現れたのは、絶大な力をその身に宿す聖獣だった…!

必要ないと言われたので、元の日常に戻ります

黒木 楓
恋愛
 私エレナは、3年間城で新たな聖女として暮らすも、突如「聖女は必要ない」と言われてしまう。  前の聖女の人は必死にルドロス国に加護を与えていたようで、私は魔力があるから問題なく加護を与えていた。  その違いから、「もう加護がなくても大丈夫だ」と思われたようで、私を追い出したいらしい。  森の中にある家で暮らしていた私は元の日常に戻り、国の異変を確認しながら過ごすことにする。  数日後――私の忠告通り、加護を失ったルドロス国は凶暴なモンスターによる被害を受け始める。  そして「助けてくれ」と城に居た人が何度も頼みに来るけど、私は動く気がなかった。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】 王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。 しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。 「君は俺と結婚したんだ」 「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」 目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。 どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。

ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...