誰が彼女を殺したか

みおな

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あの花が咲いたら〜ラティエラのその後③〜

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「ラティエラ」

 ウィスタリア公爵夫人である母親の声に、ラティエラは顔を上げた。

 どうやら何度も声をかけられていたようで、母親の顔は少し曇っている。

「ごめんなさい、お母様。少し考え事をしていたの」

「ラティエラ・・・」

「何でもありませんわ。もう時間でしょうか?」

 微笑みを浮かべるラティエラを、公爵夫人はそっと抱きしめる。

「時間はまだ大丈夫よ。声をかけに来るわね」

「ありがとうございます、お母様」

 王太子妃になるラティエラ。
いくら公爵夫人といえど、今まで通りとはいかない。

 最後にゆっくりと話をしたいと思ったが、ラティエラの気持ちを思うと一人にさせてあげるべきだと判断した。

 娘の胸中を思うと、夫人の胸は痛んだ。

 母親が控え室から出ていくと、ラティエラは小さく息を吐いた。

「お母様に申し訳ないことをしたわ」

 結婚する娘と、最後の時間を過ごすために来てくれたのだろう。

 申し訳ないと思いながらも、ラティエラの意識は窓の外に向かう。

「紫色の薔薇が咲いたら・・・結婚しようって言ってくれたのに」

 ラティエラの瞳と髪色と同じ色だ、とヴィクターは紫色の薔薇を薔薇園に植えてくれた。

「あの薔薇が咲いたら、僕のお嫁さんになってね」

 十歳のヴィクターはそう言って、母親の王妃が植えたピンク色の薔薇を贈ってくれたのだ。

 ずっと・・・
同じ時間を過ごしてきた。

 学園を卒業したら、あの紫色の薔薇のブーケを持って、ヴィクターのお嫁さんになるはずだった。

 その日を、ずっと・・・
待っていたのに。

 コンコン!

 扉がノックされ、新郎であるギルバートが顔を覗かせた。

「ラティエラ。そろそろ行こうか」

「殿下」

「夫婦になるんだから、殿下ではなく名前で呼んでくれないかな」

「ふふっ。わかりましたわ、ギルバート様」

 その手を取り、ラティエラはギルバートの隣に立つ。

 もう、窓の外に視線は向けない。

 ラティエラは、ギルバートの妻になるのだ。

 ヴィクターを想っていたような気持ちではないけれど、ギルバートのことは尊敬しているし、妃として支えていきたいと思っている。

 ブーケを手に取り、ラティエラは微笑みを浮かべた。

 あの薔薇園には、薔薇は植えない。

「ラティエラ、大好きだよ」

 過去のヴィクターの声にラティエラは一度だけ目を伏せ、しっかりと顔を上げた。

 さよなら、ヴィクター様。
大好きでしたわ。


*****end*****


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感想 80

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みんなの感想(80件)

網茶
2023.10.27 網茶

陛下達から言論の自由を保障された上で
「あなたのことなんて好きでもなんでもないし、むしろ付き纏われて迷惑だ。気持ち悪いから二度と近づかないでください」
とバッサリふっていたら、ヴィクターは正気に戻っていたのだろうか。

2023.10.27 みおな

どうでしょうか。なんていうか、もう言葉が通じないというか、ストーカーというか、気持ち悪い人になってたので、無理なんじゃないですかね。

解除
網茶
2023.10.27 網茶

陛下達から言論の自由を保障された上で、
「あなたのことなんて好きでもなんでもないし、むしろ付き纏われて迷惑だ。気持ち悪いから二度と近づかないで」
とバッサリとフっていたら王子は正気に戻っていたのだろうか?

解除
まじもんじゃ

狂う前後の乖離が酷すぎて、誰もわからないだけでリリーに無自覚な魅了の力とか、世界レベルの強制力があるんじゃないかと思ってしまいますね。

誰もが王子達の被害者と思いながら実際は王子達が最大の被害者で、リリーが本当に死んでいれば全て元通りになったとか後々判明したらそれはそれで昏い感じで面白そう

2023.10.26 みおな

最後までお付き合いありがとうございます😊
そうですね。無意識下ならあり得たかもしれませんね。
でも、無意識で死んでしまう結末はちょっとリリーがかわいそうかな。

解除

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