19 / 39
そして終わりを迎える?
しおりを挟む
その日の朝、朝食の場でヴィクターは父親である国王陛下から、今夜パーティーがあると伝えられた。
そして、絶対に参加しなければならないから、出かけないように、と。
リリーを失った今、出かけるところなどなかった。
なんのパーティーかと尋ねたが、父親からは「大切なパーティーだ。全貴族当主が参加する」としか教えてもらえなかった。
本来、まだ学園生で成人していないヴィクターは夜会への参加は出来ない。
ただ王太子という立場上、挨拶する必要のあるものもあったため、そのひとつかと納得した。
朝食を終えたヴィクターは、妙に喉の渇きを覚えた。
いつも通りの朝食のメニューだったし、味付けもいつも通りだったと思うのだが、喉が渇いて仕方ない。
「悪いが、水を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
侍女に水を持ってきてもらい、喉を潤す。
昼食を終えると、その傾向はさらにひどくなった。
「くそっ。なんでこんなに喉が渇くんだ」
ピッチャーに入れて果実水を持ってきてもらうが、すぐに飲み干してしまう。
喉は渇くが、体調が悪いというわけでもなく、飲めば当然トイレに行きたくなる。
夜会で挨拶をするのに、何度も中座するわけにはいかない。
イライラしながら我慢をするのだが、喉が渇いて口内が張り付くような感覚に再び水を頼む。
夜会の衣装に着替える頃には、侍女が持ってきた水を毒見もせずに口にするようになっていた。
食べ物の場合は、毒見役が口にしてから一定時間をおいて王族に食事は運ばれる。
だが飲み物の場合は、毒見をしてもカップに塗られている場合もあるので、毒見の後必ず飲み物を銀のスプーンで混ぜるという習わしがあった。
毒が入っていれば、スプーンが変色するためである。
だが、朝から何度も水を所望していたヴィクターは、夕方近くになるとスプーンでひと回しすることすら億劫になっていた。
何度目かのスプーンを入れていない水を飲んだヴィクターは、体から力が抜け、そのまま床に倒れ込んだ。
持っていたグラスが床に転がり、視線の先に侍女の足が見える。
何が起きたのか理解できないまま、ヴィクターはそのまま意識を手放した。
その後、静かに部屋の扉が開き、誰かが部屋に入って来たことも、そのまま移動式の椅子に座らされたことも、ヴィクターには分からなかった。
ただ夢の中で、母親が泣いているような声で謝っているのが聞こえた気がした。
ザワザワ。
人の気配に、ヴィクターの意識はゆっくりと浮上する。
どうやら眠っていたみたいだと瞼を上げたヴィクターの目に入ったのは、青色のドレスに身を包んだラティエラだった。
そして、絶対に参加しなければならないから、出かけないように、と。
リリーを失った今、出かけるところなどなかった。
なんのパーティーかと尋ねたが、父親からは「大切なパーティーだ。全貴族当主が参加する」としか教えてもらえなかった。
本来、まだ学園生で成人していないヴィクターは夜会への参加は出来ない。
ただ王太子という立場上、挨拶する必要のあるものもあったため、そのひとつかと納得した。
朝食を終えたヴィクターは、妙に喉の渇きを覚えた。
いつも通りの朝食のメニューだったし、味付けもいつも通りだったと思うのだが、喉が渇いて仕方ない。
「悪いが、水を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
侍女に水を持ってきてもらい、喉を潤す。
昼食を終えると、その傾向はさらにひどくなった。
「くそっ。なんでこんなに喉が渇くんだ」
ピッチャーに入れて果実水を持ってきてもらうが、すぐに飲み干してしまう。
喉は渇くが、体調が悪いというわけでもなく、飲めば当然トイレに行きたくなる。
夜会で挨拶をするのに、何度も中座するわけにはいかない。
イライラしながら我慢をするのだが、喉が渇いて口内が張り付くような感覚に再び水を頼む。
夜会の衣装に着替える頃には、侍女が持ってきた水を毒見もせずに口にするようになっていた。
食べ物の場合は、毒見役が口にしてから一定時間をおいて王族に食事は運ばれる。
だが飲み物の場合は、毒見をしてもカップに塗られている場合もあるので、毒見の後必ず飲み物を銀のスプーンで混ぜるという習わしがあった。
毒が入っていれば、スプーンが変色するためである。
だが、朝から何度も水を所望していたヴィクターは、夕方近くになるとスプーンでひと回しすることすら億劫になっていた。
何度目かのスプーンを入れていない水を飲んだヴィクターは、体から力が抜け、そのまま床に倒れ込んだ。
持っていたグラスが床に転がり、視線の先に侍女の足が見える。
何が起きたのか理解できないまま、ヴィクターはそのまま意識を手放した。
その後、静かに部屋の扉が開き、誰かが部屋に入って来たことも、そのまま移動式の椅子に座らされたことも、ヴィクターには分からなかった。
ただ夢の中で、母親が泣いているような声で謝っているのが聞こえた気がした。
ザワザワ。
人の気配に、ヴィクターの意識はゆっくりと浮上する。
どうやら眠っていたみたいだと瞼を上げたヴィクターの目に入ったのは、青色のドレスに身を包んだラティエラだった。
79
お気に入りに追加
1,204
あなたにおすすめの小説
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる