誰が彼女を殺したか

みおな

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失ったものとは?その1

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 ヴィクターは護衛を何とか説得して、マゼンダ男爵家へ馬車を走らせた。

 最初は首を縦に振らなかった護衛も、片方がどこかへ向かい戻って来た時には馬車を準備していた。

 リリーが死んだ。
葬儀にも来ないで欲しい。

 そんなことを言われて、死んだなんて信じられなかった。

 そもそも、何故死んだのかもヴィクターは知らないのだ。

「殿下。こちらでよろしいですか?」

 馬車が停まり、扉が開かれる。

 馬車から降りたヴィクターは、その屋敷を見上げて・・・

 呆然とした。

 リリーの家は男爵家だが、一応は貴族の屋敷だ。

 一人だが門番もいたし、小さな屋敷だから数人の使用人が掃除をしたりしている姿も見えていた。

 それが。

 目の前の門は閉ざされ、開かないように鎖で固められている。

 屋敷からも、人の気配というものが感じられない。

「な・・・どういう、こと、だ?」

 ヴィクターが鎖で固められた門から中を凝視しているうちに、どうやら護衛の片方が近くの住人を呼びに行っていたらしい。

 もちろん貴族や屋敷なので、すぐ隣に家があるわけではないが、この辺りは下位の貴族が多く屋敷を構えているので、歩いてやって来れる距離ではあった。

「殿下」

「お初にお目もじいたします。サマーの妻でございます」

「あ、ああ。サマー男爵の奥方か」

 ヴィクターは、マゼンダ男爵家の屋敷に視線を向ける。

「奥方。その・・・マゼンダ男爵家に人がいないようだが・・・」

「はい。先日、ご息女を亡くされて・・・ここにいるのは辛いからと引越されました」

「確か、マゼンダ男爵家の領地は・・・」

「いえ。領地ではなく他の土地に引っ越されると聞きました。領地を継いでくれる娘ももういないから、と。領地に関しては王家にお返ししたと伺いましたが」

「そ、そうか」

 リリーが死んだと聞いてから、王太子としての公務すら疎かになっていたヴィクターは、サマー男爵夫人の言葉に曖昧に頷いた。

 王太子のヴィクターには何の権限もないが、王位を継いだ時のために急ぐものでなければ書類は王太子の元へ一旦届く。

 それに王太子が目を通して、国王陛下へと渡す仕組みになっていた。

 おかしいと思うことや、わからないことは、この時点で国王や宰相に尋ね、実際に王位に就いたときに正しい判断が出来るようになるためである。

 だが、ここ最近のヴィクターは、届いた書類をほぼそのまま国王へと差し出していたため、マゼンダ男爵家の領地返還に気付いていなかった。

「その・・・リリー、いやマゼンダ男爵令嬢は本当に亡くなったのか?」
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