誰が彼女を殺したか

みおな

文字の大きさ
上 下
10 / 39

正しい対応はどれだ?

しおりを挟む
 ヴィクターに、リリー・マゼンダ男爵令嬢とのことを注意したラティエラ。

 男爵令嬢が王太子妃になることは難しい。

 彼女がいくら優秀だとしても、生まれてから今まで培って来た人脈がリリーにはない。

 もしも彼女が王太子妃になったとしたら、相当な苦難が待ち受けているだろう。

 自国の貴族たちは、ラティエラが受け入れたなら表面上はリリーを受け入れるだろう。

 ヴィクターも、愛する者のためなら手を貸すだろう。

 だが、誰が何を好み、誰と交友があり、どんな『秘密』があるか。

 それは、ヴィクターでは分かり得ないことなのだ。

 令嬢には令嬢の、独自のネットワークがあり、王太子であるヴィクターには見せていない部分があるのだ。

 それは長い時間をかけて、自分で交友し、腹の探り合いをし、信頼を得て、そして手に入れることができるものなのだ。

 だから、愛妾という選択をヴィクターに提案した。

 何も、愛する彼女を苦労させる必要はない。

 ラティエラと婚姻して早々に世継ぎを生み、そして三年たてば愛妾として彼女を迎え入れることが出来る。

 世継ぎさえ授かっていれば、公務以外は離宮でリリーと過ごしてくれて構わない。

 子を授からないように『処置』はされるが、それさえ我慢してくれれば、愛する二人で過ごすことは可能だ。

 ラティエラとしては、最大の譲歩をしたつもりだった。

 ラティエラだって、出来ることならヴィクターと思い思われる仲でいたい。

 子供に両親が不仲だとか、父親に他に愛する相手がいるなど、見せたくはない。

 だが、ヴィクターは恋に落ちてしまった。

 ラティエラのことなど、視界の隅にすら入っていない。

 ヴィクターの目に映るのは、リリーのみ。

 ならば仕方ないではないか。

 公爵令嬢として。王太子ヴィクターの婚約者として。

 凛とした態度で、最適な案を掲示するしかない。

 だが、ヴィクターはそのラティエラの心遣いを、嫉妬だと切り捨てた。

 自分が幼い頃から見て、共に過ごして来た婚約者は、こんなに愚かだっただろうか。

 ラティエラは落胆し、公爵令嬢として決断した。

「お父様、お母様。王太子殿下が男爵令嬢に恋をして、彼女を妻に迎えたいそうですわ」

「「は?」」

 ウィスタリア公爵と公爵夫人は、娘の言ったことが理解できず、思わず聞き返した。

 じっくり話を聞いてみると、怒りを通り越して呆れてしまう。

 娘は、自分の感情を押し殺して、公爵令嬢として正しい判断をしたというのに、王族であり王太子であるヴィクターがそれを理解できないとは。

「分かった。婚約は白紙撤回だ」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

処理中です...