誰が彼女を殺したか

みおな

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愚かなのは誰だ?

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 ヴィクターが婚約者であるラティエラ・ウィスタリア公爵令嬢を蔑ろにし、男爵令嬢を追いかけ回していることは、すぐに学園中の話題となった。

 しかも、婚姻後三年たてば愛妾にしても良いとまで譲歩されておきながら、未だ態度を改めない王太子。

 学園に通っているのは、ジョンブリアン王国に住まう貴族の子息令嬢ばかりである。

 そして彼らは、貴族としての在り方をしっかりと学んでいる。

 中には物語のような、身分の低い者が高位貴族や王族と恋をする、という夢物語に憧れる令嬢もいる。

 だが、その彼女たちですら、高位貴族の夫人や王太子妃になれるとは思っていない。

 婚約者のご令嬢の許可の元、短い間の恋人ごっこが出来れば、もしくは愛妾として迎え入れてもらえれば、と思っている、

 そしてそんな考えを持つ令嬢は、ひと握りだ。

 下位貴族で政略結婚も難しく、嫁の貰い手のない貴族に嫁がなければならないような者が、夢物語として考えるだけだ。

 実際は、ラティエラのように愛妾を認める心の広い令嬢はいない。

 政略結婚といえど、結婚したからには恋情でなくても家族としての愛情はお互い持ちたいと思っているし、生まれてくる子供のためにも良い関係でいたいと願っている。

 なのにラティエラは、王太子がそれほどにリリーを好きなのなら、と譲歩した。

 この時点で、ラティエラの株は爆上がりである。

 そして暴言を吐いた時点で、ヴィクターの株は大暴落した。

 まだ婚約者がいない令嬢たちは、両親に婚約者を早く決めてくれるように訴えた。

 ラティエラが婚約者の座から下りたからといって、リリーが婚約者になれるわけがない。

 いや、ヴィクターが王族でなくなれば婚約者になれるかもしれないが、リリーの様子を見る限り、リリーがそれを望んでいるようには見えない。

 このままだと、婚約者のいない令嬢に、ヴィクターの婚約者にと打診が来るかもしれない。

 冗談ではない。
あんな非の打ちどころがないラティエラに暴言を吐く馬鹿の婚約者になど、なりたいわけがない。

 数週間のうちに、高位貴族で婚約者がいない令嬢は、まだ二歳や五歳という幼子だけとなった。

 そんな事態を引き起こした当人は、全く気がついていない。

 リリーがヴィクターを避けるために、教師に頼み込んで授業を5分早く抜けさせてもらっていることも。

 食堂で会わないように、お弁当持参で教師の個室を借りていることも。

 登下校で会わないように、他のご令嬢の馬車に乗せてもらい、家に帰るのはヴィクターが王宮に戻ったのを確認してからにしていることも。

 何ひとつ気がついていなかった。
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