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ラティエラ・ウィスタリアとは?
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ラティエラ・ウィスタリア公爵令嬢。
ウィスタリア公爵家の長女であり、三歳年上の兄がいる。
紫色の長い髪は緩やかなウェーブをしていて、同色の瞳は長いまつ毛に覆われている。
背はさほど高くないが、背筋が常にピンと伸びていて、立ち姿が綺麗なことから凛とした印象を周囲に与えていた。
肌は透けるように白く、かといって不健康さはなく艶やか。
紅を塗っているわけでもないのに、その唇は薔薇色で、その唇に自分のそれを重ねたいと願う男子生徒は掃いて捨てるほどいた。
つまりは、ヴィクターが知らないだけでラティエラにはファンが多いのである。
当然のことながら、自分たちの女神であるラティエラを婚約者にしておきながら、他の令嬢にうつつを抜かすヴィクターには多くの敵が出来ていた。
成績も優秀で、マナーも完璧。
王太子妃、王妃に最も相応しいからと、王家から申し込んだ婚約である。
当のラティエラはというと、ジョンブリアン王国と、ウィスタリア公爵家のためになるならと婚約を受け入れた。
完璧な政略結婚である。
それでも婚約当初は、お互い婚約者として交流をし、学園卒業後は婚姻するものだと思っていた。
ラティエラ本人は、ヴィクターへの恋心を口にすることはなかったが、季節の折の手紙も贈り物も欠かさなかったし、いつも淑女の笑みを絶やさなかった。
だからヴィクターは勘違いしたのだ。
ラティエラがヴィクターを好きで、ラティエラが望んで自分の婚約者になったのだと。
そんなわけがないことは、学園に入学してからのラティエラの対応を見ていれば、誰もが分かった。
学園の入学式で、リリーに一目惚れしたヴィクター。
それ以来、婚約者であるラティエラを完全に放置していた。
婚約者がいながら、他のご令嬢を追いかけまわし、ベタベタとするヴィクターに、ラティエラは苦言を呈した。
「そのようなはしたない行動をするのはやめろ」と。
だがヴィクターは、それをラティエラの嫉妬と受け取り、一蹴した。
嫉妬なわけがない。
何故ならラティエラは、ヴィクターを政略結婚の相手としか見ていないからである。
王家のため、我が公爵のためとなるならと受け入れた婚約である。
ラティエラは、ヴィクターの対応にアッサリと引いた。
そしてその日以降、ヴィクターを完璧に避け始めた。
顔を合わさない。
お茶会も手紙も登校のエスコートを頼むことも、全てなくなった。
リリーを追いかけ回していたヴィクターは気にもとめていなかったが、ヴィクターはラティエラに『不要』の烙印を押されたのである。
ウィスタリア公爵家の長女であり、三歳年上の兄がいる。
紫色の長い髪は緩やかなウェーブをしていて、同色の瞳は長いまつ毛に覆われている。
背はさほど高くないが、背筋が常にピンと伸びていて、立ち姿が綺麗なことから凛とした印象を周囲に与えていた。
肌は透けるように白く、かといって不健康さはなく艶やか。
紅を塗っているわけでもないのに、その唇は薔薇色で、その唇に自分のそれを重ねたいと願う男子生徒は掃いて捨てるほどいた。
つまりは、ヴィクターが知らないだけでラティエラにはファンが多いのである。
当然のことながら、自分たちの女神であるラティエラを婚約者にしておきながら、他の令嬢にうつつを抜かすヴィクターには多くの敵が出来ていた。
成績も優秀で、マナーも完璧。
王太子妃、王妃に最も相応しいからと、王家から申し込んだ婚約である。
当のラティエラはというと、ジョンブリアン王国と、ウィスタリア公爵家のためになるならと婚約を受け入れた。
完璧な政略結婚である。
それでも婚約当初は、お互い婚約者として交流をし、学園卒業後は婚姻するものだと思っていた。
ラティエラ本人は、ヴィクターへの恋心を口にすることはなかったが、季節の折の手紙も贈り物も欠かさなかったし、いつも淑女の笑みを絶やさなかった。
だからヴィクターは勘違いしたのだ。
ラティエラがヴィクターを好きで、ラティエラが望んで自分の婚約者になったのだと。
そんなわけがないことは、学園に入学してからのラティエラの対応を見ていれば、誰もが分かった。
学園の入学式で、リリーに一目惚れしたヴィクター。
それ以来、婚約者であるラティエラを完全に放置していた。
婚約者がいながら、他のご令嬢を追いかけまわし、ベタベタとするヴィクターに、ラティエラは苦言を呈した。
「そのようなはしたない行動をするのはやめろ」と。
だがヴィクターは、それをラティエラの嫉妬と受け取り、一蹴した。
嫉妬なわけがない。
何故ならラティエラは、ヴィクターを政略結婚の相手としか見ていないからである。
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ラティエラは、ヴィクターの対応にアッサリと引いた。
そしてその日以降、ヴィクターを完璧に避け始めた。
顔を合わさない。
お茶会も手紙も登校のエスコートを頼むことも、全てなくなった。
リリーを追いかけ回していたヴィクターは気にもとめていなかったが、ヴィクターはラティエラに『不要』の烙印を押されたのである。
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