誰が彼女を殺したか

みおな

文字の大きさ
上 下
4 / 39

ラティエラ・ウィスタリアとは?

しおりを挟む
 ラティエラ・ウィスタリア公爵令嬢。

 ウィスタリア公爵家の長女であり、三歳年上の兄がいる。

 紫色の長い髪は緩やかなウェーブをしていて、同色の瞳は長いまつ毛に覆われている。

 背はさほど高くないが、背筋が常にピンと伸びていて、立ち姿が綺麗なことから凛とした印象を周囲に与えていた。

 肌は透けるように白く、かといって不健康さはなく艶やか。

 紅を塗っているわけでもないのに、その唇は薔薇色で、その唇に自分のそれを重ねたいと願う男子生徒は掃いて捨てるほどいた。

 つまりは、ヴィクターが知らないだけでラティエラにはファンが多いのである。

 当然のことながら、自分たちの女神であるラティエラを婚約者にしておきながら、他の令嬢にうつつを抜かすヴィクターには多くの敵が出来ていた。

 成績も優秀で、マナーも完璧。

 王太子妃、王妃に最も相応しいからと、申し込んだ婚約である。

 当のラティエラはというと、ジョンブリアン王国と、ウィスタリア公爵家のためになるならと婚約を受け入れた。

 完璧な政略結婚である。

 それでも婚約当初は、お互い婚約者として交流をし、学園卒業後は婚姻するものだと思っていた。

 ラティエラ本人は、ヴィクターへの恋心を口にすることはなかったが、季節の折の手紙も贈り物も欠かさなかったし、いつも淑女の笑みを絶やさなかった。

 だからヴィクターはしたのだ。

 ラティエラがヴィクターを好きで、ラティエラ望んで自分の婚約者になったのだと。

 そんなわけがないことは、学園に入学してからのラティエラの対応を見ていれば、誰もが分かった。

 学園の入学式で、リリーに一目惚れしたヴィクター。

 それ以来、婚約者であるラティエラを完全に放置していた。

 婚約者がいながら、他のご令嬢を追いかけまわし、ベタベタとするヴィクターに、ラティエラは苦言を呈した。

「そのようなはしたない行動をするのはやめろ」と。

 だがヴィクターは、それをラティエラの嫉妬と受け取り、一蹴した。

 嫉妬なわけがない。
何故ならラティエラは、ヴィクターを政略結婚の相手としか見ていないからである。

 王家のため、我が公爵のためとなるならと受け入れた婚約である。

 ラティエラは、ヴィクターの対応にアッサリと引いた。

 そしてその日以降、ヴィクターを完璧に避け始めた。

 顔を合わさない。
お茶会も手紙も登校のエスコートを頼むことも、全てなくなった。

 リリーを追いかけ回していたヴィクターは気にもとめていなかったが、ヴィクターはラティエラに『不要』の烙印を押されたのである。
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

処理中です...