誰が彼女を殺したか

みおな

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王太子に相応しいのは?

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「た、確かに交流はしていなかったが、ラティエラはきっと王太子妃、そして王妃の座を自分のものにしたくて・・・」

 ヴィクターのにも、マリウスの視線は冷ややかなままだ。

「ご自分のおっしゃってること、ちゃんと理解していますか?そもそも殿下の婚約は、申し込みだったでしょう?ジョンブリアン王国の公爵家侯爵家中で、一番力のあるウィスタリア公爵家が選ばれたんじゃないですか」

「だ、だが・・・」

「僕も別に、ウィスタリア嬢の味方をするわけじゃありません。ただ客観的に見てご令嬢が殿下に・・・王太子妃という座に執着しているようには見えませんでしたよ」

 マリウスは決して、ラティエラ・ウィスタリアを庇うつもりはない。

 彼女がリリーに対して、わずかでも何かをしていたなら。

 ウィスタリア公爵家が、少しでも妙な動きをしていたなら。

 マリウスはラティエラに、疑いの目を向けただろう。

 だが、ラティエラは最初こそに苦言を呈したものの、ヴィクターが全く聞こうとしないことで、ヴィクターと距離を置いた。

 今まではすれ違えば笑顔で挨拶してきたのが、完全な無視、それどころかすれ違うことさえほとんどなくなった。

 ウィスタリア公爵家からは、王家宛に『王太子殿下は、他に想うご令嬢がいるご様子。婚約を解消していただきたい』と手紙が届いたと陛下たちが言っていたではないか。

 ヴィクターが陛下たちからそう叱責を受けた時に、側近である自分たちも同席したのでよく覚えている。

 そして、ラティエラは全くリリーと接触しようとはしなかった。

 貴族令嬢の見本とすら言われる、凛としていて常に正しい公爵令嬢。

 笑みを絶やさず、回りくどい言い方をし、身分と家を重んじる。

 自分たちが愛しく思うリリーと全く違う。

 だが、ヴィクターは王太子だ。
未来の国王陛下。この国の頂点に立つ者。

 その妻で、この国の女性のトップである王妃にリリーは

 例えば侯爵家あたりの養女になれば、身分的なものは解消できるだろう。

 だが、それだけでは駄目なのだ。
無理矢理王太子妃になったとして、どの令嬢も夫人も、リリーを敬ってくれない。

 他国の言語もままならないリリーでは、外交も出来ない。

 いや、やったが最後、国際問題になってしまう。

 だから、王太子の婚約者に選ばれるのは、幼い頃から厳しい教育を受けている公爵令嬢か侯爵令嬢なのだ。

 そして、彼女たちは愛だの恋だのを王太子に求めていない。

 中には王妃になりたいと望む者も、王太子を愛した者もいるだろうが、少なくともラティエラ・ウィスタリアはそうは見えなかった。
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