誰が彼女を殺したか

みおな

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犯人は誰だ?

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「殺・・・された?」

 ヴィクターの声が震えた。

 死んだというだけでもショックなのに、あの誰にも愛される彼女に手をかけた人間がいるというのか?

 そこまで考えて、ハッとした。

「犯人は、ラティエラではないか?」

 ラティエラ・ウィスタリア。
ウィスタリア公爵家の令嬢で、王太子であるヴィクターの正当なる婚約者。

「滅多なことを口にするんじゃない!もし誰かに聞かれたらどうする」

「しかし、可能性はあるだろう?」

 マリウスの注意にも、ヴィクターは耳を貸さない。

 自分の愛をリリーに奪われたから、婚約者であるラティエラは、嫉妬からリリーを殺したのではないか、と言う。

「嫉妬されると思っているのか?学園に入学してから交流すらしてないのに?国王陛下はもちろん、ウィスタリア公爵からも苦情が届いていただろう?」

 学園の入学式までは、婚約者としてラティエラをエスコートしていた。

 だが、その入学式でリリーと出会い、恋に落ちたヴィクターは、その日からラティエラとの交流時間を取らなくなったのだ。

 ラティエラの父親であるウィスタリア公爵から王家に苦言が届き、ヴィクターは父親である国王陛下からも母親である王妃からも注意を受けた。

 ラティエラとヴィクターの婚約は、政略結婚。

 だから、他に好きな人が出来たのはやむ得ない。

 だが、婚姻して三年たつまでは我慢しろ。そうすれば、愛妾として迎えればいい。

 何度注意しても態度を改めないヴィクターに、両親は最後にはそうまで言った。

 だが、これにヴィクターは反発した。

 最愛のリリーを愛妾など!と。
リリーは王太子妃、つまりヴィクター唯一の妻にする!そう喚いた。

 これには、国王も王妃も眉を顰めた。

 王太子妃になる者は、王妃となる者。
男爵家の令嬢であるリリーには、その資格すらないことを、自分の息子は忘れてしまったのか。

 呆れて言葉も出なかった。

 王太子の婚約者に公爵令嬢が選ばれるのは、ずっと昔からの決まり事だ。

 遠い昔、当時の王太子が子爵令嬢に惚れ込み、周囲を何とか説得して彼女を王太子妃にした。

 結果として、その令嬢は精神を患い、離宮にて静養という形になった。

 本人も必死で頑張ってはいたのだろう。
 だが頑張ったからといって、自国他国の言語歴史特産物に貴族構成全てを把握し、自国に有利なように話を持っていくことなど不可能だった。

 上手く振る舞えない妻を、王太子は必死に支えようとした。

 だが、明るく愛らしかった笑顔は消え失せ、王太子妃としての公務もできなくなっていき、やがて心を患い、自傷行為を始めるようになった。

 王太子は自分の選択が、愛する者を追い込むことになったことにようやく気づいた。

 それ以来、王太子の婚約者は公爵家か侯爵家と決まったのだ。

 
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