誰が彼女を殺したか

みおな

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王太子の恋人が死んだ?

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「今・・・何と言った?」

 聞こえていなかったわけではない。
だが、ヴィクターは聞き返さずにいられなかった。

 側近の一人であるマリウスは、その秀麗な顔を曇らせながらも、ハッキリと繰り返した。

「リリーが・・・リリー嬢が亡くなったとマゼンダ男爵家から連絡がありました」

 ガタッ!

 立ち上がり、部屋を飛び出しそうなヴィクターに、マリウスは言葉を続けた。

「葬儀には・・・来ないで欲しいとのことです」

「なっ⁈」

「殿下が見えると、噂の後押しになるから、と。娘が王太子殿下と親しくしているなど、あってはならないことだから、と。我々にも、娘のことを思うなら来ないで欲しい、と言われましたよ」

 まるで自分とのことが汚点かのように言われ、ヴィクターはマリウスを睨みつけた。

 だが、そのマリウスから同じようにキツい視線を向けられ、戸惑ってしまう。

 マリウス・ビリジアンは、眼鏡の奥からその深緑の瞳を鋭くさせながらヴィクターを見つめた。

 このジョンブリアン王国の王太子であり、幼馴染でもあるヴィクター。

 ヴィクターを支える側近という立場になったのは、学園に入学する三年前からだが、幼い頃から友として常にそばにいた二人。

 そのマリウスが、ヴィクターを睨みつけるなど、過去には一度もなかった。

 ヴィクターは、王太子としての自分の立場をよく理解していたし、マリウスもそんなヴィクターを友として側近として、誇らしく思っていた。

 マリウス自身、冷静な性格で、感情のままに人との関係を波立たせるようなタイプではなかった。

 公の場では殿下だが、普段はヴィクターと呼んでいたマリウスにキツい視線と言葉を向けられたヴィクターは、戸惑いを隠せない。

「マリ・・・ウス?」

「リリーが殿下を好きだと思ったから・・・殿下に協力したのに、こんなことになるなら、嫌われても止めるべきだったっ!」

 悲痛な声が、王太子の執務室に響く。

 マリウスが・・・いや、側近であるが、リリーのことを好ましく思っていたことはヴィクターも気付いていた。

 明るく愛らしいリリーは、身分こそ男爵令嬢と低いが、誰からも愛されるに相応しい令嬢だとヴィクターは思っている。

 だから、側近たちがリリーを女神のように扱っていてもそれが自然だと思ったし、になるのだから、それが当然だとも思っていた。

「こんなことって・・・事故か何かではないのか?」

 馬車の事故か何かだと思っていたが、それだとマリウスの言う「こんなこと」というのはおかしい。

「事実はまだ、分かりません。ただ・・・マゼンダ男爵家の使用人たちが話していたのは、リリーはのだと。そう言っていました」




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