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ツンデレかよ
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オーギュスト王国が攻めて来ないように手は尽くすと言うと、リフト王子は深々と頭を下げた。
「ジェンティアナ王国シアン王女殿下に心からお礼申し上げます」
「これで、父と母のしたことの詫びにはなるでしょうか」
「僕たちは当時の王太子殿下のことを直接は知りませんが、父から曾祖父のことを聞いたことはあります。ですが、ご覧の通り僕たちは結婚して子を成し、王家として継続しているのです。過去は過去、だと僕は思います」
国王陛下もそう思っていてくれると良いけど。
次代となる殿下二人を助けたことと、これから手を尽くすことで許してくれると良いなと思う。
正確に言うと、許さなくても魔国は困りはしないけど、私を攫おうとか馬鹿なことはしなくなるだろう。
力の差を見せつけたのだから。
赦されたら・・・
パパの気持ちが、少しは楽になるかなと思っただけ。
それが無理でも別にかまわない。
パパのことが大好きだと、みんなでいっぱい態度で言葉で示すから。
「それでは、我々はこれで。オーギュスト王国の件は戻って打ち合わせ後に対処します。結果は追ってお知らせしますから」
「はい。良い知らせをお待ちしております」
「あ、それとこれで今回の婚約云々は必要なしということを国王陛下にお伝え下さい。私が他国に嫁に出ることはありませんから」
もし人間を好きになって、そして相手からも想われても、嫁に行くのではなく婿に来てもらうことになる。
私たちと彼らとでは寿命も成長も違う。
おそらく私も、パパたちと大差ない年齢で見た目の成長は止まるだろう。
パパほどは長く生きないとしても、目の前の王子たちの子供や孫よりももっと長く生きることになる。
リフト王子は、少し眉を下げて頷いた。
「そうですね・・・縁を結べたら光栄でしたが、きっととても強い想いと覚悟がないと殿下たちと縁を結ぶことは難しいのでしょうね」
確かに、ただ惚れた腫れただけでパパとママは駆け落ちしたんじゃないんだろう。
ママは、家族も友人も全てを捨てる覚悟を持って。
パパは、愛する者が先に老いて死にゆくことを理解した上で最後まで愛する覚悟を持って。
アゼリアだった時は、あんなに簡単に裏切られて殺されたけど、きっと王太子殿下はアゼリアのことをカケラも好きじゃなかったし、アゼリアも本気で想ってはいなかったんだろう。
「殿下たちに良いご縁があることを、心からお祈りいたします」
「ありがとうございます。王女殿下にも良いご縁がありますように。セント、ちゃんとご挨拶しなさい」
「・・・美味しいお菓子、準備しとくから・・・食べたくなったら・・・来ても良いぞ」
セント王子はそう言うと、顔を真っ赤にして部屋から出て行った。
思わず笑った。
「ジェンティアナ王国シアン王女殿下に心からお礼申し上げます」
「これで、父と母のしたことの詫びにはなるでしょうか」
「僕たちは当時の王太子殿下のことを直接は知りませんが、父から曾祖父のことを聞いたことはあります。ですが、ご覧の通り僕たちは結婚して子を成し、王家として継続しているのです。過去は過去、だと僕は思います」
国王陛下もそう思っていてくれると良いけど。
次代となる殿下二人を助けたことと、これから手を尽くすことで許してくれると良いなと思う。
正確に言うと、許さなくても魔国は困りはしないけど、私を攫おうとか馬鹿なことはしなくなるだろう。
力の差を見せつけたのだから。
赦されたら・・・
パパの気持ちが、少しは楽になるかなと思っただけ。
それが無理でも別にかまわない。
パパのことが大好きだと、みんなでいっぱい態度で言葉で示すから。
「それでは、我々はこれで。オーギュスト王国の件は戻って打ち合わせ後に対処します。結果は追ってお知らせしますから」
「はい。良い知らせをお待ちしております」
「あ、それとこれで今回の婚約云々は必要なしということを国王陛下にお伝え下さい。私が他国に嫁に出ることはありませんから」
もし人間を好きになって、そして相手からも想われても、嫁に行くのではなく婿に来てもらうことになる。
私たちと彼らとでは寿命も成長も違う。
おそらく私も、パパたちと大差ない年齢で見た目の成長は止まるだろう。
パパほどは長く生きないとしても、目の前の王子たちの子供や孫よりももっと長く生きることになる。
リフト王子は、少し眉を下げて頷いた。
「そうですね・・・縁を結べたら光栄でしたが、きっととても強い想いと覚悟がないと殿下たちと縁を結ぶことは難しいのでしょうね」
確かに、ただ惚れた腫れただけでパパとママは駆け落ちしたんじゃないんだろう。
ママは、家族も友人も全てを捨てる覚悟を持って。
パパは、愛する者が先に老いて死にゆくことを理解した上で最後まで愛する覚悟を持って。
アゼリアだった時は、あんなに簡単に裏切られて殺されたけど、きっと王太子殿下はアゼリアのことをカケラも好きじゃなかったし、アゼリアも本気で想ってはいなかったんだろう。
「殿下たちに良いご縁があることを、心からお祈りいたします」
「ありがとうございます。王女殿下にも良いご縁がありますように。セント、ちゃんとご挨拶しなさい」
「・・・美味しいお菓子、準備しとくから・・・食べたくなったら・・・来ても良いぞ」
セント王子はそう言うと、顔を真っ赤にして部屋から出て行った。
思わず笑った。
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