その転生幼女、取り扱い注意〜稀代の魔術師は魔王の娘になりました〜

みおな

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間違い〜魔王様視点〜

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「家・・・出?」

 昼食を誘うためにシアンの部屋を訪れた俺に渡されたのは、シアン手書きの置き手紙だった。

 呆然とする主君から手紙を受け取ったメフィストは、厳しい視線をフラウに向けた。

行かせたのですか?答えなさい、フラウ」

 フラウはシアンの侍女であると同時に、護衛でもある。

 シアンを護れる者が来るまでに、その身を呈して守る役目があった。

 シアンの自由を妨げるべきではないが、安全が保障される魔王城から外へ出ることを見逃すべきではない。

 だが、メフィストの厳しい視線にもフラウは顔を下げることはなく、しっかりとした表情で俺を見た。

「罰は後でお受けします。ですが、失礼を承知でお伺いいたします。陛下、再婚をお考えになられましたか?」

「無礼ですよ、フラウ。陛下のお考えに貴女のような身分の者が・・・」

「メフィスト、かまわない。俺はシアンに母親を作ってやりたかった。シアンはまだ母親に甘えたい年頃だろう?」

「姫様が・・・シアン様そう望まれましたか?陛下に母親が欲しいとお願いされましたか?」

 フラウの問いかけに、戸惑った。

 確かにシアンからそんなことをお願いされたことはないが、あの子は聡い子だ。

 我儘になるからと、口にしなかっただけだろう?

 だが、フラウの視線はそうではないと言っていた。

「姫様は、魔王妃様、つまりお母様のことを全く覚えていらっしゃらないそうです。ですが、我々が、そして陛下がいらっしゃることでカケラも寂しいなどと思わないのだそうです。陛下。姫様は再婚を反対して家出なさったわけではありません。姫様にとって、この再婚は『陛下の奥様』を得るためのもの。姫様のお母様を得るためのものではないんです」

 いや。俺は、妻を得たいと思ったわけではない。

 俺にとっての妻はエヴァジェリンだけだ。

 それは再婚相手にもちゃんと説明して、シアンの母親となろうとする者の中から選ぶつもりだった。

「何故、姫様にお尋ねくださらなかったのですか?姫様が、と思うとはお考えにならなかったのですか?」

 目の前が真っ暗になった。

 そうだ。どうして聞かなかったのだろう。
 シアンなら、ちゃんと正直に自分の気持ちを答えてくれたはずなのに。

 邪魔なわけがない。
シアンは俺にとって大切な、かけがえのないものなのに。

「シアンは・・・もう俺の娘ではいたくないのだろうか」

「そういうこともにお聞きください。お戻りいただくよう、ご連絡いたしますから」

 戻って・・・くれるのだろうか?
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