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人間と魔族
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私は、シアンの両親は想いあって幸せな結婚をしたものだと思っていた。
種族間の垣根を乗り越えて、周囲に祝福されて。
でもよく考えたら、そんなことあるわけがなかった。
どちらにも、反対されたはず。
魔族にいい感情を持っていないという人間たちだけでなく、魔族の中にだって人間の血を引くシアンのことをよく思っていない者がいるだろう。
そのことは、私に重くのしかかった。
メフィストもフラウも、それから目の前のザギも・・・
魔王の娘だから仕方なく、私に優しくしているのかもしれない。
「姫様、違うよ?そうじゃない」
「・・・」
「きっと姫様は、僕たちが陛下の娘だから姫様に関わってると思ってるんだろうけど、魔族はね、そんな忖度はしないんだ。そりゃもっと下位の魔族はわかんないけど、少なくとも僕は姫様が好きだから一緒にいるんだよ」
ザギの顔を、抱き上げられたままの至近距離から見る。
ザギはその目を優しく細めた。
「陛下やメフィストの気持ちは知らないけど、あの侍女のフラウは姫様を好きだよ。好きだから、自分が処罰されるかもしれないのに、この家出に協力したんだ」
「処罰っ?」
「大丈夫。陛下はそこまで愚かな方ではないよ。そんなことをしたら、姫様が二度と手元に戻らないことを理解している。だから、フラウは無事だからそんな顔しないで」
フラウの身を案じて、泣きそうになっていた私は、優しくトントンと背中を撫でられる。
「さ、街を見て回ろうか」
「うん。フラウにお土産買いた・・・あ!」
「どした?姫様」
「お金!お金持ってない!お土産買えない!」
そもそも人間の国のお金、持ってないし!
そんな私を見て、ザギはクスクスと笑う。
「大丈夫、大丈夫。宝石持ってきたよ。これと交換で物は買えるから」
「そうなんだ。でも私、宝石持ってない」
「そんなの、気にしなくていいんだよ。さて、お土産何買おうか?」
ザギに言われて、周囲のお店に視線を向ける。
私はアゼリアだった頃は、準男爵の爵位は与えられたけど元々が平民で、しかも魔法使いとしての活動ばかりで、街を出歩いて買い物することなんてなかった。
買うとしても魔道具関連ばかりで。
シアンになってからは、幼いせいだと思ってたけど、半分人間の血が入ってることで襲われる危険があったのかな、そのせいで街に出かけたことがない。
だから、シアンにとってもアゼリアにとっても、初めての街歩き、になる。
アザレア王国の王都は、とても賑やかな街だった。
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魔王の娘だから仕方なく、私に優しくしているのかもしれない。
「姫様、違うよ?そうじゃない」
「・・・」
「きっと姫様は、僕たちが陛下の娘だから姫様に関わってると思ってるんだろうけど、魔族はね、そんな忖度はしないんだ。そりゃもっと下位の魔族はわかんないけど、少なくとも僕は姫様が好きだから一緒にいるんだよ」
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「処罰っ?」
「大丈夫。陛下はそこまで愚かな方ではないよ。そんなことをしたら、姫様が二度と手元に戻らないことを理解している。だから、フラウは無事だからそんな顔しないで」
フラウの身を案じて、泣きそうになっていた私は、優しくトントンと背中を撫でられる。
「さ、街を見て回ろうか」
「うん。フラウにお土産買いた・・・あ!」
「どした?姫様」
「お金!お金持ってない!お土産買えない!」
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「そうなんだ。でも私、宝石持ってない」
「そんなの、気にしなくていいんだよ。さて、お土産何買おうか?」
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