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両親の愚行
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着いたのは、シアンの母親が住んでいたという国。
アザレア王国。
常緑低木の、フリルのような花びらを持つ花が多く咲いている国だ。
ピンクや赤、白に紫と多くの色の花びらが華やかで、その花の名が国名になっているそうだ。
「ここが、お母様が住んでた国」
「そ。魔王妃様の祖国、アザレア王国。エヴァジェリン様はこの国のジェンティアナ公爵家のご令嬢だったんだよ」
うん。前に公爵家の娘だったって聞いた。
アゼリアは平民だったけど、王太子の婚約者になってたこともあって貴族たちの持つ性格も何となくわかっている。
公爵家の令嬢が魔王に嫁ぐ。
そりゃ、魔族に対する敵愾心は強いでしょうよ。
「しかも、当時の王太子の婚約者でね。でも、夜会に訪れていた陛下と恋に落ちちゃってね、駆け落ち同然で魔王妃になったんだ」
「それは・・・恨まれても無理ないね」
恋をしてしまうのは仕方ないことだろうけど、高位貴族の令嬢に生まれたのなら、政略結婚を受け入れるのは当然とされていた。
そもそも貴族の結婚は、家と家の契約と言われ、家を継ぐ嫡子はそれに相応しい妻を迎え、それ以外は家の利になる結婚をする。
それが当たり前の世界だった。
アゼリアは平民だったけれど、一応貴族籍をもらったのと、王太子の婚約者なんてやってたからパーティーに出たことも、お茶会に呼ばれたこともある。
その時のご令嬢たちの会話で、貴族の結婚とはそういうものだと知って、大変なんだなぁと思ったものだ。
だから公爵令嬢、しかも王太子の婚約者でありながら、その婚約を破棄だか解消だかして魔王に嫁ぐなんて、いくら何でも無茶苦茶だと思う。
そりゃ、その国の人間には恨まれているでしょうよ。
王家は馬鹿にされたと思うだろうし、公爵家だって娘に裏切られたようなものだ。
父親に溺愛されていて、魔族のみんなも優しくて、母親が亡くなっても再婚もしなかったことから、両親は幸せな結婚をしたのだと思っていたけど・・・
さすがに、ちょっと両親のしでかしたことの重大さにため息が出た。
「好きになるのは仕方ないんだろうけど、残された人たちは大変だったろうね」
「姫様は大人だね。まぁ、陛下も若かったからね。相手は人間の国の王太子の婚約者。今奪わなければ失ってしまうって思っちゃったんだろうね」
「その婚約者だった王太子さんはどうなったの?」
「確か、魔王妃様の妹さんと結婚したよ。三歳年下だったかな。魔王妃様とは血が半分しか繋がってなかったと聞いたけど」
ザギはそう言いながら、私を左腕に抱き上げたまま街に向かう。
目の前には多くの人が行き交っていた。
アザレア王国。
常緑低木の、フリルのような花びらを持つ花が多く咲いている国だ。
ピンクや赤、白に紫と多くの色の花びらが華やかで、その花の名が国名になっているそうだ。
「ここが、お母様が住んでた国」
「そ。魔王妃様の祖国、アザレア王国。エヴァジェリン様はこの国のジェンティアナ公爵家のご令嬢だったんだよ」
うん。前に公爵家の娘だったって聞いた。
アゼリアは平民だったけど、王太子の婚約者になってたこともあって貴族たちの持つ性格も何となくわかっている。
公爵家の令嬢が魔王に嫁ぐ。
そりゃ、魔族に対する敵愾心は強いでしょうよ。
「しかも、当時の王太子の婚約者でね。でも、夜会に訪れていた陛下と恋に落ちちゃってね、駆け落ち同然で魔王妃になったんだ」
「それは・・・恨まれても無理ないね」
恋をしてしまうのは仕方ないことだろうけど、高位貴族の令嬢に生まれたのなら、政略結婚を受け入れるのは当然とされていた。
そもそも貴族の結婚は、家と家の契約と言われ、家を継ぐ嫡子はそれに相応しい妻を迎え、それ以外は家の利になる結婚をする。
それが当たり前の世界だった。
アゼリアは平民だったけれど、一応貴族籍をもらったのと、王太子の婚約者なんてやってたからパーティーに出たことも、お茶会に呼ばれたこともある。
その時のご令嬢たちの会話で、貴族の結婚とはそういうものだと知って、大変なんだなぁと思ったものだ。
だから公爵令嬢、しかも王太子の婚約者でありながら、その婚約を破棄だか解消だかして魔王に嫁ぐなんて、いくら何でも無茶苦茶だと思う。
そりゃ、その国の人間には恨まれているでしょうよ。
王家は馬鹿にされたと思うだろうし、公爵家だって娘に裏切られたようなものだ。
父親に溺愛されていて、魔族のみんなも優しくて、母親が亡くなっても再婚もしなかったことから、両親は幸せな結婚をしたのだと思っていたけど・・・
さすがに、ちょっと両親のしでかしたことの重大さにため息が出た。
「好きになるのは仕方ないんだろうけど、残された人たちは大変だったろうね」
「姫様は大人だね。まぁ、陛下も若かったからね。相手は人間の国の王太子の婚約者。今奪わなければ失ってしまうって思っちゃったんだろうね」
「その婚約者だった王太子さんはどうなったの?」
「確か、魔王妃様の妹さんと結婚したよ。三歳年下だったかな。魔王妃様とは血が半分しか繋がってなかったと聞いたけど」
ザギはそう言いながら、私を左腕に抱き上げたまま街に向かう。
目の前には多くの人が行き交っていた。
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