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魔族

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 鏡に映った姿をガン見していると、コンコン!とノックの後に扉が開いた。

「姫様?何をなさっているのですか?危のうございます」

 そう言って慌てて私に駆け寄り、私を椅子から下ろすのは・・・

 紺色のお仕着せ。

 肩くらいに切り揃えられた緑色の髪。

 歳の頃は、十八歳くらい、かな。

 歳の割にそのご立派な、たゆんたゆんしたお胸が、可愛い容姿とちょっとアンバランスな女の子。

 多分、侍女とかメイドさんとかなんだろうけど・・・

 その頭から、二本のツノが出ていた。

 え?ツノ?
ツノってどういうこと?

 ちょっと待って。うん。一旦、落ち着こう。

 私は突然転生したわけでなく、最初からこの美幼女として生まれた。

 うん。オッケー。
自分の名前、アゼリア・シュルク・・・違うわ、これは前世の名前。

 この美幼女としての名前は、シアン。シアン・ジェンティアナ。

 目の前の彼女は、フラウ。
パイコーンの一族で、私の専属侍女。

 よし!大丈夫。
記憶はしっかりしてる。

 パイコーン・・・
一角獣と呼ばれるユニコーンの亜種って言われてる。

 正統なる
そりゃ、ツノもあるでしょうよ。羽があったり、鱗があったりするのもいるわよ。

 魔族かぁ・・・

 魔族は、私がアゼリアだった時にもいた。

 ただ、人間の住む場所とは遠く離れた場所に国を構えていて、私たちが会うことはなかった。

 他国の中には、魔族の国と国交を結んでいる国もあったらしいけど。

 当初、あの王太子は成人の試練で魔王を倒すとか言っていた。

 今思うと、馬鹿でなかろうか。
倒せるわけがないし、そもそも魔王を倒したりしたら国際問題でしょ。

 だって、魔王は魔国の国王陛下なんだから。

 それを、まるで魔物討伐の一環みたいに宣言し、最終的に国王陛下に叱られてた。

「魔王を倒すのは勝手だが、返り討ちにあっても誰もお前を助けん。護衛が守るのは聖女だけだ。王太子の替えは他にもいるからな」

 さすがにそこまで言われたら、諦めるしかない。
 そもそも、魔族の国はものすごく遠いらしいし。

 そこで、思い直して狙ったのがドラゴンなんだから、無鉄砲なんだか、阿呆なんだか。

 私を盾にする気だったようだから、倒せそうにないと判断したら、さっさと退散するつもりだったんだろう。

 でも、そうか。

 魔族の国、ジェンティアナ。

 その魔国の国王陛下である、魔王シリウス・ジェンティアナ。

 その魔王の娘であり、半分人間の血を引く娘、シアン。

 私は半分魔族に生まれ変わったのか。




 

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