悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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好きになる理由

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 ソルが私を好きだと言った。

 私の作った乙女ゲーム『魔術王国の花の乙女』は、ヒロインであるフローラが選ぶルートによって多少の結末の違いはあるが、リアナ・アイリーンの結末は、90%が死亡ルートである。

 シオンルートだと、聖女になったフローラをいじめたと断罪され処刑される。
 ソルルートだと、これまた聖女となったフローラに害なそうとして暗殺される。
 ハロルドたちのルートでは、国外追放されるが、野党に襲われたりして死亡したと、テロップで出る。

 乙女ゲームは、ヒロイン主点で進むので、悪役令嬢であるリアナが、処刑や暗殺される時に、どんな思いでいたのかは語られない。
 自分を処刑する、愛する異母兄のシオンを憎むのかもしれないし、フローラを憎むのかもしれない。
 逆に、自分の罪を悔いて悲しむのかもしれない。

 だけど、どのルートに進んだとしても、リアナは誰にも愛されず、孤独のまま死んでいくのだ。
 聖女であるフローラは、慈愛の眼差しでリアナを見ていたけど、それはリアナが望んだ愛ではなかったのだから。

 私を暗殺するはずのソルが、婚約者になり、そして私を好きだと言った。

 私は、正直ソルのことを好きなのかよくわからない。
 それはそうだ。ずっと、私を殺す相手だと思って警戒していたのだから。

 だけど、リアナになってから知ったソルは、私のためにデザートを取ってくれたり、高級チョコレートを買ってきてくれたり、いつもいつも、私のことを大切にしてくれていた。

 リリー嬢の時に助けてもらって、私を励ますためにチョコレートを買ってきてくれたソルを思うと、胸の中が温かくなった。

 今日も、ソルが助けに来てくれて・・・嬉しかった。何だか嬉しくて、切なくて、もどかしい思いでいっぱいになった。

 だから、抱きついた時に拒絶されて、苦しくて、悲しくなった。

「違うんです。そんな姿のリアナ様に抱きつかれたりすると、俺は紳士ではいられない」

 それは、私を・・・あの男のように?

 怖いのに、体が震えるのに、ソルに抱きしめて欲しいと思った。
 ソルが抱きしめてくれたなら、侍女に体を洗ってもらっても気持ち悪くて、怖くて仕方ない気持ちがなくなる気がした。

 それが好きという気持ちなのかわからない。
シオンに抱きしめられても、あの男のように気持ち悪いとは思わない。ハロルドたちだとしても嫌悪感は抱かないと思う。
 でも、シオンに抱きしめられても、それは国王陛下であるお父様や王妃であるお母様に抱きしめられるのと変わらない。
 安心感はあるけど、ソルとは違う。あの、助けに来てくれた時に抱きしめられて、ソルは違うのだと感じた。

 だから、抱きしめて欲しいと願った。
ソルが私の手を引いて抱きしめてくれた時ー

 これが好きだということだと、心の中で誰かが言った。

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