上 下
23 / 57

好きだということ

しおりを挟む
 目が覚めたら、自分の部屋のベッドの上だった。
 あれ?確か、学園に行ったはずなのに。フローラから手作りクッキー貰って、いつも通り抱きしめられて、これまたいつも通りシオンに抱き返されて・・・

 そうだ!私がソルに恋してるとか何とかフローラに言われて・・・
 ソルに恋?そんなわけ、ない。だって、ソルは私を殺すんだもの。フローラを好きなソルは、フローラを排除しようとする私を・・・

 ん?あれ?でも、私はフローラを排除しようとか思わない。フローラは優しいし、大好きだ。それに、シオンがフローラとラブラブになることにも大賛成だ。
まぁ、少しは寂しいけど、でもシオンは異母兄だし、私はゲームの中の悪役令嬢のように異母兄を欲したりしない。

 もちろん、フローラが他の攻略対象とくっつくのなら、応援するつもりだ。ハロルドや・・・ソルでも?
 ソルが、フローラに恋をする?
そうだよね。フローラは可愛いし、優しい。こんなツルペタの小娘より、フローラの方がソルに相応しい。

「リアナ様?どこか痛いところでも?」

 ソルの声と共に、その冷んやりした手が私の頬に触れた。
 それによって、私は自分が泣いていることに初めて気付いた。

「リアナ様?」

「・・・」

「・・・」

 涙に濡れた目で見上げると、ソルが黒曜石の瞳を一瞬見開きー

「ソル?」

 吐息が触れそうなほど近づいていたソルの顔が、私の声に部屋の入り口まで飛び退く勢いで離れた。

 そんなに飛び退かなくても、何もしないのに。急に、声かけたからビックリさせたかな?

「ごめん、びっくりしたよね。大丈夫?」

「・・・」

「熱はないから、計らなくても大丈夫よ」

「・・・そう、ですか」

「?」

 変なソル。驚いたのが不服なのかしら?そうよね。ソルは暗部の腕利きだものね。こんな小娘に驚かされて不服なのね。

 私はそう納得して、ベッドから降りようとした。だが、降りた途端、ソルに抱き抱えられ再びベッドへと戻された。
 なんで?

「えと、ソル?」

「3日は学園を休んで体を休めるようにと、シオン様のお言いつけです」

「なんで?私、全然元気だよ?」

「倒れておいて何をおっしゃっているのですか?とにかく、不平があるのなら、後ほどお見舞いに来られるシオン様におっしゃって下さい」

 ゔゔっ。ソルのいじわる。シオンが撤回してくれるわけないじゃん。
 他のことなら甘えたら譲ってくれるだろうけど、私の体調のことに関してはシオンの溺愛は全開なんだから。

 別に具合が悪いわけでもないのに、また休むのかぁ。授業ついて行けなくなったらどうしよう。

「授業ついて行けなくなる」

「大丈夫ですよ。不安ならシオン様に家庭教師して貰えばどうですか?」

「お兄様は甘やかすから家庭教師に向かないと思う」

 とにかく、「リアナはすごいな」とか余計なものが入りすぎて、勉強にならない。

「なら、俺が教えましょうか?」

「ソル、忙しいじゃない。それに、ソルに教わってると、お兄様が絶対乱入するもの。んー、フローラ様忙しいかな」

「・・・後でシオン様から聞いてもらいます」

 ソルは一瞬不満そうな顔をしたけど、シオンが絶対乱入すると言うと、納得したようにうなづいた。

「そういえば、リリウム公爵令嬢がお見舞いに後ほどおいでになるそうですよ」

「アリスティア様が?嬉しい!ここにお通ししでくれる?」

「わかりました。お通ししますから、大人しく寝ていて下さい」

 ソルまでなんでそんな過保護なの?過保護はシオンでお腹いっぱいだから。
・・・でも言っても聞いてくれないだろうなぁ。

「わかった」

「良いお返事です。ご褒美にご令嬢がいらしたときに、美味しいお茶菓子をお出しします」

「ほんとっ?ソル、大好きっ!ありがとう!」

 ソルが美味しいって言うなら、間違い無いのよね。
 嬉しさ全開の私は、ソルがその顔を赤く染めたことなど全く気付いていなかったのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

花見 有
恋愛
乙女ゲームの断罪エンドしかない悪役令嬢リスティアに転生してしまった。どうにか断罪イベントを回避すべく努力したが、それも無駄でどうやら断罪イベントは決行される模様。 仕方がないので最終手段として断罪イベントから逃げ出します!

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。

ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

処理中です...