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恋?恋だと言われても

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 学園に戻ってからは、平穏な日々が続いていた。
 リリー嬢がいないだけでこんなにも日々が平和なのかと、驚いたほどだ。

 リリー嬢のその後は、私にはわからない。シオンもソルも、父親である陛下も、「それ相応の処分をした」としか言わなくて、騎士の人とか色々聞いてみたけど、「姫君が気にする必要のないことですよ」って、誰も教えてはくれなかった。
 多分、多分だけど、処刑されたのでは、と思う。元々が問題行動のあった人だったし、さすがに王族に手をあげたのはまずかったと思う。

 私は、シオンをはじめとする攻略対象たちと距離を置くのをやめた。もちろんフローラとも。
 恋愛対象ではないけど、あんなに嫌われたくないと思った相手だ。普通に仲良くできたらいい、そう思った。

 断罪フラグを折りたくて距離を取ろうとしていたけど、ヒロインであるフローラとも仲良くできてるし、攻略対象たちの婚約者とも仲良く出来ていると思う。

 そういえば、フローラは結局どのルートに進んでいるんだろう?
 私はフローラを好きだし、できればシオンの婚約者になるルートがいいなと思っている。
 いじめたりしてないし、フローラが聖女になってもシオンに断罪されたりしないよね?

「リアナ様、これ食べてください」

「フローラ様、このクッキーどうしたんですか?」

「作ってみたんですけど・・・クッキーはお嫌いですか?」

「え?フローラ様の手作りですか?あ、ありがとうございます」

 可愛らしいハート形のクッキーに頬がゆるむ。ん?なんかこのシーン覚えがあるような・・・

 あ。これって、ヒロインであるフローラが攻略対象に手作りお菓子を渡すシーンじゃ?
 シオン相手の場合、リアナはシオンが大切に部屋に置いておいたそのクッキーを踏み潰すのよね。

 あれ?何で私が貰ってるの?いや、攻略対象に渡した残りとかだよね、きっと。

「フローラ様の手作りなんて、貰えた方は幸せですわね」

「リアナ様♡」

 フローラが抱きついてくる。うーん、相変わらず凶器なお胸。
 私もここまででなくていいから、成長しないかなぁ。なんて思ってると、シオンがやってきてフローラから私を奪い返した。

「フローラ!僕のリアナに何してるんだ」

「あら?私は大好きなリアナ様に私の気持ちを伝えてるだけですわ」

「え、えと?フローラ・・・様?」

 フローラの気持ち?え?だってこれ、他の攻略対象にあげた残りだよね?

「ふふっ、可愛いリアナ様。私、リアナ様のことが大好きですわ」

「あ、私もフローラ様のこと好きです」

「嬉しい。リアナ様」

 ・・・友達的な好きだよね?

「リアナ!リアナは僕のこと大好きって言ってくれたよね?」

「お兄様?ええ。私を大切にして下さるお兄様のこと大好きですわよ?」

「ほら!リアナは僕のことが好きなんだ!」

 なんなんだ?一体。確かに大好きとは言ったけど。これじゃあ、まるで・・・

「兄としてってだけでしょ。そういう意味でなら、きっと・・・ねぇ、リアナ様、ソル様のことも好きですか?」

「ソル?ソルはその・・・す、好き?」

 フローラの問いに、一瞬吃ってしまう。好き・・・好き?

 ソルは、暗殺者で、フローラのことを好きで、フローラをいじめる私を殺す人で・・・
 私の護衛騎士で、体を張って守ってくれて、無口だけど優しくしてくれて、それで、それで・・・

「ふふっ。リアナ様、まるでソル様に恋されてるみたい」

「なっ!リアナ?リアナはソルのことを好きなのかっ?」

「え?え?えと、恋・・・?」

 シオンはなんだか顔を青くさせて私に詰め寄るし、フローラはなんだか楽しそうだし、訳がわからない。
 恋?恋だと言われても・・・
私を殺す人に、恋?

 すみません。恋愛経験のないアラサーの私には、どうすればいいかわかりません。

「ああっ!リアナっ?」

「リアナ様!」

 私は、混乱のあまり意識を手放した。
意識が途切れる瞬間、フローラといるからと少し離れていたソルの声が聞こえた気がしたー
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