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バグと魅了と聖女《リリー視点》
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おかしい!おかしい!!おかしい!!!
王宮の地下にある牢に放り込まれてから1日経った。
あの日、あの忌まわしいリアナを決定的に排除しようと決めていた。
シオン様やハロルド様、ソル様にまで大事にされているリアナは、絶対この世界のバグだ。
あの女は、嫌われ者。それが正しい世界のはずだ。
だから、みんなの目を覚まさせるために、あの女に階段から突き落とされたと言おうと思っていたのに。
危険だけど、落ち方とかちゃんと考えてたし、完璧だったはずだった。
なのに!
あの女が私の腕を取って私を振り上げるなんて!代わりにあの女が宙に浮いたのを見て、しまったと思ったけど、あの女を排除できるなら、それでいいかと思い直した。
まさか、ソル様が身を挺してリアナを守るなんて。
あまりのことに動くことができなかった私は、近くにいたハロルド様に拘束された。
そしてそのまま、王宮へと連れてこられ、牢へと放り込まれたのだ。
何度も間違いだと、私は何もしていないと叫んでも、誰もやってこない。
地下の牢は窓もなく冷たくて、固く小さなベッドの上で体を丸めて寒さを凌ぐしかない。
眠れずに過ごした翌朝ー
シオン様が現れた。
「シオン様!助けに来て下さったのですねっ!」
「何故、僕が貴様などを助けなければならないんだ?」
冷ややかな声に、体が震える。
何故って、だって私はヒロインだもの。攻略対象であるシオン様に好かれるのは当たり前じゃない!
「1国の王女に害をなそうとしたんだ。処刑されるのは当たり前だろう」
「そんなっ!私は害をなそうとなんてしていません!あ、あれはリアナ様に突き飛ばされそうになって、咄嗟に避けたら・・・」
「僕の可愛い天使がそんなことをするわけがないだろう!」
どうして?どうして!どうして!!
どうしてシオン様は私の虜にならないの?ハロルド様もそうだし、みんな私を汚いものでも見るような目で見る。
「どうして魅了の術が効かないのか、不思議のようですね」
鈴を転がすような声がして、私は現れた人物に目を見開いた。
黄金色のふわふわとした髪を揺らし、光を映した金の瞳の、確かフローラとかいう上級生だ。
いつもシオン様やリアナ達と一緒にいる優しい笑みを絶やさない彼女が、私を冷たい目で見ていた。
「シオン様、リアナ様がお探しになられてましたわ」
「わかった。後でフローラも来てくれ」
シオン様は私に目もくれず、慌てたように地下から出て行った。
その間も、フローラは黙って私を見つめている。
「あなた・・・誰・・?」
「私が誰でもどうでもいいことです。それよりも、リリー様、あなたがシオン様をはじめとする方々に禁忌とされる魅了の術をかけようとしていたこと、そのお話をしなくては」
「わ、私はそんなことしてないっ!」
どうして魅了の術のことを知ってるの?あれはゲーム内でもヒロインしか知らないことなのに。
リアナ!あの女が転生者なら知っててもおかしくない。あの女がバラしたの?
「虚偽の発言をしても無駄です。私はあなたが魅了の術を使おうとしていることに気付いたから、彼らに防御魔法をかけていたのですから」
「!?」
防御魔法?そんなのゲーム内では出てこなかった。どうなってるの?
本来ならヒロインが使うべきでない魅了の術を使ったから、バグが起こったの?
だけど、リアナがみんなに好かれてること自体がバグだから、その修正のために使おうとしたのに。
「あなたがリアナ様に害をなそうとしなければ、放置してさしあげましたのに」
「だ、だって、あの女は!」
「リアナ様は、私たちの至宝。優しい天使。あの方を守るために私は聖女の力を手に入れたのです。そして、あなたは選択を間違った」
聖女?聖女が悪役であるリアナを守る?おかしいじゃない!
絶対、バグだ!リセットしなきゃ。こんなの、ヒロインである私がこんな結末おかしい!
「あなたの1番の間違いは、自分がヒロインであると思い込んでいること。この世界のヒロインは・・・」
フローラはそこまで言うと、初めてその金の瞳に笑みを浮かべた。
「私なのですから」
王宮の地下にある牢に放り込まれてから1日経った。
あの日、あの忌まわしいリアナを決定的に排除しようと決めていた。
シオン様やハロルド様、ソル様にまで大事にされているリアナは、絶対この世界のバグだ。
あの女は、嫌われ者。それが正しい世界のはずだ。
だから、みんなの目を覚まさせるために、あの女に階段から突き落とされたと言おうと思っていたのに。
危険だけど、落ち方とかちゃんと考えてたし、完璧だったはずだった。
なのに!
あの女が私の腕を取って私を振り上げるなんて!代わりにあの女が宙に浮いたのを見て、しまったと思ったけど、あの女を排除できるなら、それでいいかと思い直した。
まさか、ソル様が身を挺してリアナを守るなんて。
あまりのことに動くことができなかった私は、近くにいたハロルド様に拘束された。
そしてそのまま、王宮へと連れてこられ、牢へと放り込まれたのだ。
何度も間違いだと、私は何もしていないと叫んでも、誰もやってこない。
地下の牢は窓もなく冷たくて、固く小さなベッドの上で体を丸めて寒さを凌ぐしかない。
眠れずに過ごした翌朝ー
シオン様が現れた。
「シオン様!助けに来て下さったのですねっ!」
「何故、僕が貴様などを助けなければならないんだ?」
冷ややかな声に、体が震える。
何故って、だって私はヒロインだもの。攻略対象であるシオン様に好かれるのは当たり前じゃない!
「1国の王女に害をなそうとしたんだ。処刑されるのは当たり前だろう」
「そんなっ!私は害をなそうとなんてしていません!あ、あれはリアナ様に突き飛ばされそうになって、咄嗟に避けたら・・・」
「僕の可愛い天使がそんなことをするわけがないだろう!」
どうして?どうして!どうして!!
どうしてシオン様は私の虜にならないの?ハロルド様もそうだし、みんな私を汚いものでも見るような目で見る。
「どうして魅了の術が効かないのか、不思議のようですね」
鈴を転がすような声がして、私は現れた人物に目を見開いた。
黄金色のふわふわとした髪を揺らし、光を映した金の瞳の、確かフローラとかいう上級生だ。
いつもシオン様やリアナ達と一緒にいる優しい笑みを絶やさない彼女が、私を冷たい目で見ていた。
「シオン様、リアナ様がお探しになられてましたわ」
「わかった。後でフローラも来てくれ」
シオン様は私に目もくれず、慌てたように地下から出て行った。
その間も、フローラは黙って私を見つめている。
「あなた・・・誰・・?」
「私が誰でもどうでもいいことです。それよりも、リリー様、あなたがシオン様をはじめとする方々に禁忌とされる魅了の術をかけようとしていたこと、そのお話をしなくては」
「わ、私はそんなことしてないっ!」
どうして魅了の術のことを知ってるの?あれはゲーム内でもヒロインしか知らないことなのに。
リアナ!あの女が転生者なら知っててもおかしくない。あの女がバラしたの?
「虚偽の発言をしても無駄です。私はあなたが魅了の術を使おうとしていることに気付いたから、彼らに防御魔法をかけていたのですから」
「!?」
防御魔法?そんなのゲーム内では出てこなかった。どうなってるの?
本来ならヒロインが使うべきでない魅了の術を使ったから、バグが起こったの?
だけど、リアナがみんなに好かれてること自体がバグだから、その修正のために使おうとしたのに。
「あなたがリアナ様に害をなそうとしなければ、放置してさしあげましたのに」
「だ、だって、あの女は!」
「リアナ様は、私たちの至宝。優しい天使。あの方を守るために私は聖女の力を手に入れたのです。そして、あなたは選択を間違った」
聖女?聖女が悪役であるリアナを守る?おかしいじゃない!
絶対、バグだ!リセットしなきゃ。こんなの、ヒロインである私がこんな結末おかしい!
「あなたの1番の間違いは、自分がヒロインであると思い込んでいること。この世界のヒロインは・・・」
フローラはそこまで言うと、初めてその金の瞳に笑みを浮かべた。
「私なのですから」
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