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幸せな居場所
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ハルト様のキスに気を失ってから・・・
ハルト様は片時も私を離さなくなった。
ええと、ご飯は自分で食べれるから、あーんはやめてほしいし、行儀が悪いから、お膝の上で食べるのはやめたいし、夜着を着てるからといって恥ずかしいから寝るのは1人で寝たい。
さすがにお風呂とトイレは1人だけど。
最初はお風呂も一緒にと言われた。冗談じゃない。
それに、リアン様の眉間の皺が怖い。
そろそろ爆発しそうで、ものすごく怖い。
私はライカ様と聖女訓練したいのに、ハルト様は私を横抱きにして膝の上に座らせ、お仕事をされている。
書類にサインするのも、部下の人から報告受けるのも、私を膝に乗せたまま。
いやいや。いいの?魔王がこれで。
いや、魔王でなくても陛下と呼ばれる人がこれでいいの?
「魔王陛下!いい加減になさって下さい!」
「何をだ?リアン」
いやいやいや。平然と言い返しているけど、分かってるでしょ?
「サクラ様には聖女訓練があります。それに、サクラ様の自由な時間を全て奪ってどうするおつもりですか?」
そうなのよね。聖女訓練はできないし、お菓子作りも読書も散歩も、何もできない。
ハルト様が散歩する時でも、常にお姫様抱っこで、ここ数日、トイレとお風呂以外歩いた覚えがない。
このままだと足が弱って、歩けなくなるかもしれないわ。
「陛下がサクラ様をお好きな事はわかりました。ですから、サクラ様を解放なさって下さい」
「サクラ、嫌なのか?」
ええ?ここでそんな顔して聞く?リアン様は嫌って言えって顔してるし、私もそろそろ解放して欲しいけど。その顔は反則なのよね。
「嫌というか、私は聖女訓練もしたいし、ライカ様とお話したり、お菓子作りしたりしたい。あとー」
「あと?」
「あと、リアン様に色々教わったりしたい。それから、ハルト様とお出かけしたり、お茶を飲んだり、もっとこの世界を知りたい」
私の言葉に、ハルト様とリアン様は目を見開く。
ハルト様は、私を絶対帰さないと言った。
実を言えば、まだ少し帰りたい気持ちはある。でも、両親もいないし、特別親しい友人がいるわけでもない。
それなら、このままこの世界で頑張ってみるのもいいかな、って思った。
ハルト様がもう帰れって言うまで、ここで、この魔王城で、聖女やってもいいかなって思ったのだ。
それに、ほんの少しだけど、キスされてからハルト様のことが気になってしまっている。
ハルト様ってイケメンだから。それに優しいし。ちょっと私に甘すぎる気もするけど。
「そうか。そうだな。サクラは自分の足で立てる女だからな」
「今は、好きになってもらう努力をなさるべきですよ。サクラ様は人気者ですから、他の誰かに攫われても知りませんよ」
「サクラは誰にも渡さない」
うん?何だか不穏なこと言ってるけど、まぁ、いいか。どうやら、聖女訓練やら何やら元通りにさせてくれるみたいだし。
私がこの先どうなるのかはわからない。
だけど、この魔王の側にいる限り、私は笑って生きていける。そんな気がした。
***end***
お読みいただきありがとうございました。また新しいお話でお会いできればと思います。
ハルト様は片時も私を離さなくなった。
ええと、ご飯は自分で食べれるから、あーんはやめてほしいし、行儀が悪いから、お膝の上で食べるのはやめたいし、夜着を着てるからといって恥ずかしいから寝るのは1人で寝たい。
さすがにお風呂とトイレは1人だけど。
最初はお風呂も一緒にと言われた。冗談じゃない。
それに、リアン様の眉間の皺が怖い。
そろそろ爆発しそうで、ものすごく怖い。
私はライカ様と聖女訓練したいのに、ハルト様は私を横抱きにして膝の上に座らせ、お仕事をされている。
書類にサインするのも、部下の人から報告受けるのも、私を膝に乗せたまま。
いやいや。いいの?魔王がこれで。
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「何をだ?リアン」
いやいやいや。平然と言い返しているけど、分かってるでしょ?
「サクラ様には聖女訓練があります。それに、サクラ様の自由な時間を全て奪ってどうするおつもりですか?」
そうなのよね。聖女訓練はできないし、お菓子作りも読書も散歩も、何もできない。
ハルト様が散歩する時でも、常にお姫様抱っこで、ここ数日、トイレとお風呂以外歩いた覚えがない。
このままだと足が弱って、歩けなくなるかもしれないわ。
「陛下がサクラ様をお好きな事はわかりました。ですから、サクラ様を解放なさって下さい」
「サクラ、嫌なのか?」
ええ?ここでそんな顔して聞く?リアン様は嫌って言えって顔してるし、私もそろそろ解放して欲しいけど。その顔は反則なのよね。
「嫌というか、私は聖女訓練もしたいし、ライカ様とお話したり、お菓子作りしたりしたい。あとー」
「あと?」
「あと、リアン様に色々教わったりしたい。それから、ハルト様とお出かけしたり、お茶を飲んだり、もっとこの世界を知りたい」
私の言葉に、ハルト様とリアン様は目を見開く。
ハルト様は、私を絶対帰さないと言った。
実を言えば、まだ少し帰りたい気持ちはある。でも、両親もいないし、特別親しい友人がいるわけでもない。
それなら、このままこの世界で頑張ってみるのもいいかな、って思った。
ハルト様がもう帰れって言うまで、ここで、この魔王城で、聖女やってもいいかなって思ったのだ。
それに、ほんの少しだけど、キスされてからハルト様のことが気になってしまっている。
ハルト様ってイケメンだから。それに優しいし。ちょっと私に甘すぎる気もするけど。
「そうか。そうだな。サクラは自分の足で立てる女だからな」
「今は、好きになってもらう努力をなさるべきですよ。サクラ様は人気者ですから、他の誰かに攫われても知りませんよ」
「サクラは誰にも渡さない」
うん?何だか不穏なこと言ってるけど、まぁ、いいか。どうやら、聖女訓練やら何やら元通りにさせてくれるみたいだし。
私がこの先どうなるのかはわからない。
だけど、この魔王の側にいる限り、私は笑って生きていける。そんな気がした。
***end***
お読みいただきありがとうございました。また新しいお話でお会いできればと思います。
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