聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな

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真実

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「リアンの奴・・・」

 ハルト様の呟きに顔を上げた。リアン様がどうかした?

「どうしたの?」

「あの馬鹿王子を国王陛下に殺せと言っている」

「は?」

 殺せ?どうして?死ぬってそんな簡単なことじゃないよ?
 あの馬鹿王子もだけど、みんなどうしてそんな簡単に滅ぼせだとか殺すだとか言うの?

「どうして?」

「多分、サクラに害を為そうとしたからだ。あれは馬鹿だから、同じことを繰り返すだろう。サクラを守るためにもそういう決断になったのだろう」

「私は・・・守ってくれたのはありがたいし嬉しいけど、私のせいで誰かに死んで欲しくない」

 私はあの馬鹿のことは嫌いだ。
出来ることなら2度と会いたくない。だけど、だからといって死ねばいいとは思わない。
 生きていなければやり直せない。過ちを悔やむことも、やり直すことも、死んでしまってはできない。

「サクラの気持ちはわからないでもない。だが、あれはただの平民ではない。王族だ。王子であるあの馬鹿の言動は国の衰退や他国との揉め事になりかねない」

 ハルト様は、噛んで含めるように私に話して聞かせる。

 言ってることは分かる。わかるけど、どうすれば死なせずに済むの?
 王子だから駄目なんだよね。発言で揉め事になるんだよね。それなら。

「平民に落とすとかではだめなの?」

「あれはそんなことをしたら絶対逆恨みするぞ。僕は、サクラにほんの少しの危険も近づけたくない」

 ずるい。そんな言い方されたら、嫌だと言えない。
 だけど、父親に息子を殺せなんて。

「国王はあの馬鹿を甘やかしすぎたんだ。元々愚か者で、簡単に人にまつりあげられる。その挙句、自身の兄を魔力の暴走で殺しかけた。なのに国王は瀕死の兄よりあの馬鹿をとったんだ」

「そんな・・・」

「兄は父親である国王も、弟であるあの馬鹿も、自分には関係ないものと判断した。父親に捨てられたなどと傷ついたわけではない。むしろ兄の方が見限ったんだ」

 その兄って・・・
もしかして、ハルト様?リアン様?

「その、兄って・・・」

「リアンだ。リアンは10歳の時にあの馬鹿が暴走させた魔法で瀕死の怪我をした。リアンの命を繋ぐためには魔王である僕の血を入れるしかなかった。そのせいでリアンは魔族になったんだ」

「ハルト様は、リアン様を知っていたの?」

「従兄弟だ。国王の妹が僕の母だ。だが、僕が魔王として生まれたために、あの国王は妹である母を処刑し、僕を魔の森に捨てた。僕を捨てたことは仕方がない。だけど、母を殺したことを僕は許さない。だから僕はリアンを止めるつもりはない」

 ハルト様のお母さんは国王によって殺されてたの?そして、その国王が甘やかしたせいで、リアン様は死にかけたの?

 そんなの、止められない。
リアン様が手を下すのでなければ、私は止めれない。だってあの王子は何ひとつ学んでないのだから。

 ハルト様とリアン様の悲しみに、胸が潰れそうだった。
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