聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな

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馬鹿と遭遇しました

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 買い物を終えて、帰ろうと商会を出たところで、見たくもないヤツと顔を合わせてしまった。

 なんで馬鹿王子がこんなところにいるの?

「そ、其方、どこの娘だ?」

 顔を赤らめ、話しかけてくる王子・・・いやもう馬鹿でいいかな、馬鹿を無視して通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。

 何すんの!痴漢って叫ぶよ?

「離して下さい」

「なら、名を名乗れ。僕はこの国の王子だぞ!」

「名乗らなくていいですよ」

 耳元でライカ様が小声でそう言ってくれる。うん。私もこんな馬鹿に名前で呼ばれたくない。

「離して下さいと言っています!聞こえませんか?」

「名を名乗れと言っているだろう!いや、名乗らぬままでもいいか。来いっ!」

 そのまま連れ去られそうになって、ライカ様に手を伸ばす。

「いやっ!人攫いっ!!」

「誰が人攫いだっ!僕はこの国の王子だと言っているだろうが!」

「王子だと言うのなら、やっていいことと悪いことの区別くらい付けたらどうですか?」

 突然聞こえた声に、目の前の王子がびくりと震える。

「貴様は・・・」

「さて、その汚い手を退けてもらいましょうか」

 リアン様が指を鳴らすと、私を掴んでいた王子の手が離れた。
 私はそのままライカ様に抱きとめられる。

「貴様」

「一国の王子ともあろう者が、なんて言葉遣いですか?低脳極まりない。それから、この方は我が魔王陛下のご寵姫。あなた如きが触れていい相手ではないのですよ」

 え?ご寵姫って。
ああ。そう言えば諦めるだろうってことなのかな?諦めるかなぁ。だってこういう場合、馬鹿って言うこと決まってるというか・・・

「そうかっ!魔王に囚われているんだな?必ず僕が助け出してやる!!其方の美しさは僕の隣にあるべきなんだ!」

 ほら、言った。
なんで馬鹿ってこう自分が正しいと思うのかな。
 そして、あなたが言った美しいとかいう私は、あなたがちんちくりんと言った聖女なのになぁ。
 絶対、同一人物ってわかったら、そんなことは言ってないって言うんだろうなぁ。

「リアン様、帰りたいです」

 もう、馬鹿を見てるの疲れちゃったから、帰りたい。話の通じない人と話すのって疲れる。
 乙女ゲームの中の悪役令嬢って大変だったろうなぁ。電波系のヒロインや自分を裏切っておいて、断罪してくる馬鹿相手をしなきゃいけなくて。

 えー。私って悪役令嬢の立場なのかなぁ。電波系ヒロインやるよりはいいけど、こういうのに絡まれるのって、疲れるから嫌だなぁ。生産性のない疲れって、本当やだ。
 話聞いて欲しいなら、報酬くれないかな。そしたら、仕事と割り切れる・・・と思う。

 私がそう考えていたら、リアン様が吹き出した。あ。考えが筒抜けなの忘れてた。

「とても面白かったので、今回はお言葉遣いに関しては不問にしましょうか。さて、それでは帰りますよ」

 そう言って、リアン様の足元に現れた転移陣で私たちは魔王城に転移した。
 もちろん、馬鹿はサクッと放置だけど、きっとまた来るんだろうなぁ。
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