聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな

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側近様はご機嫌斜め?

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「なんかリアン様、ご機嫌悪くないですか?」

 ハルト様にクッキーを差し出しながら尋ねてみる。

「これは?」

「クッキーです。聖女訓練、今日から半日になったんで、ちょっと気分転換にお菓子作りを・・・あ。甘い物嫌いでした?」

「・・・いや。サクラの手作りか?」

 ハルト様がおずおずとクッキーに手を伸ばす。そんな不審そうにしなくても、毒なんか入れてないし、お菓子作りはそれなりに得意な方なんだけど。

「甘いの苦手なら、そっちの丸いのが甘さ控えめです。ちょっと塩効かせてるんですよ」

「甘いのは平気だが。それで、リアンがどうした?」

「ああ。調理場を借りたくて、お願いに行ったんですけど」

「何か言われたのか?」

「いえ。対応は普通なんだけど、なんだか不機嫌な気がするというか。私の気のせいかもしれないですけど」

 でも、私は人の機嫌とかに敏感な方なのよね。こう、空気感でわかるというか。
 ハルト様は塩クッキーを口に運びながら・・・あ、気に入ったのか、また1枚取った!

「口にあいました?」

「この塩のは美味い。それでリアンのことだが。先日、マクスウェルの王宮に馬鹿がバカなことをしないように釘をさしに行った。そのせいだろう」

 馬鹿がバカなこと・・・
あの、私をちんちくりんと言った王子のことよね?馬鹿って。
 釘をさしに行ってくれたんだ。
私はこの魔王城から出ないから、多分危険はないと思うのに、わざわざ・・・
魔族が王宮とかに行っても大丈夫なのかな。

「王宮に行っても大丈夫だったんですか?」

「うん?ああ、それは大丈夫だ。単にリアンが王宮に行くのが嫌いなだけだから」

 嫌いなのに、わざわざ行ってくれたんだ。なんか本当に魔族の人の方が、あの王宮で出会った人たちの何倍も優しい。
 あの魔道士の人たちだって、謝ってはくれたけど、結局は助けてくれなかった。

 助けてくれたのは、魔王。行く当てのない私を連れ帰ってくれたのも魔王。
 温かい食事と暖かい寝床を与えてくれて、聖女として自分の身を守れるようにしてくれたのは、魔王の側近。私を捨てた馬鹿が何かしないように、嫌いな王宮に出向いて釘を刺してくれたのも魔王の側近。

 本当に・・・
どっちが正義だって?私にとっては魔王や魔族の人たちの方がよっぽど正しい。
 何が悲しくて、私を救ってくれた人たちを滅ぼさなきゃならないの?

 私が聖女だと言うのなら。
私はこの人たちを守るために聖女になりたい。
 少なくとも、あの王子だけは守ってやるもんか。
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