聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな

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名前呼びを強請られました

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「それで、聖女様はー」

「あの!その聖女様というのやめてもらえませんか?私、聖女とか言われても全然分からないし」

「この世界では、お名前を呼ぶことは懇意にしているということになります。お嫌ではありませんか?」

 あー。そういえば、乙女ゲームとかで『○□様』とか馴れ馴れしく呼んで、悪役令嬢とかに嗜められたりしていたわね、ヒロインが。
 日本で言うところの、名前を呼び捨てにするみたいなものなのかな。確かに、よく知らない人に『桜』って名前を呼び捨てにされたら気分悪いけど・・・

「聖女って言われるよりいいです」

「かしこまりました。それでは、サクラ様とお呼びしましょう」

「ありがとうございます。リアンさ・・・ま」

 私が様呼びされてるのに、さんっていうのは失礼だよね。様呼びって慣れない。言い間違えそう。

「リアンで結構ですよ?呼び慣れないのでしょう?」

「すみません。私は庶民・・・いわゆるこの世界で言うところの平民なので、様付けとかありえなくて」

 社会人になって、偉い人とかと接するようになれば慣れてたかもしれないけど、私は学校とバイト先しか知らないから、店長や先輩を様付けで呼ぶようなことだってなかったし・・・

「気にされることはありません。お言葉遣いに関しても追々お勉強していただきますが、私は魔王陛下の側近ですので、呼び捨てで構いません」

 リアンさんはそう優しく言ってくれたけど、何か不穏な言葉が混じっていたような。
 勉強?え?言葉遣い、直されるの?

「さて、それでは、聖女という存在について説明させていただきます。サクラ様、わからなかったり理解できなかった時は、その都度お聞き下さい」

「は、はいっ」

 私は慌てて、肯定の返答をした。なんだか、リアンさんが鬼教師に見える。
 すごく言葉は丁寧なのに、逆らってはいけないと本能が叫んでいる。

「リアン。聖女、いやサクラをあまりいじめるな」

「失礼ですね。いじめてなどいません」

 魔王さんの言葉に、リアンさんが不服そうで、その様子に思わず、ふふっと笑ってしまった。

「笑うと可愛いな」

「え?魔王さん、何か言いました?」

「いや。その魔王さんというのは・・・ハルトでいい」

 何か魔王さんが言った気がして聞き返したら、名前で呼べと言われたけどー
 いや、無理でしょ。陛下って呼ばれてたよね?そんな偉い人、名前呼びなんかできないよ。まぁ、リアンさんも私からしたら絶対偉い人なんだろうな。やっぱり様付けした方がいいのかも。

「サクラ様?陛下がお望みのようですし、サクラ様さえ良ければハルト様とお呼び下さい」

 ゔゔっ。リアンさん・・・リアン様にまで言われたら、呼ばないわけにもいかないじゃない。
 これからしばらくお世話になるんだし。
ん?なるんだよね?連れてこられたし、リアン様の話だと、お勉強もさせられるみたいだし。

 ハルト様かぁ。いいのかなぁ。
馴れ馴れしいって他の人に思われたらやだなぁ。

 私はそんなことを考えながら、リアン様(ああっ!言いにくい!)から聖女の説明を受けることとなった。

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