聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな

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魔王と遭遇しました

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 どこへ行けばいいかわからないけど、とりあえずお城から離れることにした。
 あの王子と2度と顔を合わせたくない。

 白いローブを羽織って、トボトボと歩いてると、あの王子の声がした。

「召喚された聖女がこんなところで何をしている?」

「あなたが追い出したんじゃない!」

 ムッとして言い返して振り返ると、そこに立っていたのは、あの王子と同じ顔なんだけど、人だった。

 だって、あの王子は金髪に金の瞳をしていたのに、目の前のこの人は、黒髪を1つに束ね、紅い瞳をしている。

 何これ?まるで最近流行りのライトノベルで見る魔王みたいな容姿。

追い出したりしていないが。そうか。追い出したのか」

「あ、あなた、誰?」

「間違いなく聖女のようだが、何故追い出したんだ?」

 いや!聞いてるのは私!なんだか聞かなくても魔王のような気がするけど、一応聞いときたいの!

「ちんちくりんだから、聖女じゃないって言われたわ」

 自分で言って、悲しくなってきたわ。
そりゃ、あの王子見た目は良かったけど。あの王子に比べりゃ、ちんちくりんかもしれないけど。勝手に召喚しといて聖女じゃないって、性格最悪でしょ!

「はははっ!アイツは本当に馬鹿だな。こんな偽りの姿に惑わされるとは」

 魔王(私の中で決定したわ)が楽しそうに笑う。偽りの姿・・・

 そう。今の私は、真っ黒に染めた髪をキッチリと三つ編みにし、漫画にしか出てこないような瓶底眼鏡をかけている。

「魔王である僕の前で偽りの姿でいるのは許せないな」

 やっぱり魔王なの?
でもあの王子と同じ年齢に見えるけど。いや、年齢だけじゃなく、顔も同じに見えるけど。

 自称魔王がパチン!と指を鳴らすと、私の三つ編みが解け、瓶底眼鏡が消失した。

「えっ?ちょっと!!」

「この姿ならアイツも追い出したりしなかっただろうに」

「ちょっと!眼鏡返してよ、高かったのよ、アレ。それに、髪色!毛染めだって安くないのよっ!」

 私は相手が魔王ということも忘れて、文句を言った。相手が目を丸くしたのを見て、しまった!と思ったが、言ってしまったものは仕方ない。

 私の髪色は金色に近い茶になっていた。元々色素の薄い私の髪は染めていると思われがちで、学校では一応証明書を提出していたが、一々説明するのも面倒なので黒に染めていたのだ。

 そしてー

「右が金で左が紫か。見事だな」

 顎を持ち上げられ、瞳を覗き込まれる。
そうなのだ。私はオッドアイで、日本人とは思えない目の色なのだ。
 それゆえに、瓶底眼鏡で隠していたのだが。

 この容姿は奇異の目で見られる。だから、髪を染め、目の色を隠していたのに。
 目の前の魔王には気にするようなことでないみたいだった。
 確かに、さっきの王子も金の瞳だったし、魔王に至っては深紅だ。

「あ!そうだわ。返還の指輪!指輪貸してください!」

 そうだ。この人が魔王だというのなら、返還の指輪を借りれば、元の世界に帰れる!

「ん?ああ。だが、王宮に入れないのではないか?儀はあそこでしかできないぞ。それにー」

「それに?」

「戻ったところで、また召喚の儀をされたらこちらに呼ばれるぞ」

 は?なにそれ?それってイタチごっこってやつになるんじゃ。

「今の姿なら、アイツは2度と手放さないだろうな」

「知ってるんですか?あの王子のこと」

「ああ。よく知っている。アイツに聖女を囲われるのは気に入らないな。よし!来い」

 勝手に納得した魔王は、私の手を掴むと、そのまま魔法陣を描いて足を踏み入れた。

 ちょっと、待って!
そう告げる間もなく、私は魔王に連れ去られることとなった。


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