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私はヒロインが大嫌いです

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 あの後ー
レオンハルト殿下はがっくりうなだれたまま、シルヴィア様に連れられて王宮へと帰って行きました。

 帰り際の、シルヴィア様の笑みが・・・はっきり言います!怖かった!!

 あれはヤバいやつです。次に会った時に、ビシバシと淑女教育を受けなくてはいけないやつです。

 怖いですが、アレは逃げてはいけないやつだと、本能が言っています。逃げたら、もっと恐ろしいことになると。
 仕方ありません。次に会う時までに、何かご機嫌取りになることを考えましょう。
 これは、経験したことですが、真面目に取り組まなくては余計に火に油を注いでしまいますが、ご機嫌取りが成功すれば、多少は見逃してもらえます。

 何がいいでしょうか。以前はシルヴィア様の大好きなケーキを根回しして手に入れたのですが。同じ手は使えません。

 私が部屋のソファーに腰掛けたまま、悶々と考えていると、アルク兄様がやってきました。
 ああ。もちろん、ノックはされましたし、私が「どうぞ」と答えたのを聞いてから入室されましたよ。

「何か悩み事か?」

「悩み事というほどのものではないですけど。シルヴィア様のお怒りを買ってしまいましたので」

 私がそう言うと、アルク兄様は苦笑いをされました。

「あんなことを口にするからだ」

「しているつもりはなかったのですもの。レオンハルト殿下がいけないのですわ」

 そうですよ。あの馬鹿が、わけのわからないことを言いに来たりするから、つい本音が漏れてしまったんです。

「そうだ。新しい品種の薔薇が咲きそうだと聞いたぞ。それを送ったらどうだ?」

 新品種ですか。でも、それって王家に献上するものですよね?

 ジェラルド公爵家は、お母様が結婚されてから、庭には多くの薔薇が植えられ、庭師の方がお手入れと品種改良に取り組んでいます。どうやら、その品種改良が成功しそうなようですが、その場合、王家に献上するのが習わしです。

「王家にも献上はするが、我が家の薔薇はローズのためにあるものだ。ローズが贈りたい相手に贈ればいい」

 本当に・・・

 ジェラルド公爵家の人々は、私に甘いんですから。

 こんなに愛されているのに、ゲーム内のローズ・ジェラルドはどうして、自分は不幸だと思っていたんでしょうか。
 不幸だから幸せになりたいと、攻略対象たちと恋をしていくんですが、あなたのその行動で、不幸になる人がいることをわかっているのかと問いただしたいですね。

 改めて思います。
やっぱり私は、『薔薇の乙女は月に恋われる』のヒロインは大嫌いです。








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