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ホリック公爵家の行い
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クリストフお兄様とストラルくんは、精力的に動いているようだった。
逐一、調査結果がお祖母様のところに届くのである。
「・・・」
報告書を見せてもらうと、思わず絶句した。
ホリック公爵は、明確な犯罪は犯していない。
平民の使用人を、使用人には非がないのに解雇した。また、解雇できない者に関しては、賃金を極端に下げた。
下位貴族の営む店が気に入らないからと、隣に同じ系統の店を建て、客を横取りして閉店に追い込んだ。
子供か!
やってることは我儘な子供と同じだ。
でも使用人の雇用に関しては、その家の主人に権限があるから、褒められたことではないけど、罪には問えない。
店に関しても、相手の店に嫌がらせをすればそれは罪になるけど、単に隣に同じ系統の店を建てたからといって罪にはならない。
いくら隣より値段を安くして客を横取りしても、単に利益が取れないだけで、客は喜んでいるんだから、罪にはならない。
ホリック公爵は、そういうちっちゃな、嫌がらせと言われる程度のことを相当数行っていた。
そのため、下位貴族や平民の多くには嫌われているようだけど、決定的な罪がないようだ。
さすが公爵家当主だと、決定的な罪を犯していないことを褒めればいいのか。
それとも、ちっちゃいと呆れればいいのか。
「ん?」
見覚えのある名前に、紙を捲る手が止まった。
「ベリル・・・?」
ホリック公爵家が隣に店を構えて、閉店の危機に追い込まれかけている店の中に、ベリル男爵家の名前があった。
「ヒルデ、これって」
「母の・・・母の夢の店です。母は結婚前はお針子の仕事をしていて、いつか自分の作った物を売るお店を持つのが夢だったのです」
「素敵な夢ね」
「でも・・・隣にホリック公爵家の息のかかったお店が出来てから・・・サリフィル様のご友人たちが色々と気遣ってくださったのですけれど、もう無理かもしれませんね」
確かに報告書では、経営はギリギリのラインで、あまり裕福ではないベリル男爵家としては赤字になれば切らずにはいられないだろう。
「お祖母様」
「セニヨン公爵家が介入することは簡単よ。うちから資金援助をすることも出来る。でもそれでは、根本的な解決には至らないの。ホリック様が出奔してヒルデと一緒になったとして、その怒りの矛先がベリル男爵家に向かったら?」
「・・・」
「そのためにクリストフたちは動いているのよ。ホリック公爵家のことは、私たちが手を尽くすから、ローズは自分のやるべきことをやりなさい」
「・・・はい」
私の、やるべきこと、か。
逐一、調査結果がお祖母様のところに届くのである。
「・・・」
報告書を見せてもらうと、思わず絶句した。
ホリック公爵は、明確な犯罪は犯していない。
平民の使用人を、使用人には非がないのに解雇した。また、解雇できない者に関しては、賃金を極端に下げた。
下位貴族の営む店が気に入らないからと、隣に同じ系統の店を建て、客を横取りして閉店に追い込んだ。
子供か!
やってることは我儘な子供と同じだ。
でも使用人の雇用に関しては、その家の主人に権限があるから、褒められたことではないけど、罪には問えない。
店に関しても、相手の店に嫌がらせをすればそれは罪になるけど、単に隣に同じ系統の店を建てたからといって罪にはならない。
いくら隣より値段を安くして客を横取りしても、単に利益が取れないだけで、客は喜んでいるんだから、罪にはならない。
ホリック公爵は、そういうちっちゃな、嫌がらせと言われる程度のことを相当数行っていた。
そのため、下位貴族や平民の多くには嫌われているようだけど、決定的な罪がないようだ。
さすが公爵家当主だと、決定的な罪を犯していないことを褒めればいいのか。
それとも、ちっちゃいと呆れればいいのか。
「ん?」
見覚えのある名前に、紙を捲る手が止まった。
「ベリル・・・?」
ホリック公爵家が隣に店を構えて、閉店の危機に追い込まれかけている店の中に、ベリル男爵家の名前があった。
「ヒルデ、これって」
「母の・・・母の夢の店です。母は結婚前はお針子の仕事をしていて、いつか自分の作った物を売るお店を持つのが夢だったのです」
「素敵な夢ね」
「でも・・・隣にホリック公爵家の息のかかったお店が出来てから・・・サリフィル様のご友人たちが色々と気遣ってくださったのですけれど、もう無理かもしれませんね」
確かに報告書では、経営はギリギリのラインで、あまり裕福ではないベリル男爵家としては赤字になれば切らずにはいられないだろう。
「お祖母様」
「セニヨン公爵家が介入することは簡単よ。うちから資金援助をすることも出来る。でもそれでは、根本的な解決には至らないの。ホリック様が出奔してヒルデと一緒になったとして、その怒りの矛先がベリル男爵家に向かったら?」
「・・・」
「そのためにクリストフたちは動いているのよ。ホリック公爵家のことは、私たちが手を尽くすから、ローズは自分のやるべきことをやりなさい」
「・・・はい」
私の、やるべきこと、か。
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