87 / 107
義務と覚悟
しおりを挟む
ロイドは、証拠を持ってザハード王国へと戻った。
その後、レーチェル様からいただいたお手紙には、タチアナの処罰について書かれていた。
ロイドは、処罰の後処理に忙しいらしい。
レーチェル様のお手紙には、サリフィルとヒルデの婚約の成就、私の今後の安定が身定まるまで、私との偽婚約は継続したいとのロイドの意思が書かれていた。
国王陛下たちも、何よりラーナがそう望んでいてくれているらしい。
確かに、お祖母様の保護下にいるうちは大丈夫だろうけど、そこから外れたらレオナルドが私を攫って愛妾にするかもしれない。
今はまだ子供だから、そこまで考えはしなくても、この先もそうだとは限らない。
何しろ、婚約者のフローレンス様が婚姻できるのは十年も先なんだから。
ああ、先日お誕生日を迎えられたと聞いたから九年か。
どちらにしろ先の長い話だ。
私たちより三歳年上のリリーシアとなら、レオナルドが成人さえすればすぐに婚姻できたけど、それもレオナルドの不誠実な態度で不可能になった。
他に好きな人がいる。
それは仕方のないことだと思う。人の気持ちは、簡単にどうにもならない。
まぁ、そういう意味では私がレオナルドを好きにならないこと、理解してくれてもいいと思うんだけど。
自分のことと人のことは別なのかしらね。
そして、これが大事なのだけど。
レオナルドは王族なのだ。しかもアザリウム王国唯一の嫡子。
毎日、美味しいものを食べ、綺麗な服を着て、暖かいベッドで眠って。
人の世話になり、服を着るのも湯浴みをするのも、誰かの手で。
それだけの利を受けているのだから、政略結婚という義務を拒むのは間違っている。
ロイドのように、サリフィルのように、愛する人を選ぶのなら、その地位も権利も返還して、厳しいと思われる道を選択するべきなのだ。
ロイドの場合は、弟殿下もレーチェル様も、それから国王陛下たちもロイドが王位を継ぐのが良いと、王太子妃になるラーナさえ頑張れるというのなら、と認めてくれたからそのまま王太子になるけれど。
それでも、陰でラーナにキツくあたる人間もいるだろう。
子爵令嬢でしかないラーナは、現在レーチェル様の侍女として働きながら、高位貴族や王族と同じ教育を受けているけど、それはすごく大変なことだと思う。
そんなラーナのアフターケアをするのも、ロイドの義務だ。
それを義務と思わず権利だと思ってやれる人間でなければ、これから先あの二人の未来は険しいものになる。
レオナルドにそんな覚悟はないと思う。
覚悟がないのなら、国王陛下のいう通り、政略結婚をしてその相手を尊敬し慈しむべきなのよ。
その後、レーチェル様からいただいたお手紙には、タチアナの処罰について書かれていた。
ロイドは、処罰の後処理に忙しいらしい。
レーチェル様のお手紙には、サリフィルとヒルデの婚約の成就、私の今後の安定が身定まるまで、私との偽婚約は継続したいとのロイドの意思が書かれていた。
国王陛下たちも、何よりラーナがそう望んでいてくれているらしい。
確かに、お祖母様の保護下にいるうちは大丈夫だろうけど、そこから外れたらレオナルドが私を攫って愛妾にするかもしれない。
今はまだ子供だから、そこまで考えはしなくても、この先もそうだとは限らない。
何しろ、婚約者のフローレンス様が婚姻できるのは十年も先なんだから。
ああ、先日お誕生日を迎えられたと聞いたから九年か。
どちらにしろ先の長い話だ。
私たちより三歳年上のリリーシアとなら、レオナルドが成人さえすればすぐに婚姻できたけど、それもレオナルドの不誠実な態度で不可能になった。
他に好きな人がいる。
それは仕方のないことだと思う。人の気持ちは、簡単にどうにもならない。
まぁ、そういう意味では私がレオナルドを好きにならないこと、理解してくれてもいいと思うんだけど。
自分のことと人のことは別なのかしらね。
そして、これが大事なのだけど。
レオナルドは王族なのだ。しかもアザリウム王国唯一の嫡子。
毎日、美味しいものを食べ、綺麗な服を着て、暖かいベッドで眠って。
人の世話になり、服を着るのも湯浴みをするのも、誰かの手で。
それだけの利を受けているのだから、政略結婚という義務を拒むのは間違っている。
ロイドのように、サリフィルのように、愛する人を選ぶのなら、その地位も権利も返還して、厳しいと思われる道を選択するべきなのだ。
ロイドの場合は、弟殿下もレーチェル様も、それから国王陛下たちもロイドが王位を継ぐのが良いと、王太子妃になるラーナさえ頑張れるというのなら、と認めてくれたからそのまま王太子になるけれど。
それでも、陰でラーナにキツくあたる人間もいるだろう。
子爵令嬢でしかないラーナは、現在レーチェル様の侍女として働きながら、高位貴族や王族と同じ教育を受けているけど、それはすごく大変なことだと思う。
そんなラーナのアフターケアをするのも、ロイドの義務だ。
それを義務と思わず権利だと思ってやれる人間でなければ、これから先あの二人の未来は険しいものになる。
レオナルドにそんな覚悟はないと思う。
覚悟がないのなら、国王陛下のいう通り、政略結婚をしてその相手を尊敬し慈しむべきなのよ。
24
お気に入りに追加
438
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう
冬月光輝
恋愛
ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。
前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。
彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。
それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。
“男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。
89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる