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謁見
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「お元気そうで何よりです、伯母上」
お祖母様と共に、国王陛下との謁見に臨む。
国王陛下は謁見の間ではなく、執務室で会ってくださった。
「セルジオも元気そうね。今日は時間を取ってくれてありがとう」
「いえ、多分おいでになると思ってましたから」
「姪孫とローズマリアの婚約についてだけど、ローズマリアから話があるそうなの。ローズ、お話しなさい」
「はっ、はい!お祖母様」
私はガチガチに緊張していた。
公爵令嬢とはいえ、国王陛下と直接話をする機会など、普通はない。
国王陛下は優しい人だ。
少なくともゲームの中では、レオナルドの婚約者だったローズマリアに優しかった。
でも最後には聖女であるリリーシアを得るためにローズマリアを切り捨てた。
それは為政者として、正しいことだったのかもしれないけど、オズワルドの両親に愛されなかったローズマリアにとって、理想の優しい父親だったのだと思う。
もちろん、ゲームの陛下と目の前の国王陛下が同一だとは言わないけど、でも王命に近い形で婚約を申しつけられて、やっぱりどこか落胆したところがあった。
「ローズマリア・セニヨン嬢。申してみよ」
「はい。あの・・・失礼ながら申し上げます。王太子殿下との婚約は・・・お断りいたします。その・・・私の片想いですが、想う方がおります。も、申し訳ありませんが・・・」
「ふむ。しかし、公爵令嬢の其方が婚約者もいない状態なのに、他の令嬢に婚約を持っていくわけにもいかんしな」
国王陛下は、顎を撫でながらそうおっしゃった。
分かっている。
レオナルドと同い年の私、三歳年上のリリーシア、そして五歳年下の公爵令嬢、この三人しか公爵家に令嬢はいない。
公爵家に未婚でしかも婚約者のいない問題のない令嬢がいるのに、侯爵家に婚約を持っていくわけにはいかない。
基本的に五家の中から選ぶことになっているのだ。
公爵家に見合う令嬢がいない場合は、次点の侯爵家から選び、五家のうちのどこかの養女となることになっている。
「レグルス公爵家のご令嬢は、まだ婚約者は決まっていなかったでしょう?」
「しかし、レグルスのご令嬢はレオナルドの五歳年下。それにレオナルドは以前からセニヨン公爵令嬢を慕っているようですし」
「私も姪孫の気持ちは尊重してあげたいけれどね。貴方も親なら、私が孫のローズマリアの気持ちを大切にしたい気持ちを分かってくれるかしら。それから、ローズマリア以外のご令嬢を選びやすいように、提案があるわ」
そう言ってお祖母様はにっこりと笑った。
「セニヨン公爵家は侯爵か伯爵に降爵するから、レオナルドに見合う年頃のご令嬢のいる侯爵家を陞爵しなさい」
お祖母様と共に、国王陛下との謁見に臨む。
国王陛下は謁見の間ではなく、執務室で会ってくださった。
「セルジオも元気そうね。今日は時間を取ってくれてありがとう」
「いえ、多分おいでになると思ってましたから」
「姪孫とローズマリアの婚約についてだけど、ローズマリアから話があるそうなの。ローズ、お話しなさい」
「はっ、はい!お祖母様」
私はガチガチに緊張していた。
公爵令嬢とはいえ、国王陛下と直接話をする機会など、普通はない。
国王陛下は優しい人だ。
少なくともゲームの中では、レオナルドの婚約者だったローズマリアに優しかった。
でも最後には聖女であるリリーシアを得るためにローズマリアを切り捨てた。
それは為政者として、正しいことだったのかもしれないけど、オズワルドの両親に愛されなかったローズマリアにとって、理想の優しい父親だったのだと思う。
もちろん、ゲームの陛下と目の前の国王陛下が同一だとは言わないけど、でも王命に近い形で婚約を申しつけられて、やっぱりどこか落胆したところがあった。
「ローズマリア・セニヨン嬢。申してみよ」
「はい。あの・・・失礼ながら申し上げます。王太子殿下との婚約は・・・お断りいたします。その・・・私の片想いですが、想う方がおります。も、申し訳ありませんが・・・」
「ふむ。しかし、公爵令嬢の其方が婚約者もいない状態なのに、他の令嬢に婚約を持っていくわけにもいかんしな」
国王陛下は、顎を撫でながらそうおっしゃった。
分かっている。
レオナルドと同い年の私、三歳年上のリリーシア、そして五歳年下の公爵令嬢、この三人しか公爵家に令嬢はいない。
公爵家に未婚でしかも婚約者のいない問題のない令嬢がいるのに、侯爵家に婚約を持っていくわけにはいかない。
基本的に五家の中から選ぶことになっているのだ。
公爵家に見合う令嬢がいない場合は、次点の侯爵家から選び、五家のうちのどこかの養女となることになっている。
「レグルス公爵家のご令嬢は、まだ婚約者は決まっていなかったでしょう?」
「しかし、レグルスのご令嬢はレオナルドの五歳年下。それにレオナルドは以前からセニヨン公爵令嬢を慕っているようですし」
「私も姪孫の気持ちは尊重してあげたいけれどね。貴方も親なら、私が孫のローズマリアの気持ちを大切にしたい気持ちを分かってくれるかしら。それから、ローズマリア以外のご令嬢を選びやすいように、提案があるわ」
そう言ってお祖母様はにっこりと笑った。
「セニヨン公爵家は侯爵か伯爵に降爵するから、レオナルドに見合う年頃のご令嬢のいる侯爵家を陞爵しなさい」
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