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王女殿下の覚悟
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「わたしはそのセーラ様に瓜二つだそうですわ」
レーチェル王女の言葉に、唖然としてお兄様を振り返る。
お兄様はジッとレーチェル王女を見つめたまま、視線を外さない。
「まさか、亡くなった方にそっくりだから、レーチェル王女を好きになったと?そんな失礼な!いくら容姿が似てらしてもレーチェル様と幼馴染は別人ですのに」
「それは、セニヨン様もご理解されていると思います。ただ、あまりに似過ぎていて、感情の整理が出来ないようなのです。私は・・・セニヨン様のその動揺につけ込むことにしました」
「は?」
「ふふっ。ローズマリア様、お忘れですか?私がセニヨン様を好きなのです。セニヨン様が私に幼馴染の姿を見ているのなら、それにつけ込んで婚約者になり、時間をかけて幼馴染の思い出に私を上書きしていきますわ」
にっこりと微笑むレーチェル王女に、ポカン!としてしまう。
私なんかより何倍も強かだし、しっかりしている。
え?私、完全に負けてるんだけど。
「レーチェル様は、それでよろしいんですか?」
「もちろん、私自身を好きになっていただきたいと思います。でも、逆に考えれば私は有利だと思うんです。そこまで想っていた方と容姿が似ていることで、セニヨン様は私を望んで下さいました。それは、政略結婚の相手より有利だと思うんです」
「でも、その幼馴染はレーチェル様とは違う人間です」
「ええ。でも、五歳までの記憶しかない方です。その方が例えば今のセニヨン様の年齢まで生きてらしたなら、その思い出を書き換えるのは難しいかもしれません。でも、セニヨン様には申し訳ありませんけど、八歳のその方も、十歳のその方も、セニヨン様は知りません。セニヨン様が見るのは、八歳の私、十歳の私です。もちろん、すぐに別人として見ることは難しいでしょう。私は身代わりかもしれません。ですが、ホリック様のこともありますから、時間は少なくとも二年はあります。焦らず頑張りますわ」
本気で・・・
負けてると思うし、レーチェル様を尊敬する。
私は・・・
リリーシアとレオナルドに裏切られたことで、勝手に失望して魔王になって、そして二人に殺されてしまうって、勝手に思って二人から逃げ出した。
あれはあくまでも、前世のゲームの中の出来事なのに。
現に、レオナルドは私に婚約を申し込んできたのに。
私はレオナルドのことを嫌いだけど、それはゲームの記憶があるから。
リリーシアだって、聖女になっていないのに。
私は、レーチェル王女のように、強くあるべきだったのかもしれない。
レーチェル王女の言葉に、唖然としてお兄様を振り返る。
お兄様はジッとレーチェル王女を見つめたまま、視線を外さない。
「まさか、亡くなった方にそっくりだから、レーチェル王女を好きになったと?そんな失礼な!いくら容姿が似てらしてもレーチェル様と幼馴染は別人ですのに」
「それは、セニヨン様もご理解されていると思います。ただ、あまりに似過ぎていて、感情の整理が出来ないようなのです。私は・・・セニヨン様のその動揺につけ込むことにしました」
「は?」
「ふふっ。ローズマリア様、お忘れですか?私がセニヨン様を好きなのです。セニヨン様が私に幼馴染の姿を見ているのなら、それにつけ込んで婚約者になり、時間をかけて幼馴染の思い出に私を上書きしていきますわ」
にっこりと微笑むレーチェル王女に、ポカン!としてしまう。
私なんかより何倍も強かだし、しっかりしている。
え?私、完全に負けてるんだけど。
「レーチェル様は、それでよろしいんですか?」
「もちろん、私自身を好きになっていただきたいと思います。でも、逆に考えれば私は有利だと思うんです。そこまで想っていた方と容姿が似ていることで、セニヨン様は私を望んで下さいました。それは、政略結婚の相手より有利だと思うんです」
「でも、その幼馴染はレーチェル様とは違う人間です」
「ええ。でも、五歳までの記憶しかない方です。その方が例えば今のセニヨン様の年齢まで生きてらしたなら、その思い出を書き換えるのは難しいかもしれません。でも、セニヨン様には申し訳ありませんけど、八歳のその方も、十歳のその方も、セニヨン様は知りません。セニヨン様が見るのは、八歳の私、十歳の私です。もちろん、すぐに別人として見ることは難しいでしょう。私は身代わりかもしれません。ですが、ホリック様のこともありますから、時間は少なくとも二年はあります。焦らず頑張りますわ」
本気で・・・
負けてると思うし、レーチェル様を尊敬する。
私は・・・
リリーシアとレオナルドに裏切られたことで、勝手に失望して魔王になって、そして二人に殺されてしまうって、勝手に思って二人から逃げ出した。
あれはあくまでも、前世のゲームの中の出来事なのに。
現に、レオナルドは私に婚約を申し込んできたのに。
私はレオナルドのことを嫌いだけど、それはゲームの記憶があるから。
リリーシアだって、聖女になっていないのに。
私は、レーチェル王女のように、強くあるべきだったのかもしれない。
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