ラスボス魔王の悪役令嬢、モブを目指します?

みおな

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勇者の資格

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 ローズマリアが、兄クリストフの婚約について悩んでいた頃・・・

 アザリウム王国王都の王宮では、王太子に下された神託について議論が繰り広げられていた。

「勇者になるための試練を受ける資格、でしたか?その試練とやらは一体なんなのです?」

「そもそも、今までは聖女に神託が下り、そして聖女が勇者を選んでいたはずでは?」

「殿下の婚約者は、オズワルド公爵家のご令嬢でしたな。彼女は聖女では?」

「いや、それが殿下はセニヨン公爵家に養女に行った令嬢を婚約者にと、まだ言っているらしい。王命の意味が分からないわけでもあるまいに」

 ざわざわと繰り広げられる会話は、アザリウム王国の公爵家や侯爵家の当主たちのもの。

 国王は口を挟まず、この場に当人の王太子の姿もない。

 オズワルド公爵は仏頂面で、セニヨン公爵は素知らぬ顔。

 公爵家五家のうちのひとつ、シグナル公爵が教皇を視線を向ける。

「教会は、聖女の情報を得ていないのか?」

「聖女の力を宿した者はとしか」

「ふむ。王族の血が入っている公爵家五家のどれかに、聖女が現れるのが常だ。殿下が勇者の可能性を考えると、年齢の近いオズワルド公爵家の令嬢か、セニヨン公爵家の養女ではないのか?」

「それが、女神様は聖女は確定していない、と」 

 教皇の言葉に、シグナル公爵はなるほどと頷く。

「まだ魔王も具現化していないしな。もしかしたら、殿下が勇者というのも決定事項ではないのかもしれん。あくまでも、試練を受ける資格だからな。やれやれ。飛んだ取り越し苦労だ」

「シグナル公爵、言葉がすぎるぞ」

「はいはい。とにかく、魔王と聖女が現れてからだ。殿下の試練とやらが決まったらお知らせください」

「分かった」

 ぞろぞろと全員が退出して行く。

 アザリウム王国国王は、小さく息を吐いた。

 部屋を最後に出ていきかけたセニヨン公爵が立ち止まる。

「レオナルド王太子殿下には、ローズマリアには関わらないようお伝え下さい。ローズマリアは殿下とも、オズワルドの家族とも、距離を置くことを望んでいます。理由はローズマリアは語りませんでしたが、ローズマリアが殿下を拒んでいる以上、聖女になる可能性が高いのはオズワルドの娘でしょう。よく王命の意味を殿下にご説明下さい」

「分かった。しかし、もしローズマリア嬢が聖女となった場合は・・・」

「その時は、ローズマリアの判断に任せます。殿下が勇者でなければ、ローズマリアも勇者に嫁ぐことを拒まないと思いますのでね」

 セニヨン公爵の言葉に、国王は自分の息子は何故そこまで、令嬢に嫌われているのかと情けない思いで公爵を見送った。
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