上 下
50 / 107

何もなければ良い

しおりを挟む
 バッカス侯爵が退出した後、私は王妃様から事情を聞いた。

 バッカス侯爵は、前侯爵つまり父親が作った借金をアクド侯爵に払ってもらう代償として、サンドラ夫人を娶ったそうだ。

 サンドラ夫人がバッカス侯爵に一目惚れして、父親に強請ったらしい。

 当時バッカス侯爵の妹は、ピスエア子爵のご子息と恋仲だったけど、借金のせいで身売り同然に伯爵家の後妻に入らなければならない、という状態だったそうだ。

 結局、バッカス侯爵はサンドラ夫人と結婚することで、妹を好きな相手と結婚させることが出来た。

 侯爵には当時想う相手はいなかったし、嫡男の自分に政略結婚は当然だと考えたらしい。

 侯爵の妹さん、レアナ様というらしいけど、彼女は結婚してすぐに王妃様付きの侍女として働き出した。

 ピスエア子爵が、当時王太子殿下だった国王陛下と王妃様とご学友で、親しかった縁みたい。

 そして、ロイドが生まれて、レアナ様はロイドの面倒も見てたそうだけど、ご自身も身籠って職を辞してたそう。

 ただ、ラーナが生まれて少しして、王妃様にどうしても外せない公務が増えて、レアナ様は乳飲み子を連れたまま、ロイドの乳母としての役割もしていたのですって。

 そのレアナ様の話で、兄であるバッカス侯爵とアクド侯爵の話は聞いていたそうだけど、その借金は本当に領地の干ばつ被害のせいで出来たものだったみたい。

 良かったわ。
侯爵と結婚したいがために、罠にかけたとかじゃなくて。

 王妃様も当時はちょっと疑ったのですって。だから調べたのだとか。

 でも、なんだか納得できたわ。

 兄妹なのに、どうして姪の暴走を注意しないのかしら?と思ったけど、侯爵家と子爵家ということじゃなく、お兄さんに負い目があったのね。

 自分は恋愛結婚したのに、お兄さんに政略結婚をさせてしまったことで、文句は言えなかったんだわ。

 あの侯爵夫人も、常識を疑う言動だけど、自分が我儘を言ってもそれが叶って、好きな相手と結婚できたものだから、お金や身分をチラつかせたら叶うと思ってしまったのかもしれないわね。

 セニヨン公爵家は、お祖母様が降嫁した王女殿下だし、権力は相当あるわよ。

 でも、バッカス侯爵は悪い人ではなさそうだし、あの感じだと妻と娘のことはそれなりに愛してそうだし、夫人もタチアナもこれ以上問題起こさなきゃ良いけど。

 どこか、他国とかに嫁に行かせたらどうかしら?

 タチアナ理論だと、他国の令嬢は自国の令嬢より身分が低いのよね?

 その理屈でいけば、他国で大人しくできるんじゃないかしら?

しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう

冬月光輝
恋愛
 ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。  前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。  彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。  それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。  “男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。  89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...