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駆け引き

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「実は、兄の勧めで、ベリル男爵家のヒルデ様をレーチェル殿下の侍女にする話が出ているのです。それで、生活の様子を確認するためにベリル男爵家に滞在しています」

 これは、偽の婚約を結んだ時に決めておいたことだ。

 ヒルデとラーナに及ぶ危険を回避するために、ヒルデはレーチェル王女殿下の、ラーナは私の侍女となる・・・という形をとることになっている。

 そうすることで、二人が恋人に会いやすくなる、という仕組みだ。

 怪しまれることを考慮して、逆にするつもりだったんだけど、どうしてもそうすると会う機会が格段に減ってしまう。

 そうすると、ロイドとサリフィルのストレスが爆発する可能性が高いと・・・本人申告があった。

 いや、我慢しようよ。
疑われたらアウトでしょうに。

 まぁ、人を好きな気持ちは理屈じゃないのだろうから、今回ホリック公爵家の反応を見てから変更するか継続するか決めることにしたのだ。

「まぁ!ザハード王国の者でなく、この国の貴族令嬢を?」

「はい。レーチェル王女殿下は、とても聡明な方です。いずれ嫁ぐ国ですので、この国の令嬢の方がいいだろう、と。ただ、これはまだ検討しているという段階ですの。もう一人候補がおりまして、そちらはザハード王国のご令嬢なのですよ」

「ふむ。しかし同じ国の令嬢の方が、気心が知れていて良いのではないかな」

「そうですわね、旦那様。クリストフ様には申し訳ないのですが、もう一人のご令嬢の方が良いとわたくしも思いますわ。我が国の令嬢の中には、サリフィルやストラルに擦り寄ろうとする者も多くおりますのよ」

 あー。やっぱり無理っぽいな。
ここで、強引に侍女にしたら監視が激しくなりそう。

「わかりました。ホリック公爵様たちのご意向は、ザハード王国の方々にお伝えしておきますわ」

 あくまでも権限は、ザハード王国にあると匂わせておく。

 これは最初の予定通りに、ラーナをレーチェル殿下の侍女。ヒルデを私の侍女にした方が無難そうだ。

 少なくとも二年、長くて三年騙し続けなくてはならないのだから、疑われる芽は摘んでおきたい。

 サリフィルたちには悪いけど、我慢して貰おう。
しばらくして彼らが油断したら、もっと会える手を考えればいい。

「まぁ。よろしいのですか?」

「もちろんですわ。必ずお伝えいたします」

 私はあなたたちの味方ですよ、というスタンスを貫く。

 信用させておくことが大事だ。
そうすることで、これからサリフィルが騎士になるための動きが取りやすくなる。

 私はにっこりと、ホリック公爵夫妻に微笑んだ。


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