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身分というもの
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それからお茶を飲みながら、ヒルデとサリフィルの出会いの話を聞いた。
「まぁ!街で絡まれているのをホリック様が助けて?物語のようですわね」
乙女ゲームの、ヒロインと攻略対象の出会いみたい。
サリフィルには婚約者はいないから、ラノベ系じゃなく正統派の乙女ゲームな気がする。
親や周囲の反対を乗り越えて、二人が結ばれるハッピーエンドってやつね。
ラノベ系で言うなら、レーチェル王女はライバルの悪役令嬢というところの役どころね。
「それで、ホリック様とお付き合いを?」
「ふふっ。いいえ。サリフィル様はお調べになったのか、ベリル男爵家まで私に会いに来て下さいました。婚約者になって欲しい、と。でも、サリフィル様はホリック公爵家の嫡男で、とても素敵な方です。男爵家の娘では釣り合わないとお断りしました」
身分不相応。
天皇家にだって、一般家庭の女性が妃として嫁いだ時代に生きていた私から言うと、嫌な考えだと思う。
でも公爵令嬢ローズマリアになって、この貴族世界では身分というものが色んなものを左右すると知った。
高位貴族や王族は、幼い頃からそれ相応の教育を受けている。
マナーから始まって、語学や他国自国の歴史などを家庭教師から教え込まれる。
一方、下位貴族はマナーや語学歴史などを、学校に通って覚えることが多い。
それは、家庭教師を雇う金銭的余裕がないこともあるし、必要性がないということもある。
下位貴族が、王族や高位貴族と会話する機会はほとんどない。
どうしても、個人どうこうよりも家と家の繋がりで縁ができてしまうから。
だから政略結婚が普通の世界。
あの乙女ゲームみたいな夢の世界は、ほとんどと言っていいほど実現しない。
実際、サリフィルは愛を選んで身分を捨てることになる。
ロイドの方は貫けそうだけど、たまたま乳母の娘ということで王妃様が味方についてくれるからだ。
それでも、ロイドが王太子になるとしたら、ラーナは相当な教育を受けることになるだろう。
高位貴族が幼い頃から受けていたものを、数年で会得しなければならないのだ。
ロイドは、第二王子に立太子を譲る考えもあると言っていた。
結局は、ラーナの覚悟と能力次第だろう。
私自身は・・・
出来ることなら貴族のそういうしがらみから逃れて、自由に生きたいと思っているけど、恩知らずにはなりたくない。
お祖母様のおかげで、私はレオナルドの婚約者にならずに済んだ。
あの家から逃げることが出来た。
だから、セニヨン公爵家のためだというのなら、レオナルドや余程の相手でなければ、政略結婚も受け入れるつもりでいる。
それが、この世界の『普通』だからだ。
「まぁ!街で絡まれているのをホリック様が助けて?物語のようですわね」
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サリフィルには婚約者はいないから、ラノベ系じゃなく正統派の乙女ゲームな気がする。
親や周囲の反対を乗り越えて、二人が結ばれるハッピーエンドってやつね。
ラノベ系で言うなら、レーチェル王女はライバルの悪役令嬢というところの役どころね。
「それで、ホリック様とお付き合いを?」
「ふふっ。いいえ。サリフィル様はお調べになったのか、ベリル男爵家まで私に会いに来て下さいました。婚約者になって欲しい、と。でも、サリフィル様はホリック公爵家の嫡男で、とても素敵な方です。男爵家の娘では釣り合わないとお断りしました」
身分不相応。
天皇家にだって、一般家庭の女性が妃として嫁いだ時代に生きていた私から言うと、嫌な考えだと思う。
でも公爵令嬢ローズマリアになって、この貴族世界では身分というものが色んなものを左右すると知った。
高位貴族や王族は、幼い頃からそれ相応の教育を受けている。
マナーから始まって、語学や他国自国の歴史などを家庭教師から教え込まれる。
一方、下位貴族はマナーや語学歴史などを、学校に通って覚えることが多い。
それは、家庭教師を雇う金銭的余裕がないこともあるし、必要性がないということもある。
下位貴族が、王族や高位貴族と会話する機会はほとんどない。
どうしても、個人どうこうよりも家と家の繋がりで縁ができてしまうから。
だから政略結婚が普通の世界。
あの乙女ゲームみたいな夢の世界は、ほとんどと言っていいほど実現しない。
実際、サリフィルは愛を選んで身分を捨てることになる。
ロイドの方は貫けそうだけど、たまたま乳母の娘ということで王妃様が味方についてくれるからだ。
それでも、ロイドが王太子になるとしたら、ラーナは相当な教育を受けることになるだろう。
高位貴族が幼い頃から受けていたものを、数年で会得しなければならないのだ。
ロイドは、第二王子に立太子を譲る考えもあると言っていた。
結局は、ラーナの覚悟と能力次第だろう。
私自身は・・・
出来ることなら貴族のそういうしがらみから逃れて、自由に生きたいと思っているけど、恩知らずにはなりたくない。
お祖母様のおかげで、私はレオナルドの婚約者にならずに済んだ。
あの家から逃げることが出来た。
だから、セニヨン公爵家のためだというのなら、レオナルドや余程の相手でなければ、政略結婚も受け入れるつもりでいる。
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